PASS Aleph 3
¥450,000(1996年発売)
解説
ネルソン・パスのアンプ哲学と設計技術をコンパクトに凝縮したステレオパワーアンプ。
回路構成には純A級動作のシングルエンド出力回路を採用しています。
A級動作ではアイドリング時の消費電力が最大出力の少なくとも2倍になり、そのエネルギーはほぼ全て熱になります。Aleph3ではあえて2倍にとどまらず、3倍の消費電力を許容しており、厳密な純A級動作としています。これは、ネルソン・パスが自身の体験から電力効率と音質が相反すると考えたためです。
シングルエンド回路はシンプルな構成とすることで音質上の優位性を得ており、入力段と出力段の2ステージのみの構成となっています。また、入力はアンバランス専用でカップリングコンデンサーのないDCアンプとなっています。
増幅回路には非対称増幅回路を採用しています。
この方式は、空気はプッシュプル動作をせずに常に正の圧力範囲で振動して音を伝えるという考えが基となっています。空気を押すことは気圧を高めてることで、反対に引くことは気圧を緩めて低くすることである以上、押す時に必要な力は引く時よりも大きく、この非対称性を無視したプッシュプル駆動は自然ではないという理論です。
この非対称増幅回路を実現するためパワーデバイスには米国製のパワーMOS-FETを採用しており、入力段のものは特性のばらつきを0.2%いないに、出力段は2%以内に厳しく管理して使用しています。出力段は2パラレルで合計50Aにおよぶピーク電流供給能力を持っています。NFBはかけていませんが、Alpha3のスルーレートは約10V/μsに達しています。この値は人間の耳が感知できる音の約50倍に相当する速さです。
一般にA級動作でもプッシュプル方式ではクロスオーバー歪が残りますが、全段シングルエンド動作とすることでスイッチング歪やクロスオーバー歪がありません。
電源回路には大型トロイダルトランスと160,000μF大容量コンデンサーを使用しています。
出力段には独自の電流源回路が付加されており、広い範囲の負荷条件に対して最適な動作点を維持出来るようにパワーデバイスを制御しています。これによってAleph3では実際のスピーカー負荷で最大の能力を発揮することができ、負荷インピーダンスが極端に下がったり、ショートした状態になっても安定した動作を保つことが可能です。
また、AC電源電圧が下がった場合には補償回路の働きによって出力段のバイアスが自動的に制御され、供給電流が増加します。
シャーシフレームは自社で製作されたもので、全てアルミ材のブロックからコンピューター制御のフライス盤で削り出し、どの部材も入念にメッキ処理が施されています。また、文字彫刻はレーザー加工となっています。
全体がヒートシンクの役割を果たす構造とすることで純A級シングルエンド動作の発熱にも関わらず、表面温度は50~55℃に保たれています。
内部温度が約70℃をオーバーした時にはサーマルプロテクションシステムが作動してアンプをシャットダウンし、安全を確保します。
機種の定格
型式 | ステレオパワーアンプ |
ゲイン | 20dB |
周波数特性 | 2Hz ~ 100kHz 0.5dB |
定格出力 | 30W+30W(8Ω) 60W+60W(4Ω) 60W+60W(2Ω) |
最大出力 | 8A、23V |
出力ノイズ | 500μV(unweighted) |
入力インピーダンス | 23kΩ |
歪率(1kHz) | 0.2%(30W、8Ω) 1%(60W、4Ω) 1%(60W、2Ω) |
入力端子 | RCAピンジャック |
出力端子 | デュアル・六角メタルロックナット |
ダンピングファクター | 100 |
クロストーク | -80dB以上(20Hz~20kHz) |
DCオフセット | 100mV以下 |
動作温度 | 室温より25℃上昇(アンプ上部) |
電源 | AC100V、50Hz/60Hz |
消費電力 | 250W |
外形寸法 | 幅304.8x高さ152.4x奥行304.8mm |
重量 | 12.8kg |