解説　

あらゆる妥協を排し、コストの制約も外した究極のカートリッジとして開発されたMC型カートリッジ。

スタイラスからカンチレバー、アーマチュアにいたるまでオルトフォンの経験と技術を全面的に導入することで、針先の実効質量の低減、ダンピングの改善、発電効率の上昇などを達成しています。これにより0.25mgという驚異的なムービングマスを維持しつつ空芯コイルとしては画期的な0.1mVの出力電圧を実現しています。

トラッキング能力をこれまで達成できなかったレベルまで高めるため、MC-3000用に全く新しい形状のスタイラスであるオルトフォン・レプリカント100を開発・採用しています。
レプリカント100は、バンデンハル・スタイラスの生産で名高いスイスのフリッツ・ガイガー社との共同開発で、カッター・ヘッドと同形状を採用となっており、先端は精密研磨によって薄く仕上げられています。さらに、レプリカント100はこれまでのスタイラスに比べ垂直方向に広い接触面を持ち、周波数帯域全体にわたって正確なトレースも実現しています。

カンチレバーにはテーパード・アルミニウム・カンチレバーを採用しており、軽量で高剛性を実現しています。

アーマチュアには中空クロス・カーボン・アーマチュアを採用しており、堅牢で低質量を可能にしています。また、カーボンファイバーは非磁性体のため、エア･ギャップ内の磁界からアーマチュアの磁化を防いでいます。
アーマチュアの周りに巻かれた4つのコイルには軽量で導電性に優れた極細の純銀線を採用しています。これによりターン数を増加させることで振動系の質量を変えずに発電効率を高めています。

磁気回路にはサマリウム・コバルトを凌ぐ強力なネオジウム・マグネットを採用しています。

マットブラックのハウジング部には、酸化アルミニウムを1,600℃の高温で焼結させたセラミックを採用しています。
この素材は、膨大な素材の中から堅牢性と共振特性を考慮して選定されたもので、硬度はダイヤモンドに近く、ルビーやサファイアと同等となっています。このためハウジングは振動とは無縁となり、素材内部の共振は聴感上まったく影響の無い可聴帯域の上方に追いやられています。

機種の定格

型式	MCカートリッジ
出力電圧	0.1mV(1kHz、5cm/s)
チャンネルバランス	0.5dB以内
チャンネルセパレーション	25dB以上(1kHz)
周波数特性	5Hz～50kHz +4 -1dB
コンプライアンス	13x10-6cm/dyne(ダイナミック、水平)
針先形状	レプリカント100
適正針圧	2.2g
内部インピーダンス	5Ω
適正負荷抵抗	10Ω～100Ω
ハウジング材質	セラミック
自重	9.5g
針交換価格	￥120,000