ONKYO Scepter 10
¥132,000(1台、1976年頃)
解説
低音の豊かさと、力強く明るい音色をめざして設計した大型フロアタイプスピーカーシステム。
低域には38cmコーン型ウーファーユニットW-3810Aを搭載しています。
振動板には大入力に強いマルチコルゲーションコーンを採用しており、特殊耐熱設計の78φmm大口径ロングボイスコイルで駆動しています。さらにコーン紙とボイスコイルの接合部にアルミの補強リングを装備する事で、大入力に対する機械的強度を向上させ、コーン紙の釣り鐘振動を効果的に防止し、中低域の音をすっきりとさせています。
エッジには特殊成型2層発泡ウレタンエッジを採用しています。このエッジは上層にエステル系、下層にエーテル系という物理特性の異なる2種類のウレタンフォームを3:7の比率で貼り合わせた上、コーン紙側からフレーム側へ徐々に密度が小さくなるような特殊形状を採用しています。これにより大振幅時の激しいコーンの動きにもリニアな追従性を発揮し、非直線性歪の発生を抑えています。
ダンパーには特殊耐熱性樹脂積層板を用いた蝶ダンパーを採用しています。この素材は耐熱性に優れ、強度も高く履歴現象にも優れた素材となっており、新構造のエッジと共に、経年変化が極めて少なく効果の高いサスペンションを実現しています。この素材はダンピング特性が他の素材と比べて優れており、ボイスコイルのボビンにも採用されています。
磁気回路には180φx95φx20mmのマグネットを採用しています。ポールピースには磁気分布の対称性を保つためH型を採用しており、さらに銅製ショートリングを装備する事で電流歪によるfh付近の高調波歪を低減させています。
高域にはホーン型ツィーターTW-1206Aと音響レンズAL-120を組み合わせて搭載しています。
TW-1206Aの振動板には20ミクロンという超薄箔のチタンダイアフラムを採用しています。チタンは硬度が高いため分割振動を起こす周波数が高くなり、ポリエステルフィルムを用いたフリーエッジ構造や2重イコライザの採用と相まって、優れた高域の伸びと透明度を獲得しています。また、硬くて軽いという特長によって過渡特性も一層改善されており、シャープな立ち上がり特性が得られています。
ホーン部はカットオフ周波数500Hzの拡がりを持つアルミダイキャスト製ショートホーンとなっており、音響レンズを併用する事で高能率・広指向性を実現しています。
音響レンズAL-120は羽根のビリつきを防止するためハイインパクト・スチロール樹脂を用いています。
3ポジションのモードセレクターを搭載しています。
ポジション1はウーファーとツィーターを積極的に使ったモードで、クロスオーバー付近がやや盛り上がり気味になっており、メリハリの効いた音色となっています。
ポジション2はウーファーとツィーターのつながりを音圧周波数特性の上で極力フラットになるように設計されたモードで、クロスオーバー付近のウーファーの肩特性やツィーターレベルを設定しています。
ポジション3は中低域にやや厚みを持たせたモードで、ツィーターのレベルを少々抑え気味に設定する事でソフトな再生パターンとなっています。
エンクロージャーにはバスレフ方式を採用しています。
板材はバッフル板に20mmの米松合板を採用し、側板には針葉樹のチップボードを充分な板厚で採用しています。さらに補強材を用いて減衰波形の綺麗なエンクロージャーを実現しています。
外観はローズウッドの木目仕上げが施されています。
機種の定格
方式 | 2ウェイ・2スピーカー・バスレフ方式・フロア型 |
使用ユニット | 低域用:38cmコーン型(W-3810A) 高域用:ホーン型(TW-1206A+レンズAL-120) |
再生周波数帯域 | 30Hz~20kHz |
最大入力 | 100W |
インピーダンス | 8Ω |
出力音圧 | 95dB/W/m |
クロスオーバー周波数 | 1.2kHz |
キャビネット内容積 | 160L |
セレクター | 3段階モードセレクター |
外形寸法 | 幅560x高さ869x奥行522mm |
重量 | 44kg |