ONKYO Integra P-303
¥80,000(1977年頃)
解説
必要最小限の構成で高忠実度伝送を追及したプリアンプ。
伝送系としての高い忠実度を保持するため、実用上必要最小限の機能として、MM,MC,Tuner,Tape各1系統の切換えのみとし、トーンをはじめ他の調整・切換え回路は一切省略しています。さらに、信号の流れを単純化するのに適した薄型構造を採用しています。
また、どうしても多機能化や音場補正が要求される場合には、別売りのシステムユニットIntegra
U-30やオーディオイコライザIntegra E-30を使用することで機能を拡張することが可能です。
P-303では、回路の各機能ブロック間や同一ブロック内、左右チャンネル間での干渉によって発生するダイナミック・モジュレーション(過渡的混変調歪)に着目して設計がされています。
音楽信号のように、立ち上がりの鋭い過渡的な信号が入力された時に発生するダイナミック・モジュレーションは、電源部や級は遺伝ラインのインピーダンスが原因する回路間の相互干渉によって発生します。これを防ぐため、P-303では電源部を含めた給配電ラインのローインピーダンス化と、電源電圧の超安定供給を図っており、純度の高い銅板製のマルチ・スプレイ・ブスラインを大幅に採用しています。ブスアースラインには、抵抗値0.0027Ω/cmの銅板、±B電源供給用のブスホットラインには0.008Ω/cmの銅板を使用し、各回路ブロックのブランチを、それぞれ直接ローインピーダンスの供給幹線に直結する直接給電方式によって、ダイナミック・モジュレーションの発生を抑えています。
さらに、このラインを広帯域にわたってローインピーダンスにホールドするため、電源部には、定電圧電源を2重に通したダブル・スタビライザ回路を採用しています。また、その内部に使われるコンデンサには、特にオーディオ用を目的として設計された、低損失、低リーケージで、歪特性や温度特性に優れたオーディオ信号用コンデンサを採用しています。
D.L.C.(デュアル・ライン・コンストラクション)方式によって左右チャンネルを完全に分離し、チャンネル間の干渉を排除しています。また、低信号レベルの入力側から、高信号レベルの出力側まで、各ブロックを信号の経路に合わせて一直線に並べることにより、各ブロック間の干渉を排除し、回路動作の純粋化を図っています。
さらに、シールドケースには、非磁性体であるアルミ材を全面的に採用し、特にMCアンプ部には、2重シールドを施しています。
MCアンプ、イコライザアンプ、フラットアンプ、バッファアンプの全ステージに、PNPとNPNを組み合わせてhfe特性を改善した、A級完全上下対称型プッシュプル方式を採用することによって、リニアリティの改善を計っています。
初段差動、3段8石構成のイコライザアンプの差動アンプ部には、高耐圧、超ローノイズPCT方式シリコン・エピタキシアル型トランジスタ(2SC1681、2SA841)を使用すると同時に、信号系のローインピーダンス化によって等価雑音抵抗を低減させ、SN比を向上させています。
また、RIAA定数回路には、周波数特性や過渡特性に優れ、tanδの小さな無誘導アルミ箔構造のポリプロピレン・フィルムコンデンサのG級(容量偏差±2%以内)を使用することにより、優れた特性を得ています。
ボリューム・コントロールは、フラットアンプの前後で連動してコントロールできる4連精密アッテネーター型ボリュームを採用しており、ボリュームを絞りこんだ時のSN比を改善しています。
パワースイッチのON/OFF時に発生するクリックノイズを防止するため、新しく開発したブレイク型リードリレーを使ったトランジェントキラー回路を採用しています。従来のように信号回路に直接入れるのではなく、シャント型に組み込むことによって、通常使用時のリレーの接触抵抗による影響を抑えています。
MCアンプ部には、超ローノイズトランジスタをトリプルプッシュプルで使用した6石構成の低入力インピーダンス型を採用しています。
段間のフラットアンプ部には、NFループ内のコンデンサを完全に除去するため、DCアンプ構成の広帯域回路を採用しています。
初段差動増幅回路には、2個のローノイズ・トランジスタのチップを組み込んだデュアルトランジスタを採用することにより、熱平衡特性に優れ、直流増幅率比1±0.02とバランスよく安定なDCアンプを形成しています。
カップリングコンデンサには、無誘導エクステンデッド・フォイル構造のフィルム・コンデンサを使用し、音質の劣化を防いでいます。
機種の定格
型式 | ステレオプリアンプ | ||||
入力感度/インピーダンス | Phono MC(50Ωドライブ):100μV/10Ω Phono MM:2.5mV/30kΩ、50kΩ、100kΩ Tuner、Tape play:150mV/50kΩ Accessory-Rcv:1.5V/82kΩ |
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定格出力/インピーダンス | Tape rec(Phono):150mV/12kΩ Accessory-Send:1.5V/100Ω Output:1.5V(最大15V)/600Ω |
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Phono最大許容入力(THD 0.05%) |
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周波数特性 | Phono MM(RIAA偏差):20Hz~20kHz ±0.2dB Tuner、Tape:3.5Hz~200kHz +0 -1.5dB |
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全高調波歪率(3V出力時、 20Hz~20kHz) |
Phono MC:0.03%以下 Phono MM:0.006%以下 |
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混変調歪率(定格出力時) | 0.01%以下(SMPTE 70Hz:7kHz=4:1) | ||||
SN比(IHF-Aネットワーク) | Phono MC:70dB(入力50Ω) Phono MM:83dB(入力シャント) Tuner、Tape:100dB(入力シャント) |
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入出力極性 | Phono MC:逆相 Phono MM:同相 Tuner、Tape、Acc-Rcv:同相 |
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使用半導体 | トランジスタ:52個 ダイオード:29個 |
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AC出力 | switched:3系統 unswitched:1系統 Total:1100VA |
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電源 | AC100V、50Hz/60Hz | ||||
消費電力 | 20W(電気用品取締法規格) | ||||
外形寸法 | 幅450x高さ83x奥行370mm | ||||
重量 | 7.5kg |