ONKYO Integra A-708DC
¥108,000(1977年頃)
解説
イコライザアンプとパワーアンプをDC化した2DC構成のプリメインアンプ。
イコライザアンプ部のRIAA補正には、周波数的に高低2つに分けローブーストの方にはNF型、ハイカットにはCR型を採用しています。高域をCR減衰で無理なく補正することから、スルーレートやブロッキング現象も問題なく、混変調も少なくなっています。
また、この2系統の時定数回路でそれぞれの帯域を受持つために、10~100kHzの間でRIAA偏差±0.2dBという優れた精度を実現しています。
パワーアンプ部はDC構成となっており、初段差動アンプにはローノイズ・モノリシック・デュアルFETを使用し、2段カスケードドライブ方式や3段ダーリントン接続出力段の採用で、全域にわたってリニアリティが良く安定した特性を得ています。そして、スピーカー端子電圧の直流ドリフトも、気温20℃に対して、±30℃で±20mV以内となっています。
またBクラスアンプにありがちなスイッチング歪を、トランジション周波数fTの高いパワートランジスタを定電圧ドライブで駆動することにより極小に抑えています。
電源部は、全回路にわたりアースライン内での電位差を抑えるブスアース(母線)方式を採用しています。
また、100kHzの超高域までローインピーダンスを保持するE.S.R.(等価直列抵抗)0.01Ω以下の平滑コンデンサ、電圧変動率0.1%以下、リップル除去比80dBという左右チャンネル独立のプリ部専用の定電圧回路など、歴代のIntegraに培われたD.L.C直結給電方式を採用し、同一チャンネル内前後段及び、左右チャンネル間の回路の相互干渉を防ぐと共にDC&DC回路とも相まって、低音域の立ち上がり特性を改善し、余裕のあるピークパワーを確保しています。
トーンコントロールには、ターンオーバー周波数2段切換(ディフィート付)によって、微細な周波数調整が可能です。
回路構成は初段にペアトランジスタを使った4石構成(実質5石)となっており、エミッターの大容量コンデンサを除去すると共に、NFループの小容量コンデンサ(1μF及び10μF)にも低歪率フィルムコンデンサを使用しています。
これにより、トーンON時も音質劣化の少ないコントロールが可能となっています。
イコライザやパワーアンプのNF系から大容量ケミコンを取り除いたDC&DCの思想をさらに発展させ、段間カップリングはもとより、全信号系から、歪の多いケミコンを取り除くと共に、小容量コンデンサには低歪率な無誘導フィルムコンデンサを厳選して使用しています。
保護回路として、出力に含まれる直流電圧、パワートランジスタの過電流等を純電子式に検出して、万一の場合、スピーカーを切離すスピーカーリレーを搭載しています。このリレーは電源投入時のクリックを抑えるトランジェント・キラーも兼ねており、前面パネルのインジケーターでその動作が確認できます。
直流電圧検出部は左右独立となっており、左右のDC極性が違っている場合でも動作します。また、過電流検出回路は、負荷ショート時や低インピーダンス負荷で回路に無理がかかった場合、すみやかにスピーカーを切離すようになっています。
リレーには接触抵抗の少ない金張り銀接点作業のものを使用しています。
MCカートリッジの使用を考え、Aクラスプッシュプル構成のローノイズMCヘッドアンプを搭載しています。
入力セレクターやスピーカー切換えといった、音質に関して重要なスイッチ類は、直接プリント基板に埋め込んだり、端子部のすぐ近くで切換えるようにしており、シールド線の引き回しの干渉によるS/Nやクロストーク、スピーカー回路の抵抗分増加によるダンピング等の劣化を低減しています。
パワー部はDCアンプですが、Cut off FREQスイッチで低域のカットオフ周波数をDC-0.1Hz-30Hzと変える事が可能です。
DCポジションでは、パワー部の入力から出力まで、信号経路及びNFループ内には一切コンデンサが入りません。0.1Hzポジションでは、カットオフ0.1HzのACアンプとして、30Hzポジションは通常のサブソニックフィルタとして使用します。
カートリッジの性能を引出すため、Phono1ではMMカートリッジの負荷インピーダンスを3段に切換えできます。
パワーアンプのバイアス電流値を安定に保つため、新開発のオートトラッキング・バイアス方式を採用しています。
これは、プリドライバー、ドライバー、出力段の3ポイントセンシングバイアス回路で、連続的な大振幅動作からピアニッシモ再生へと移った場合の、ドライバーとパワートランジスタの温度差に起因するバイアス変動を防止し、安定した低歪率駆動を可能にしています。
パワーアンプのゲイン3段切換え機能を搭載しており、ゲインが0dB、-10dB、-20dBの3段階にわたって切換えできます。
小音量で使用する場合に、パワー部のゲインを下げて使用することで、その分実用上のS/Nが改善できます。
Phono入力端子には金メッキ処理が施されています。
ボリュームには、ガッチリしたダイキャストボディに封入された、マルチ摺動子を持つ低歪率アッテネーターを搭載しています。
連続可変方式でトリミングレスなため、電流集中作用による歪もなく、連動誤差は70dBまで0.5dB以内となっています。
機種の定格
型式 | プリメインアンプ |
<パワーアンプ部> | |
定格出力(20Hz~20kHz、両ch駆動) | 80W+80W(8Ω) |
ダイナミックパワー(1kHz、8Ω) | 115W+115W |
全高調波歪率(20Hz~20kHz) | 0.02%以下(定格出力時) 0.01%以下(定格1/2出力時) 0.007%以下(1W出力時) |
混変調歪率(70Hz:7kHz=4:1) | 0.001%以下(定格出力時) |
パワーバンドウィズス(IHF-3dB、THD0.2%) | 5Hz(測定限界)~100kHz |
周波数特性 | DC~250kHz +0 -1.5dB |
フィルタ | 0.1Hz/30Hz、6dB/oct |
アッテネーター | -10dB/-20dB |
S/N(IHF-A、入力ショート) | 115dB以上 |
ダンピングファクター(1kHz、8Ω) | 110 |
入力感度/インピーダンス | Main in:1.5V/100kΩ |
負荷インピーダンス | 4Ω~16Ω |
利得 | 24.6dB |
入出力極性 | 同相 |
トランジェントキラー動作時間 | Power on後:6秒 Power off後:0.2秒 |
出力端子 | SP-A、B、A+B、ヘッドホン |
<プリアンプ部> | |
入力感度/インピーダンス | Phono1 MM:2.5mV/100kΩ、47kΩ、33kΩ Phono2 MM:2.5mV/47kΩ Phono3 MC:100μV/20Ω Tuner、Aux、Tape play1、2:150mV/50kΩ |
全高調波歪率(Phono→Pre out) | 0.005%以下(6V出力時、20Hz~20kHz) |
混変調歪率(70Hz:7kHz=4:1) | 0.007%以下(1.5V出力時) |
周波数特性 | Phono(RIAA偏差):20Hz~20kHz ±0.2dB Tuner、Aux、Tape play1、2:5Hz~100kHz +0 -1.5dB |
Phono最大許容入力(RMS、THD0.05%) | MM:300mV(1kHz) 1460mV(10kHz) MC:13mV(1kHz) 47mV(10kHz) |
S/N比(IHF、Aネットワーク) | Phono1、2 MM:82dB以上 Phono3 MC:68dB以上 Tuner、Aux、Tape play1、2:100dB以上 |
出力電圧 | Pre out(100kΩ負荷時):1.5V(定格)、18V(最大) Tape rec1、2:150mV(定格) |
出力インピーダンス | Pre out:56Ω Tape rec1、2(Phono):3.4kΩ |
トーンコントロール(2dBステップ式) | Bass:±10dB(100Hz、ターンオーバー400Hz) Treble:±10dB(10kHz、ターンオーバー2kHz) |
ターンオーバー周波数 | Bass:400Hz、125Hz、defeat Treble:2kHz、8kHz、defeat |
ラウドネス | +3dB/+6dB(100Hz) |
フィルター | EQ subsonic:15Hz、6dB/oct High cut:7kHz/15kHz、6dB/oct |
ミューティング | -20dB |
入出力極性 | MCアンプ:逆相 イコライザアンプ:同相 トーンアンプ:同相 |
<その他> | |
使用半導体数 | トランジスタ:71個 FET:10個 ダイオード:45個 |
AC出力 | switched:2系統、合計200W unswitched:1系統、200W |
電源 | AC100V、50Hz/60Hz |
消費電力 | 210W(電気用品取締法) 580W(最大消費電力) |
外形寸法 | 幅438x高さ150x奥行390mm |
重量 | 15kg |