Nakamichi 1000p
¥550,000(1989年頃)
解説
DATデッキNakamichi1000と組合せ、アナログデッキの最高峰を超える最高の音質を追求して開発されたD/Aコンバーター。
デジタルフィルターには20ビット8倍オーバーサンプリングデジタルフィルターを採用しています。
D/A変換部には20ビット・フルキャリブレートD/Aコンバージョンシステムを採用しています。
この回路では、デジタルROMキャリブレーション、タンデム20ビットコンバーター、グリッチ・イレーサーという3つのキーテクノロジーを採用しており、非常に優れた変換精度と理論限界値の超低歪率を実現しています。
デジタルROMキャリブレーションでは、D/AコンバーターIC一基ごとの補正データを記憶したキャリブレーテッドROMによって全ビットをデジタル補正しており、時間や温度による特性変化も防ぎ、非常に高い変換精度を実現しています。
キャリブレーションおよびROMへのデータ書き込みは工場出荷時に一台ごとについて行われています。まず、動作状態にある1000pのテストポイントに計測用の22ビットA/Dコンバーターを接続しD/A変換エラーを精密に測定します。そして、あらゆる状況を想定した特殊な演算処理によってコンバーターIC一基ごとの微妙なクセまでも把握します。次にこのエラーデータをROMに書き込み、それを各機のD?Aコンバーター基板に装着しています。半固定抵抗などによるアナログ式と異なり、ROMによってデジタルデータを直接調整することで完全な精度補正を実現しています。
この回路によって、従来のD/A変換ではどうしても拭いきれ無かった原音にまとわり付くわずかなノイズ感も完全に排除しています。
タンデム20ビットコンバーターでは、まずデジタルフィルタの20ビット出力を上14ビットと下6ビットに2分割します。そして、それぞれ専用の16ビットD/Aコンバーターで処理したあと、再びデジタル加算することで20ビット動作を行っています。それぞれのD/Aコンバーターは十分な余裕をもって動作しており、特に高精度を要求される下6ビットについては16ビットコンバーターの上位ビット分だけを使用することによってリニアな変換を実現しています。また、上14ビットについても2ビット分の余裕を残すことで変換精度に万全を期しています。
これにデジタルROMキャリブレーションによる完全な精度補正を実施することで、20ビット方式の限界性能を獲得しています。
一般的なD/Aコンバーターではグリッチノイズで汚れた信号はそのままアナログ回路に送り込まれ、グリッチはそこでアナログ的に除去(サンプルホールド)されていました。しかし、この方式ではサンプルホールド回路自体のスイッチングノイズが60~80dBといった微小信号をマスクしてしまい、正確な音楽再現を困難にしていました。
このグリッチノイズをデジタルデータの段階で無くすため、ナカミチが独自に開発したグリッチイレーサーを搭載しています。この回路では、今まで問題とされてきたゼロクロスポイント以外の各ビットの変わり目におけるごく微細なグリッチノイズも除去するため、あらゆるグリッチの発生個所を前もって予測し、完全に打ち消すことで、0.0015%という理論限界値の超低歪率を実現しています。
A/D変換部にはサンプルホールドレス・オートキャリブレーションA/Dコンバーターを採用しています。
この回路では、当時最先端のA/D変換方式である電荷比較法をオーディオ用として実用化しており、各ビットの重み付けに電荷を利用することで、A/D変換において音質劣化の原因となっていたサンプルホールド回路を排除しています。
さらに、各ビットの重み付け精度を自動校正するオートビットキャリブレーションシステムや16ビット2倍オーバーサンプリングデジタルフィルタの採用によって高い精度のA/D変換を実現しています。
オートビットキャリブレーションシステムは、電源を投入すると自動的にスタートし、1.4秒でほぼ完璧な16ビット精度にチューニングされます。チューニングはデジタル方式を採用しており、経年変化による精度の劣化を防いでいます。
ツインPLLスタビライズド・インターフェースを採用しており、ナカミチ独自のデジタルデータ・スタビライザーと2つのPLLがデジタル信号に重畳されるジッターなどの外乱をシャットアウトしています。
デジタルデータ直読式の32ドットピークレベルメーターを搭載しています。
このメーターはプロ仕様の超高精度型タイプとなっており、誤差は±0.2dB以内に抑えられています。また、ディスクリート駆動回路と専用LSIによって音質に悪影響を与えないフルスタティック点灯を可能にしいています。
このメーターにはピークホールド機能とメーターオフ機能を搭載しています。
オーディオ回路にはディスクリート構成の完全バランス伝送方式を採用しています。
電源部にはマルチパワーサプライを採用しており、ステージ間の相互干渉を排除しています。また、アイソレートグランド方式を採用することで、アースを介した相互干渉も排除しています。
共振制動構造を採用しています。
フルスタティックインジケーターを採用しています。
アナログレベルボリュームを搭載しています。
コアキシャルとオプティカルの2種類のデジタル入出力端子を搭載しています。
DAT相互コピー機能を搭載しています。
専用レベルボリューム付きヘッドホン端子を装備しています。
エンファシススイッチを搭載しています。
LC-OFCクラス1オーディオケーブルが付属しています。
一部仕様を除き殆ど同じ内容の業務用モデルがありました。
機種の定格
型式 | D/Aコンバーター(デジタルオーディオプロセッサー) |
<D/Aコンバーター部(44.1kHzにて測定)> | |
方式 | 20ビット・フルキャリブレートD/Aコンバーター 20ビット・8倍オーバーサンプリングデジタルフィルター |
標本化周波数 | 48kHz、44.1kHz、32kHz |
周波数特性 | 5Hz~20kHz ±0.5dB |
S/N比 | 106dB以上 |
ダイナミックレンジ | 100dB以上 |
全高調波歪率 | 0.0005%(1kHz) |
全高調波歪率・雑音 | 0.0015%(1kHz) |
チャンネルセパレーション | 106dB以上 |
<A/Dコンバーター部(標本化周波数48kHz、A/D→D/Aにて測定)> | |
方式 | 16ビット・オートキャリブレーションA/Dコンバーター 16ビット・2倍オーバーサンプリングデジタルフィルター |
標本化周波数 | 48kHz |
周波数特性 | 5Hz~22kHz ±0.5dB |
S/N比 | 95dB以上 |
ダイナミックレンジ | 95dB以上 |
全高調波歪率 | 0.001%(1kHz) |
全高調波歪率・雑音 | 0.003%(1kHz) |
チャンネルセパレーション | 85dB以上 |
<入出力部> | |
デジタル入力 | 75Ω同軸/光(切換)x3 |
デジタル出力 | 75Ω同軸/光(パラレル)x2 |
ライン入力 | 平衡:50mV(-18dB、Rec level最大)/40kΩ 不平衡:50mV(-18dB、Rec level最大)/25kΩ |
ライン出力(平衡) | Fixed:2V(0dB)/100Ω Variable:2V(0dB、Output level最大)/100Ω |
ライン出力(不平衡) | Fixed:2V(0dB)/1kΩ Variable:2V(0dB、Ouput level最大)/1kΩ |
ヘッドホン出力 | 100mW(0dB、Phones level最大)/40Ω |
<総合> | |
電源 | AC100V、50Hz/60Hz |
消費電力 | 最大70W |
外形寸法 | 幅435x高さ133x奥行370mm |
重量 | 約17.5kg |