Nakamichi 1000
¥650,000(1989年頃)
解説
世界最高のデジタルオーディオレコーダーを目指して開発されたDATトランスポート。
メカニズム部には次世代DATメカニズムFASTを採用しています。
このメカニズムではクイックローディングアームを採用しており、人間の関節の動きにも似たユニークな特殊リンクアームと対話型マイクロプロセッサーの働きによってアーム速度や力の具合を理想的にコントロールしています。これによりテープを保護しながら従来の2倍以上という驚異的なローディング速度を実現しています。
また、従来のDATでは早送りや巻き戻しの時も常にヘッドにテープが巻きついたままの状態だったため、早巻き速度が遅くなるだけでなく、テープ自体にも大きな負担をかけていました。この問題を解決するためFASTでは、シンプルなテープパス構造を活かしたハーフロードポジションを設定しており、FFまたはREWボタンを続けて2回押すとテープがヘッドから完全に離れた状態にセットされ、即座に平均400倍速での早巻きが始まります。早巻きを開始すると最初は徐々に加速してテープ中央部付近で約600倍速にまで達し、テープが終わりに近づくと約150倍速以下に減速します。そして、テープ終端のリーダーテープを検知するとリールモーターの制御によるブレーキングでテープを完全に停止させます。この方式によって120分テープで従来45~60秒かかっていた早巻き時間を約19~23秒にまで短縮しています。また、ハーフロード状態でテープに当たっているのはガイドローラーだけとなるため、テープに殆ど負担がかかりません。
従来のVTR技術をベースにした殆どのDATメカニズムでは、回転ヘッドに対するテープのアライメント(横傾斜/高さ/前後のアオリ)の管理をローディングのたびに移動する一対の可動テープガイドだけに頼っていたため、精度が出ず、エラー補正量が増えてしまうことで音質劣化が発生していました。Nakamichi1000ではこの問題を解決するため、独自のステーショナリーテープガイドを採用しています。
ステーショナリーテープガイドは従来の可動ガイドとはテープを挟んだ反対側に固定されており、テープを押し当てるだけで4種の内蔵ガイドが常にテープに正確なアライメントを与えています。また、材質には高精度で滑りがよく、耐摩耗性に優れたグラファイト系エンジニアリング・プラスチックを使用しており、難しい調整やメンテナンスを必要とせずに、正しいテープアライメントをミクロンオーダーの精度で保証しています。
FASTではテープ走行の静かさも追求しており、ナカミチ伝統の技術によって極めて静粛な動作を実現しています。
まず、ヘッド形状に独自の工夫を凝らすことで回転ヘッドによるテープ叩き音を大幅に低減しています。次にヘッドドラムの左右に固定されたステーショナリテープガイドの大きな内部損失を利用してテープの表面振動を効果的に吸収しています。さらに、ローディングアーム用の切り込み穴を持たない高剛性シャーシとダイキャスト製の重量級ヘッドブロックによって不要共振を徹底的にダンプし、テープ走行音を殆ど聞き取れないレベルにまで押さえ込んでいます。
ヘッド部は、録音/再生2個ずつの専用高精度ヘッドをそれぞれ90゜おきに配置した4ヘッドシステムとなっています。
さらに、テープ/ソース切換時のノイズを有効に遮断する超高速デジタルミューティング回路網の開発によって従来のデジタルレコーダーでは困難とされていたアナログさながらのスムーズなアフターモニターを実現しています。
カセットテープやローディングアームの動きを見せるディスプレイウインドウを搭載しており、実際の動作を確認しながらの正確な録音が可能です。
ケース、電源部、操作部以外の殆どが差し替えできるプラグインユニット方式を採用しています。
アブソリュートタイムシステムを搭載しており、DATならではの多彩なテーププレイ機能を使用できます。
電源部には最高級トロイダルトランスを採用しています。
また、ディスクリートレギュレーターによる大容量マルチパワーサプライを採用しています。
重量級アルミシェルと銅メッキシャーシを結合した共振制動構造を採用しています。
ノイズ発生の心配が無いフルスタティックインジケーターを採用しています。
2スピードデジタルオートフェーダーを搭載しています。
サブコード機能に対応しており、アブソリュートタイムサーチ、プログラムサーチ、カウンターサーチ、オート~マニュアルスタートID、スキップID、リハーサル機能、エンドマーク機能、プログラムナンバー、プログラムリナンバー、プログラムメモリーなどが行えます。
カウンター、アブソリュートタイム、リメイニングタイム、プログラムタイムが表示できる4モードテープカウンターを搭載しています。
タイマースタンバイ機能を搭載しています。
ダイレクトプレイが可能です。
テープエンドリピートやエンドマークリピート、プログラムリピート機能を搭載しています。
オートリワインドやリワインドオートプレイ機能を搭載しています。
複数の1000によるシンクロオペレーションを実現するリモート入出力端子を搭載しています。
コアキシャルとオプティカルのデジタル入出力端子を搭載しています。
テープコンパートメント・イルミネーションを搭載しています。
光(単結晶石英ファイバー)、同軸(LC-OFCクラス1)のデジタルケーブルが各2本付属しています。
交換用のアルミ製ウインドウパネルが付属しています。
リモートコントローラー1000rが付属しています。
1000rはNakamichi1000の操作パネルそのままのレイアウトとなっており、リモート操作時の違和感を払拭しています。また、1000rは1000の殆どの機能を備えており、しかも2台までの1000を独立して操作できます。
さらに、注文時に使用目的に合わせてワイヤードとワイヤレスが選択できます。
一部の仕様を除き全く同じ内容の1000 Professional(業務用モデル)もありました。
機種の定格
型式 | DATデッキ(DATトランスポート) |
形式 | 回転ヘッド方式デジタルオーディオレコーダー |
標本化周波数 | 48kHz、32kHz(録音/再生) 44.1kHz(再生) |
ヘッド回転数 | 2000rpm(録音/再生時) |
テープ速度 | 8.15mm/s |
ワウ・フラッター | 測定限界以下 |
デジタル入力 | 75Ω同軸/光(切換) |
デジタル出力 | 75Ω同軸/光(パラレル) |
電源 | AC100V、50Hz/60Hz |
消費電力 | 最大40W |
外形寸法 | 幅435x高さ133x奥行370mm |
重量 | 約16kg |
付属:リモートコントローラー Nakamichi1000r | |
電源 | DC3V(1.5Vx2) |
外形寸法 | 幅307x高さ44x奥行123mm |
重量 | 約900g(乾電池含) |