
Nakamichi BX-150
¥89,800(1983年頃)
解説
新ベーシックモデルとしてシンプルな構成で音質を追求したカセットデッキ。
メカニズムにはプレステージモデルで培われたノウハウを活かして低フラッター化対策が施されており、回転体から発生する有害微振動がテープに伝わるの防いでいます。
また、シングルキャプスタン方式では巻取り用リールモーターの回転精度がフラッターに大きく関係するため、優れたモーターを使用しています。さらに、プーリーには非常に真円度の高い金属製のものを採用する事で動力伝達時にもフラッターが発生しないようにしています。
メカニズムにはサイレントメカニズムを採用しています。
このメカニズムでは駆動にプランジャーを用いず、マイクロプロセッサー制御の専用モーターによってヘッドベース及びブレーキの動作コントロールカムを駆動するモータードライブ方式を採用しています。これによりオペレーションボタンを軽く押すだけで静粛かつスピーディな動作を実現しています。特にPlay動作の立ち上がりでは、ヘッドがテープに接触する直前までは素早く、接触する時には減速する2段変速式となっており、テープへのダメージを軽減すると共にヘッドの取り付け精度に狂いが生じないよう配慮しています。
ヘッドベース及びブレーキの動作コントロールはコントロールカムに連結されている3つのスイッチカムによって行っています。この3つのスイッチカムが各動作状態毎に3ビットのデジタル情報を構成し、情報と常時対話しながら4ビットのマイクロプロセッサーが複雑なテープコントロールを行っています。
録再ヘッドにはRP-2D録再兼用ヘッドを採用しています。
このヘッドではヘッドコア材に10,000ガウスの飽和磁束密度を持つセンダストラミネートコアを使用しており、実効ギャップ幅を20kHzの再生限界である1.2ミクロンに設定しています。さらに、コンピューターコントロールによる組み立て加工技術を駆使する事でヘッドギャップの直線性を高精度に確保しています。
また、テープとの接触面をハイパボリック(双曲線)形状とし、再生時の低域のうねり(コンターエフェクト)を小さく抑えています。
消去ヘッドにはE-2D消去ヘッドを採用しています。
このヘッドはコア材に高周波特性の優れたフェライトを使用したダブルギャップ型となっています。高周波損失が少なく、保磁力や残留磁束密度の大きなメタルテープなどでも良好な消去率を確保しています。
録音イコライザ回路にはダブルNF型を採用しています。
この方式では電解コンデンサにNFBをかける事でコンデンサによって発生する歪を低く抑え、直流安定化を図るとともに、理論値に基づいてヘッドの損失補正を厳密に行っています。
また、増幅段にはローノイズオペアンプを採用しており、低歪率と広いダイナミックレンジを実現しています。
再生イコライザ回路にも録音イコライザと同様にダブルNF回路を採用しており、歪の低減を図っています。
また、再生ヘッドと相性の良いローノイズトランジスタによるディスクリート構成とすることでクオリティを追求しています。
バイアス回路では、バイアス電流や消去用の発振器を非常に安定で、波形歪を極めて少ないものとする事で、録音時に必要なバイアス電流の波形が歪んだり不安定になるのを防いでいます。
ダブルスピードマスターフェーダーコントロールを搭載しています。
L/Rの録音レベルを設定し、録音スタンバイ中にマスターフェーダーコントロールスイッチのUpを押すとフェードインし、録音中にDownを押せばフェードアウトが自動的に行えます。フェードイン/アウトのスピードは2段階にコントロールでき、Up/Downを1度押すと4秒間、押し続けると2秒間でフェードイン/アウトが完了します。
オートリピート機構を搭載しています。
オートリピートスイッチをOnにしておくと、録音・再生・早送りの各モードでテープエンドに達すると自動的に頭へ巻き戻されてオートプレイを開始します。
この機能を利用し、メモリースイッチと組み合わせる事でテープカウンターの0000の位置とテープエンド間のオートリピートも可能です。
ノイズリダクションシステムとしてドルビーBタイプとCタイプの2種類を搭載しています。
-30dB~+7dBのLEDピークレベルメーターを搭載しています。
テープカウンターにはLEDによる4桁表示を採用しています。
0000を基点に9999までのプラスカウントと、-999までのマイナスカウントが可能です。
メモリーストップ機能を搭載しており、早送りや巻き戻しでテープカウンターの0000の位置でストップさせる事ができます。
MPXフィルタースイッチを搭載しており、FM信号に含まれる19kHzのパイロット信号を除去し、ドルビーNR回路の誤動作を防ぎます。
タイマーレック/プレイ機能を搭載しています。
一般オーディオタイマーを組み合わせる事で留守録音や目覚まし再生が可能です。
ワンタッチレックポーズ機能を搭載しています。
Recボタンを押すと自動的に録音スタンバイ(Recポーズ状態)となり、次にPlayボタンを押すと録音を開始します。
3ポジションテープセレクターを搭載しています。
120μs/70μsのイコライザーセレクターを搭載しています。
左右チャンネルが独立した録音レベルコントロールを搭載しています。
出力ボリュームを搭載しています。
ヘッドホン端子を装備しています。
製造工程で1台ずつ最適バイアス量及び録音レベルの調整をノーマル、クローム、メタルの各テープ毎に、さらにL/R別に行うなど、30項目以上にわたって調整しており、トータルでの品質を高めています。
ブラックとシルバーの2色のカラーバリエーションがありました。
機種の定格
型式 | ステレオカセットデッキ |
トラック形式 | 4トラック・2チャンネル・ステレオ方式 |
ヘッド | 2ヘッド(消去x1、録再兼用x1) |
モーター | キャプスタン用:DCサーボモーターx1 リール用:DCモーターx1 |
テープ速度 | 4.8cm/s |
ワウフラッター | 0.06%以下WTD RMS 0.11%以下WTD Peak |
周波数特性 | 20Hz~20kHz(録音レベル -20dB) |
総合S/N比 | ドルビーCタイプ NR on:68dB以上(400Hz、3%THD、IHF-A、WTD RMS) ドルビーBタイプ NR on:62dB以上(400Hz、3%THD、IHF-A、WTD RMS) |
総合歪率 | 1.0%以下(400Hz、0dB、ZX、EXIIテープ) 1.2%以下(400Hz、0dB、SXテープ) |
消去率 | 60dB以上(100Hz、0dB) |
チャンネルセパレーション | 36dB以上(1kHz、0dB) |
クロストーク | 60dB以上(1kHz、0dB) |
バイアス周波数 | 105kHz |
入力感度/インピーダンス | Line:50mV/30kΩ |
出力レベル/インピーダンス | Line:0.5V/2.2kΩ(400Hz、0dB、アウトプットレベル最大) Headphone:2.2mV/8Ω(400Hz、0dB、アウトプットレベル最大) |
早巻き時間 | 約85秒(C-60) |
電源 | AC100V、50Hz/60Hz |
消費電力 | 最大23W |
外形寸法 | 幅430x高さ110x奥行250mm |
重量 | 約5.5kg |