Nakamichi 582Z
¥188,000(1981年頃)
解説
テープの性能を生かすキャリブレーション機能や、ドルビーCタイプNRなどの機能を搭載したカセットデッキ。
全ての高性能テープに万全の対応を図るため、15kHzと400Hzのテストトーンと各テープポジション毎の左右独立キャリブレーション機能を搭載しています。また、キャリブレーション時には調整用メーターとして動作するLEDピークレベルメーターを搭載しており、正確かつシビアな調整が可能です。
L/Rチャンネルが独立したバイアス・キャリブレーション機能を搭載しています。
バイアス調整には15kHzのテストトーンを使用します。Toneスイッチを15kHzのポジションにすると内蔵の発振器から15kHz(-20dB)のテストトーンが出力されてテープに録音されます。この時レベルメーターはバイアス調整用メーターに変わり、高感度されるため約0dBを表示し、目盛りも1ステップが1dBに拡大されて調整しやすくなります。
このメーターの表示を見ながらテストトーンの録音をし、EX(ノーマル系)、SX(CrO2系)、ZX(メタル系)の使用しているテープポジションに合った左右独立のバイアス調整ボリュームを回してL/Rとも0dBに合わせれば調整完了です。
L/Rチャンネルが独立した録音再生レベルキャリブレーション機能を搭載しています。
録音再生レベル調整には400Hzのテストトーンを使用します。Toneスイッチを400Hzのポジションにすると内蔵の発振器から400Hz(0dB)のテストトーンが出力されテープに録音されます。この時レベルメーターは録再レベルの調整用メーターに変わり、調整しやすいよう目盛りも1ステップ1dBに拡大されます。
このメーターを見ながらテストトーンの録音を行い、テープポジションに合ったL/R独立録音再生レベル調整ボリュームを回してL/Rとも0dBに合わせれば調整完了です。
レベルメーターには-40dB~+10dBを16セグメントで表示する50dBフルスケールのワイドレンジピークレベルメーターを採用しています。このレベルメーターはLEDによるデジタル表示となっており、オーバーシュートもなく応答性も優れています。また、Toneスイッチを400Hzまたは15kHzのポジションにするとキャリブレーション時の調整用メーターとなり、調整しやすいように指示値が拡大されます。
ノイズリダクションシステムとしてドルビーCタイプとBタイプを搭載しています。
Cタイプの動作原理は基本的にBタイプと同じで、聴感上ヒスノイズが気になる中高域の低レベル信号だけを増幅して録音し、再生時に元のレベルに戻すことでテープに付帯するヒスノイズを抑えています。Cタイプではハイレベルステージとローレベルステージの2つのノイズリダクションプロセッサーを搭載しており、トータルで最大20dBのノイズ低減を実現しています。
また、Cタイプでは動作を開始する周波数を入力レベルと周波数成分に応じて可変するスライディングバンド方式を採用しており、ブリージング現象を抑えています。さらにスペクトラル・スキューイング回路によって8kHz以上の高域信号の録音飽和を押さえ、周波数特性の劣化をなくすと共に低域信号が変調されるのを防いでいます。また、アンチサチュレーション・ネットワーク回路によって瞬間的な大入力によって引き起こされる録音飽和も抑えています。
582Zでは録音系と再生系それぞれに専用のドルビーNRプロセッサーを採用しており、録音再生同時モニターが可能です。
ヘッド部には録音用、再生用、消去用のヘッドが構造上も完全に分離したディスクリート3ヘッド方式を採用しています。
カセット中心窓に再生ヘッドと録音ヘッドを、左側小窓に消去ヘッドを、いずれもダブルキャプスタン間に配置しており、安定したテープテンションによってスペーシングロスの無いヘッドタッチを確保しています。
再生ヘッドにはP-8L型再生ヘッドを採用しています。
このヘッドにはクリスタロイのラミネートコアを採用しており、0.6ミクロンというナローギャップによって再生時に起こる損失を防ぎ、周波数特性を改善しています。さらに、低域のうねり(コンターエフェクト)を無くす形状をとることで超低域までフラットな再生を実現しています。
また、コアの片減り現象を無くす特殊形状を採用することで1万時間以上の長寿命を実現しています。
録音ヘッドにはR-8L型録音ヘッドを採用しています。
このヘッドにも再生ヘッドと同様にクリスタロイのラミネートコアを採用しており、3.5ミクロンギャップとすることで、高保磁力、高密度テープを使用した時にもシャープなクリティカルゾーンを得ています。また、大きなバイアス電流をかけても磁気歪や飽和が起こらず、低域から高域までMOL(最大出力レベル)の高い録音が可能です。
ヘッドの寿命は再生ヘッドと同様に1万時間以上を確保しています。
消去ヘッドにはE-8L型消去ヘッドを採用しています。
このヘッドは高周波特性の優れたフェライトコアと、先端に磁束密度の高いセンダストコアを使用したダブルギャップ型となっており、低損失で優れた消去効率を獲得しています。
メカニズム部には周波数分散型ダブルキャプスタン方式を採用しています。
この方式では、ダブルキャプスタン方式によって安定したテープ走行と安定したヘッドタッチを得ており、さらにテープパッドリフターによってパッドの圧力不均一による悪影響を防止しています。また、キャプスタンの直径やフライホイールの直径を変えた周波数分散型とすることでフラッター周期が重なることを避け、回転むらの低減と変調ノイズの改善を図っています。
駆動モーターにはPLLサーボモーターを採用しています。
このモーターでは回転数変動を検知し、基準信号発振器の信号と位相を比較して正確な回転数を制御しており、高精度な回転を可能にしています。
シャーシには共振制動型シャーシを採用しており、鉄に比べて減衰特性の大きなアルミニウムアロイを使用し、さらに樹脂をアウトサートすることで有害な微振動を吸収して共振の発生を防いでいます。
メカニズムのコントロールにはC-MOSロジックコントロールとモーター駆動によるサイレントメカニズムを採用しています。
コントロールボタンを押すとロジック回路が働きコントロールモーターによってメカニズムを動作させます。582Zではソレノイドプランジャーを用いずにカムをモーターで駆動するという方式を採用しており、操作音の低減するとともに、ソフトにテープに接触できるためテープやトランスポートへのダメージが少ない、温度上昇が少ない、消費電力が少ないなどのメリットを得ています。
録音イコライザー回路、再生イコライザー回路、出力ラインアンプ回路には、電解コンデンサーにネガティブ・フィードバックをかけるダブルNF回路を採用しています。これによりコンデンサーによって発生する歪を低く抑えると同時に直流安定化を図っています。
また、録音イコライザーアンプと録音ヘッドを直結し、カップリングコンデンサーを排除することで録音時の歪の改善や低域の位相ずれを防止するなどの特性改善を図っています。
巻き戻しからStopを経ずにダイレクトに再生状態に映ることができます。
イージーキューイング機能を搭載しており、FF、Rew中にポーズ/キューボタンを押すとスピードが約1/3にダウンし録音内容を聞くことができます。次にFF、Rewボタンを押し続けているとさらにスピードが約1/5に落ち、容易に曲の頭出しが行えます。
Recミュート機能を搭載しており、録音中にさらにRecボタンを押すと、押し続けている間だけ入力信号がカットされ、無音録音部(ブランク)が作れます。
MPXフィルターを内蔵しています。
タイマー録音再生機構を搭載しており、オーディオタイマーを使用することで留守録音や目覚まし再生が可能です。
高出力ヘッドホン端子を搭載しています。
別売のリモートコントロールユニットRM-200に対応しています。
RM-200を使用することで通常のテープオペレーションやキューイング、Recミュートなどのリモートコントロールが可能です。
機種の定格
型式 | カセットデッキ |
トラック型式 | 4トラック・2チャンネル・ステレオ方式 |
ヘッド | 3ヘッド(消去x1、録音x1、再生x1) |
モーター(テープ駆動用) | キャプスタン用:PLLサーボモーターx1 リール用:DCモーターx1 |
テープ速度 | 4.8cm/秒 |
ワウ・フラッター | 0.04%以下Wrms 0.08%以下Wpeak |
周波数特性 | 20Hz~20kHz |
総合S/N比(70μs、ZXテープ) | Dolby B NR in:66dB以上(400Hz、3%THD、IHF-A wtd rms) Dolby C NR in:72dB以上(400Hz、3%THD、IHF-A wtd rms) |
総合歪率(400Hz、0dB) | 0.8%以下(ZXテープ) 1.0%以下(SX、EX IIテープ) |
消去率 | 60dB以上(1kHz、0dB、ZXテープ) |
チャンネル・セパレーション | 37dB以上(1kHz、0dB) |
クロストーク | 60dB以上(1kHz、0dB) |
バイアス周波数 | 105kHz |
入力 | 50mV/50kΩ |
出力(400Hz、0dB、アウトプットレベル最大) | Line:1V/2.2kΩ Headphone:45mW/8Ω |
電源 | 100V、50/60Hz |
消費電力 | 最大30W |
外形寸法 | 幅500x高さ130x奥行350mm |
重量 | 約8.3kg |
別売 | リモートコントロールユニット RM-200(¥6,000) |