
Nakamichi 481Z
¥118,000(1981年頃)
解説
ドルビーCタイプNR、バイアス微調整機構、LEDピークレベルメーターを搭載した480シリーズの2世代目にあたるカセットデッキ。
481Zは、ヘッド構成やメカニズムなどの基本構造は482Zと全く同一となっています。
違いは、ドルビーNRプロセッサー及びその周辺回路を録音時、再生時とも兼用している点で、482Zで可能だった録音再生同時モニターができません。
ノイズリダクションシステムとしてドルビーBタイプとCタイプを搭載しています。
ドルビーCタイプの動作原理は基本的にBタイプと同じで、聴感上ヒスノイズが気になる中高域の低レベル信号だけを増幅して録音し、再生時に元のレベルに戻すことでテープに付帯するヒスノイズを除去しています。Cタイプではこれを発展させ、ハイレベルステージ用とローレベルステージ用の2つのノイズリダクション・プロセッサーに10dBずつ受け持たせることでトータルで最大20dBのノイズ低減を実現しています。
また、Cタイプでは動作を開始する周波数を入力レベルと周波数成分に応じて可変するスライディングバンド方式を採用しており、ブリージング現象を抑えています。さらに、スペクトラル・スキューイング回路によって8kHz以上の高域信号の録音飽和を抑えて秋鴉h数特性の劣化を無くすとともに、低域信号が変調されるのを防いでいます。また、アンチサチュレーションネットワーク回路によって瞬間的な大入力によって引き起こされる録音飽和も抑えられています。
ヘッド部には録音用・再生用・消去用の3つのヘッドが構造上も完全に分離したディスクリート3ヘッド方式を採用しています。
この方式では録音ヘッドと再生ヘッドのギャップの垂直性(アジマス)を正確に調整することができるというメリットがあります。482Zでは、カセット中心窓に再生ヘッド、録音ヘッドを配置し、左側小窓に消去ヘッドを配置しています。いずれのヘッドもダブルキャプスタン間に配置されており、安定したテープテンションによってスペーシングロスの無いヘッドタッチを確保しています。
再生ヘッドにはP-8L型再生ヘッドを採用しています。
このヘッドにはクリスタロイのラミネートコアを採用しており、0.6ミクロンというナローギャップによって再生時に起こる損失を防いでワイドな周波数特性を獲得しています。さらに、低域のうねり(コンターエフェクト)を無くす形状とすることで超低域までフラットな再生を可能にしています。
また、コアの片減り現象を無くす特殊形状を採用しており、1万時間以上の長寿命を実現しています。
録音ヘッドにはR-8L型録音ヘッドを採用しています。
再生ヘッドと同様にクリスタロイのラミネートコアを用いた3.5ミクロンギャップのヘッドで、高保磁力、高密度テープを使用したときにもシャープなクリティカルゾーンが得られます。また、大きなバイアス電流をかけても磁気歪や飽和を起こさず、低域から高域までMOL(最大出力レベル)の高い録音が可能です。
ヘッドの寿命については再生ヘッドと同様に1万時間以上を確保しています。
消去ヘッドにはE-8L型消去ヘッドを採用しています。
このヘッドは高周波特性の優れたフェライトコアと先端に磁束密度の高いセンダストコアを採用したダブルギャップ型となっています。
メカニズム部には周波数分散型ダブルキャプスタン方式を採用しています。
この方式ではダブルキャプスタン方式によって安定したテープ走行とヘッドタッチを獲得しています。さらに、二つのキャプスタンの直径及びフライホイールの直径を変えることによってフラッターの周期が重なるのを回避しており、総合的なワウ・フラッター特性を向上させています。
また、テープパッドリフターを装備しており、パッドの圧力不均一による悪影響を防止しています。
メインモーターにはDCサーボモーターを採用しています。
このモーターでは回転数変動を電圧の変化量として検知し、正確な回転数に制御しています。
シャーシには共振制動型シャーシを使用しており、鉄に比べて減衰特性の大きなアルミニウムアロイを使用するとともに樹脂をアウトサートして音に有害な微振動を吸収し、共振の発生を防止しています。
操作系にはC-MOSロジックコントロールを採用しています。
この方式は、セルフロック式のコントロールボタンを押すとコントロール回路が作動し、モーターに動作指令が発せられてメカニズムを駆動するという構造になっています。ソレノイドプランジャーを用いず、カムをモーターで駆動する方式を採用したことで操作音を低減するとともに、ソフトなテープタッチによってテープやトランスポートへのダメージを低減しています。さらに、温度上昇の低減や低消費電力化も実現しています。
コントロール部にはロジックコントロール方式のソフトタッチボタンを採用しています。
また、巻き戻しや早送りからストップボタンを経ずにダイレクトに再生状態に移れるなど、操作のシンプル化と信頼性向上を同時に実現しています。
バイアス・ファインチューニング機構を搭載しています。
これは、同ポジションのテープでも最適バイアス値が微妙に異なることを考慮したもので、481Zでは録音し再生した音が元の音楽ソースの音質に近くなるように録音、再生を繰り返して調整します。
バイアス電流の可変範囲は中心クリック位置から±10%となっています。
録音・再生時のレベル表示にワイドレンジLEDピークレベルメーターを搭載しており、-40dB~+10dBの50dBを16セグメントで表示できます。
タイマー録音再生機構を搭載しており、一般オーディオタイマーを使用することで留守録音や目覚まし再生が可能です。
MPXフィルターを内蔵しています。
高出力ヘッドホン端子を搭載しています。
また、ヘッドホンアンプのレベル2段切替スイッチを搭載しています。
テープスタートメモリー機能を搭載しています。
別売のリモートコントロールユニットRM-100が使用できます。
機種の定格
型式 | カセットデッキ |
トラック型式 | 4トラック・2チャンネル・ステレオ方式 |
ヘッド | 3ヘッド(消去x1、録音x1、再生x1) |
モーター(テープ駆動用) | キャプスタン用:DCサーボモーターx1 リール用:DCモーターx1 |
テープ速度 | 4.8cm/秒 |
ワウ・フラッター | 0.06%以下Wrms 0.11%以下Wpeak |
周波数特性 | 20Hz~20kHz |
総合S/N比(70μs、ZXテープ) | Dolby B NR in:63dB以上(400Hz、3%THD、IHF-A wtd rms) Dolby C NR in:69dB以上(400Hz、3%THD、IHF-A wtd rms) |
総合歪率(400Hz、0dB) | 0.9%以下(ZXテープ) 1.0%以下(SX、EX IIテープ) |
消去率 | 60dB以上(100Hz、0dB) |
チャンネル・セパレーション | 36dB以上(1kHz、0dB) |
クロストーク | 60dB以上(1kHz、0dB) |
バイアス周波数 | 105kHz |
入力 | 50mV/30kΩ |
出力(400Hz、0dB) | Line:600mV/2.2Ω Headphone:10mW(Phones Level:High)/8Ω |
電源 | 100V、50/60Hz |
消費電力 | 最大30W |
外形寸法 | 幅450x高さ135x奥行289mm |
重量 | 約6.4kg |
別売 | リモートコントロールユニット RM-100(¥6,000) |