
LUXMAN T-12
¥96,000(1977年10月発売)
解説
クォーツロック方式を採用したFMステレオチューナー。
アキュタッチ機構を搭載しています。
この機構はクォーツロック回路の制御電圧を利用して正確なセンターポイントを検出し、これによって機械的なロックをかける機構です。チューニングノブをゆっくりと回して放送局を探していくと、手応えとともにノブが一時的(約2秒)にロックされ、RF段を含めた正確な同頂点に止まります。
一般的にクォーツロック方式を採用したFMチューナーでは温度など外部条件の変化に対しても極めて安定性の高い受信状態が確保できるのが特長です。しかしこの方式は中間周波数だけを一定に保つように動作するもので、RF段はこの方式の恩恵を得られないばかりか、チューニング操作の仕方によっては最大100kHzの同調ズレが生じていました。
アキュタッチ機構を採用する事でこの問題を解消し、クォーツロック方式の利点を生かしています。
76MHz~90MHzの受信目盛の全域で一定のロックレンジを保つループゲイン・イコライザーを採用しています。
これは、受信周波数が高いか低いかを検出し、これによって周波数制御素子の制御能力をコントロールする事で、受信目盛の全域で常に最適のロックレンジを保つものです。
従来のクォーツロック方式では局部発振回路に接続されている制御素子の容量が一定なため、局部発振周波数が低い場合に比べて高い場合ほど局発回路の受ける影響が大きくなります。このため、受信周波数の低いポイントで適正なロックレンジとなるように調整すると、受信周波数の高いポイントではロックレンジが広くなりすぎ、ダイヤル目盛上で1つの放送局がかなりの幅を占領し、この幅の中で指針をどこにおいても受信できる形となります。これが結果的にRF段のトラッキングエラーを生じさせる原因となっていました。
そこで、ロックするための制御力を常に最高値に保つためにループゲイン・イコライザーを採用しています。
Dynamic Kick Systemを採用しており、クォーツロックがかかった状態で電源をOFFにした場合でも、電源をONにすれば自動的にロック状態に戻ります。
従来のクォーツロック方式では電源を切ってしまうとPLL回路のループが断ち切られてしまうため、再び電源を入れた時にチューニングを取り直してロック状態にする必要がありました。この問題を解消しています。
フロントエンドにはIF段以降の優れた特性を活かすためFM専用の5連バリコンを採用しています。また、各高周波増幅回路の選択度を高める事で十分な妨害除去能力を確保しています。
さらに低歪率化を実現するため、クワドラチャ検波回路を採用しています。また、パイロット信号キャンセラー付きのマルチプレックス回路によってローパスフィルターの位相特性を改善しています。
オーディオ段にはDCアンプ構成を採用しています。
IF段には2段の帯域幅切替機能を搭載しています。
Wide位置では位相特性の優れた2組のLC型ブロックフィルターで超低域歪率特性を実現しています。また、Narrow位置ではブロックフィルターにCeramicフィルターを組み合わせて高選択度特性を実現しています。
機種の定格
型式 | FMチューナー |
IHF実用感度 | 1.7μV/9.8dBf |
50dBクワイティング感度 | 3.2μV/15.2dBf |
2信号選択度 | 90dB(narrow、±400kHz) 60dB(narrow、300kHz、※別カタログ記載) |
SN比 | 80dB |
周波数特性 | 20Hz~17kHz -0.5dB(mono&stereo) |
歪率 | Wide 0.05%(1kHz、mono) 0.06%(1kHz、stereo) 0.05%(100Hz、mono) 0.07%(100Hz、stereo) 0.07%(6kHz、mono) 0.1%(6kHz、stereo) |
キャプチャー比 | wide:0.8dB narrow:2dB |
スプリアス特性 | 100dB |
IF妨害除去比 | 100dB |
イメージ比 | 100dB |
振幅変調抑圧度 | 62dB |
ステレオセパレーション | 50dB(wide、1kHz) 45dB(wide、100Hz) 45dB(wide、6kHz) |
出力 | 1V(fix.) |
出力インピーダンス | 100Ω |
付属装置 | チューニングロック機構 IF帯域幅切換 マルチパス確認用回路 録音用テストトーン回路 センターインジケーター シグナルストレングスインジケーター |
外形寸法 | 幅438x高さ78x奥行322mm |
重量 | 7.0kg |