LUXKIT KMQ80
¥124,000(1974年10月発売)
解説
管球式ステレオパワーアンプMQ80をキット化した管球式パワーアンプキット。
出力管にはプレートに大型のグラファイト電極を用いた双3極管6336Aを採用しています。
この球はプレート損失が大きく、片ユニットあたり30W、両ユニットでは60Wの大容量となっています。ただ、この種の出力管は構造上、各電極管のギャップが極めて狭く、緻密であるため、振動や熱によって電極自体が変形しないように材料的にも構造的にも安定していなければなりません。そこで、KMQ80ではRAYTHEON社のものを選別して使用しています。
出力トランスには6336Aの性能を最大限に生かすために開発されたクロスシャントプッシュプル動作の出力トランスを採用しています。
このトランスは特殊な巻線方式であるバイファイラ巻を採用しており、外観的にはOY15型と同じですが、内部構造は出力トランスの一次側巻線をプレート側とカソート側に分割し、さらにこれら2系統の巻線を同時に巻くバイファイラ巻きとしています。この方式によって小出力から大出力まで低い歪率に抑えることに成功しています。
また、出力トランス自身の周波数特性は200kHzまで伸びており、位相特性も優れているため、アンプの裸特性の改善と同時に負帰還をかけた場合の安定性も優れたものになっています。
ドライバ段にはカソードフォロア直結回路を採用しており、出力インピーダンスを低く抑えて波形歪の無いドライブ電圧を実現しています。また、この回路には多量の電圧負帰還がかかっており、歪や位相変化が少なく、出力管との直接結合も容易となっています。
この直結回路は結合部に時定数を持たないため、これに起因する過渡現象も生じず、オーバースイング時にも安定したドライブが可能となっています。
KMQ80ではこの段に双3極管12BH7Aを採用しています。
カソードフォロア直結回路では利得が得られないため、位相反転段で不足分を補っています。KMQ80ではこの段に利得の稼げるムラード型を採用しており、増幅度が大きく、かつ比較的内部抵抗の低い6AQ8を用いて大きな出力電圧を得ています。また、反転回路の利得バランスをとるため、プレート抵抗の値を若干変えて出力電圧をバランスさせています。
初段には5極管の6267を使用しており、位相反転段との間を直接結合にして、低域時定数回路を減らしています。
これは初段で大きな利得を得て総合利得を高めると同時に出力トランスの二次側から初段のカソードに比較的深い22dBの負帰還をかけ、歪率特性の改善を計った時に、安定性を損なわないためです。
電源回路には大型の電源トランスを用いるとともに出力回路の電源をブリッジ整流方式にすることでレギュレーションを最良の状態にしています。また、平滑回路には直流抵抗の低いチョークコイルと大容量の電解コンデンサ(330μFx2)を組み合わせて電源インピーダンスを下げ、電圧変動の少ない安定した回路部としています。
この他の回路として出力管を守る保護回路や、出力管の予熱回路を搭載しています。
動作チェック用チップジャックや入力レベルセットを搭載しています。
別売で専用ボンネットがありました。
機種の定格
型式 | 管球式パワーアンプキット | ||
回路方式 | クロスシャントPP回路 | ||
連続実効出力 | 40W/40W | ||
全高調波歪率 | 1%以下(40W/40W、1kHz) 0.5%以下(30W/30W、1kHz) |
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周波数特性 | 10Hz~50kHz -1dB以内 | ||
入力感度/インピーダンス | 約800mV/82kΩ | ||
残留雑音 | 1mV以下 | ||
ダンピングファクター | 15(8Ω負荷) | ||
負荷インピーダンス | 4Ω、8Ω、16Ω | ||
付属装置 | 動作チェック用チップジャック 入力レベルセット |
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使用真空管等 |
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消費電力 | 250W(最大出力時350W) | ||
外形寸法 | 幅435x高さ165x奥行260mm | ||
重量 | 17kg | ||
別売 | ボンネット B-80(¥6,000) アッセンブリマニュアル(¥2,500) |