LUXMAN L-309
¥129,000(1973年9月発売)
¥148,000(1974年頃)
解説
プリメイン型の集大成として開発されたトランジスタプリメインアンプ。
メインアンプ部にはプラスマイナススプリット電源による2段差動全段直結ピュアコンプリメンタリー方式の回路を採用しています。
出力段のB級動作部分にはNPN型とPNP型のパワートランジスタを各々ダーリントン接続しています。スイッチング特性を完全に対称とするため、パワートランジスタにはhfeの揃ったものをペアで採用しています。また、出力段とドライバ段には高域特性や耐破壊特性が優れたトランジスタを採用する事で出力短絡時の信頼性を高めています。
プリドライバ段には高域遮断周波数が高くコレクタ出力容量の少ないトランジスタを採用しており、高域の歪率も全出力にわたって1kHzとほぼ同じ値を得ています。このプリドライバ段は定電流駆動による差動増幅回路を採用しており、無信号時から最大出力時まで一定した電流で駆動する事でB級動作段を安定した状態に保っています。
プリアンプ部は、イコライザ回路、マイクミキシング回路、エミッタフォロアー回路、リニアイコライザ回路、トーンコントロール回路で構成されています。
イコライザ回路はA級SEPP回路を採用しています。
標準RIAAカーブとの偏差は使用パーツの許容誤差を小さくしてばらつきを極度に抑える事で対処しています。また、超ローノイズ型トランジスタや低雑音抵抗を信号回路の急所に使用する事で高いS/N比を確保しています。
トーンコントロール回路には変化特性の素直なラックス方式NF型を採用しています。
トーンコントロールは左右チャンネル独立式となっており、さらに高域と低域それぞれ3点ずつの湾曲点切換式となっており、幅広い範囲のコントロールが可能です。
トーンコントロールスイッチではトーンディフィートとローブーストを兼ねた設計となっています。
normal位置ではトーンコントロール回路が動作し、defeat位置にするとトーン回路が外れて直接次の段に進み、フラットな特性が得られます。low boostの位置ではトーンコントロール回路とローブースト回路が同時に動作して70Hz以下の低音域が増強され、トーンコントロールに重畳されます。
リニアイコライザを搭載しています。この回路はイコライザ回路の次の段である中間アンプ部に設けられた回路で、直線的な特性を与える一種のトーンコントロールのような動作をします。
リニアイコライザでは中央のフラットポジションから左に回すとup tiltが2段階、低域減衰と高域増強が同時に行われ、右に回すとdown tiltが2段階、低域増強と高域減衰が同時に行います。
電源部はA級ドライブ電源用巻線とB級出力段用巻線を分離する事で回路間の影響を受けにくくすると共に、2段差動段とA級ドライブ段に供給する電源を定電圧化しています。また、出力段用の電源にはハイリップルに耐えるコンピューター用の大容量アルミニウム電解コンデンサを採用しています。
プリアンプ用の電源にも定電圧回路を採用し、B級出力段の変動による混変調歪を除去しています。
マイクミキシング機能を搭載しており、左右2本のマイク出力とオーディオ機器の出力をミックスする事ができます。
ローカットフィルターとハイカットフィルターを搭載しており、それぞれ2点切り替え式でカットが可能です。
ローカットフィルターは70Hzの位置ではランブルノイズなどの低域雑音を除去する時、20Hzの位置ではサブソニックフィルターとして音楽再生に不必要な超低域雑音を除去する時に使用できます。
ハイカットフィルターは、7kHzの位置ではレコードのスクラッチノイズなどを減少させる時、12kHzの位置ではテープのヒスノイズを除去する時に使用できます。
背面にアッテネーターを搭載しています。
このアッテネーターは連続可変式となっており、0dBから-18dBまで減衰させる事が可能です。
音量ボリュームのプリセットや、深夜に静かに再生音を楽しむ時に利用できるほか、能率の良いスピーカーシステムで残留雑音が気になる時にも有効となっています。
また、このアッテネーターはメイン入力の直後に付いており、メイン部を単独で用いる場合にはレベルセットボリュームとして使用できます。
Phono1端子は入力インピーダンスの切換が可能となっており、3種類の中から選べます。
Tuner端子用レベルコントロールを搭載しており、適正な音量になるよう調節しておく事ができます。
機種の定格
型式 | プリメインアンプ |
<メインアンプ部> | |
連続実効出力 | 75W+75W(8Ω、両ch動作) 85W/85W(8Ω、片ch動作) |
全高調波歪率 | 0.03%以下(8Ω、75W) |
混変調歪率 | 0.03%以下(8Ω、75W、70Hz:7kHz=4:1) |
出力帯域幅 | 5Hz~50kHz -3dB(0.1%) |
入力感度/インピーダンス | 600mV/50kΩ |
残留雑音 | 0.5mV以下 |
ダンピングファクター | 40(8Ω、20Hz~20kHz) |
付属装置 | 可変式アッテネーター スピーカー切換スイッチ ヘッドホンジャック |
<プリアンプ部> | |
出力電圧 | Pre out:600mV(標準)、5V以上(最大) |
出力インピーダンス | Pre out:約100Ω |
周波数特性 | 10Hz~50kHz -1dB(Aux-1) |
全高調波歪率 | 0.03%以下(1kHz、1V、Aux-1) |
入力感度 | Phono1、2:2.5mV Tuner:100mV(レベルセット付き) Aux1、2:100mV Mic:2.5mV |
入力インピーダンス | Phono1:50kΩ、65kΩ、90kΩ切換 Phono2:65kΩ Tuner:40kΩ Aux1、2:100kΩ Mic:50kΩ |
SN比 | Phono:65dB以上 Tuner、Aux:80dB以上 Mic:60dB以上 |
最大許容入力 | 300mV以上(1kHz、RMS) |
トーンコントロール | LUX方式NF型湾曲点周波数切換付 低域湾曲点:150Hz、300Hz、600Hz 高域湾曲点:1.5kHz、3kHz、6kHz |
フィルタ | ローカット:20Hz、70Hz ハイカット:7kHz、12kHz |
ローブースト | 70Hz |
付属装置 | リニアイコライザ マイクミキシング テープダビング モニタースイッチ 入力インピーダンス切換 |
<総合> | |
使用半導体等 | トランジスタ 2SC1222/C1345(17) 2SA640(8) 2SC853(2) 2SC945(1) 2SA620(4) 2SC1431(2) 2SC1079(2) 2SA762(2) 2SA679(2) 2SB537(3) 2SD382(1) 2SC1103A(4) ダイオード WO-4(1) WZ290(2) ツェナーダイオード WZ120(2) WZ290(2) バリスタ KB165(2) KB265(2) SV-02(2) SV-03(4) IC TA7122AP(2) |
消費電力 | 300W(8Ω同時動作、最大出力時) |
外形寸法 | 幅485x高さ165x奥行300mm |
重量 | 15.5kg |