
Jeff Rowland Coherence
¥2,300,000(税別、1995年発売)
解説
アナログ的機能を最新のデジタル技術で仕上げたステレオプリアンプ。
ボリュームコントロールはクリスタルセミコンダクター社製の特製デバイスCS3310によってコントロールしています。
このデバイスはDACと異なり、信号がリファレンスグラウンドに入り込むことがなく、ノイズの点でも格段に優れているという特長を持っています。
DACに使用しているデバイスをアナログ信号に対する抵抗器に使用する場合、R-2Rラダー部分のシリコン抵抗によって歪が発生します。それをボリュームコントロールに使用すると音楽信号がノンリニアシリコン抵抗器を通過することとなり音が歪んでしまいます。コヒレンスに使用されたCS3310ではシンプルな物理的、電気的構造を用いることでポリシリコン抵抗の問題点であったノンリニアリティを克服しています。
このボリュームの採用により音楽信号をアッテネートするにつれてノイズの割合が増加するのを防いでいます。これは、ミュート機能と2機の独立したアナログオーディオチャンネルを備えた16ピンSOICパッケージのボリュームコントロールによるもので、オーディオ周波数帯域においてTHDを0.0007%に、ノイズ総和を10μVに抑えています。
操作部はマイクロコンピューターによるデジタルコントロールを採用しています。
コヒレンスでは命令信号によって操作した際にだけコンピューターが動作するよう設計されており、操作を終えるとすぐにスリープモードに入るため、音楽信号に悪影響が及びません。
入力機器は個別のゲインを持っています。これに対応するためコヒレンスは入力ゲインを±20dBの範囲でプリセットできます。
一旦そのチャンネルでセットすると、ゲイン、極性、左右レベル、インピーダンス等が記憶され、電源を外すか新たな変更をしない限りその記憶を維持します。
入力端子は7系統備えています。また、ホームシアター利用者の使用を考慮してバイパスチャンネルを1系統備えており、メインスピーカー、アンプ、ケーブルなどをそのままでドルビーサラウンドシステムによるコントロールが可能です。また、レコーディングアウトはインプット再生入力とは独立して動作します。
入出力端子は高精密XLR端子を採用しており、RCA入出力に対してはアダプターを介して接続します。
ターミネートスイッチによってインピーダンスを高/低インピーダンスと選択でき、ケーブルにマッチした音質が楽しめます。
コヒレンスの入出力ローインピーダンス機能はプロ仕様の超精密ニッケルコアトランスによって完全マッチを計っています。しかもハイレベル入力に備えて大コア仕様となっており、超低域反応のロールオフと飽和歪の問題を解決しています。さらに従来のトランスの問題点であった周波数帯域を0.5Hz~180kHzというスーパーワイドパスバンドとしています。
このトランスはコンピューターと超精密加工、正確な巻線コントロールによって実現したもので、ミューメタル3重構造の一体成型ケースに封入することで外部からの磁気の影響を排除しています。この精密トランスによってソース側のデジタル高周波ノイズを分離し、さらにグランド処理を解決しています。
電源部はバッテリー方式による完全DC電源となっています。
バッテリーの寿命がある限りAC電源はシャットアウトしており、バッテリーが充電必要レベルまで下がると充電管理回路が働いてACモードとなり、同時にバッテリーを充電し始めます。この動作は全て自動的に充電管理コンピュータで判断して命令します。この回路も一旦命令を行うとスリープモードとなるため、デジタルノイズの心配はありません。
通常はフル充電の状態で約8時間のピュアDCオペレーションが可能です。なお、手動による強制AC/DC電源変換も可能です。
シャーシはパワーサプライ、プリアンプとも厚さ9mmの6061ジュラルミンブロックからの削り出しとなっています。さらに内部は8個の小部屋に分けることで強度を高めると共に各小部屋間での内部干渉を排除しています。この強固なシャーシによって微細な振動や共振による信号への悪影響を徹底して排除しています。
また、プリアンプ部は片チャンネルにつき3つのモジュールで構成されており、一個一個がハードアルミ削り出しのケースに格納されています。また、ケース自体はソルボタンを介してシャーシの専用小部屋に格納されるように取り付けられています。
フロントパネルの操作部が取り外すことができ、そのままリモートコントローラーとなります。
このリモコン部はオプションでRFによる無線リモコンとなります。標準装備は赤外線による無線簡易リモコンが付属しています。
機種の定格
型式 | ステレオプリアンプ |
入力端子 | XLR:7系統 バイパス:1系統 |
出力端子 | メインアウト:2系統(XLR) レコードアウト:2系統(XLR) |
入力感度 | 各チャンネル毎に個別設定可能 |
インプットインピーダンス | 600Ω、18kΩ個別チャンネル毎に変換可能 |
ゲイン | 0dB、±20dB、インプット毎個別に変換設定可能 |
最大出力レベル | 13Vrms(24dBm) |
アウトプットインピーダンス | 50Ω(シングルエンド、バランス出力共) |
最大入力レベル | 13Vrms |
THDノイズ(20Hz~20kHz) | 0.0016%(1V input、1V output、ノミナルゲイン) 0.0015%(1V input、10V output、最大ゲイン) |
ミューティング | 有り |
アブソリュートフェイズ | スイッチにより変換 |
チャンネルセパレーション | 110dB以上 |
S/N比 | 96dB以上 |
出力ノイズレベル | 12μV(20Hz~20kHz、0dBゲイン) 105μV(20dBゲイン) |
パワーサプライ | 各12V7A、鉛カルシウムバッテリー マイクロプロセッサーによる充電管理システム搭載 |
AC電源 | AC100V、50Hz/60Hz |
AC電源要求量 | 最低10W、最大30W |
外形寸法 | 本体:幅445x高さ94x奥行309mm(ノブ突起部まで含む) 電源部:幅445x高さ94x奥行284mm |
重量 | 本体:18kg 電源部:19.5kg |