
HALCRO dm68
¥2,750,000(1台、2001年頃)
dm68GM(ガンメタルフィニッシュ):¥2,850,000(1台、2001年頃)
dm68MB(ミッドナイトブラック):¥3,000,000(1台、2003年頃、受注生産品)
解説
超低歪率を実現したモノラルパワーアンプ。
Zedアンプサーキットを採用しています。
この回路はDr. Bruce Halcro Candy氏による独創的な理論に基づく回路設計とパーツの選択によって、1kHzにおける高調波歪率が200ppb以下という超低歪率を実現しています。
入力段には独自の差動増幅入力回路を搭載しています。
また、入力回路基板には四層基板を採用しており、信号ラインと電源のアース電位の明確化や、ラインインピーダンスの低減を図っています。
出力部基板には六層基板を採用しており、出力素子による非直線磁界を打ち消すと共に、アースと信号電位を明確化させています。
入出力基板間と入出力端子間に分厚いアルミプレートによるエディカレント・シールドスクリーンを設置しています。これによりパワー段の大電流によって発生する渦電流を吸収し、入力部へのノイズ混入を防止しています。
出力部からの信号ラインには金メッキのソリッド・カッパー同軸を採用することで伝達ロスとノイズ混入を防止しています。また、極太のソリッドカッパーバーを出力インダクタンスとして直接用いることで、その太さと質量によってコイルの膨張・収縮・振動を防いで不要輻射を抑えています。
出力段にはV型MOS-FETを採用しています。
V型MOS-FETはバイアスと温度管理の難しいデバイスですが、応答速度が速くクロスオーバー歪の発生が少なく、真空管の三極管に酷似した出力特性と豊かな音色を持っています。
ビシェイやドイツ・ローダーシュタイン社製の高精度レジスター、WIMA製の高耐圧コンデンサなど、信頼性や耐久性に優れた工業用規格パーツを採用しています。
また、Ft=18GHzの超高周波トランジスタなどの特異なパーツ選択によって優れたパフォーマンスを獲得しています。
電源部にはUPFC(Universal Power Factor Corrected)パワーサプライを搭載しています。
この電源は広範囲の電源電圧(85V~270V)/周波数(45Hz~65Hz)に自動対応すると共に、複数の電気機器の使用に起因する電流歪を厳しく規制したヨーロッパの新CE規格(2002年)にいち早く対応しています。
ACパワー入力部にスイス製高性能フィルター素子を用いたコモンモード/シリーズモード7次EMIフィルターを装備しており、ACラインから電源部へのノイズの混入と外部への干渉を抑えています。
電源のスイッチング周波数を負荷条件やAC電源の状態に関わらず可聴帯域をはるかに超えた115kHzに固定しており、変調ノイズの発生を防ぐ高精度発振回路や周波数安定回路と相まってオーディオ帯域への干渉を排除し、ノイズの発生を抑えています。
一次電源回路によって電圧/電流歪を除去してクリーン化されたDCを大容量キャパシタに貯蔵します。そしてこのDCパワーを用いて再度115kHzのスイッチング電源を稼働させるDC/DCコンバーターを搭載する事で、高純度のDCを精製しています。
また、DC/DCコンバーターに大容量高周波トランスを挟み、電源とアンプをアイソレーションしています。さらにDC出力部に大型フェライトリングを用いたEMIフィルターを用いてノイズの混入と相互干渉を排除しています。
電源部全体を独立した別筐体に収納しており、物理的にオーディオシャーシから隔離する事で電気的・電磁的干渉を追放しています。
空気圧で作動するスタンバイスイッチや光ファイバー伝送によるインジケーターLEDを採用しています。
リードワイヤーの引き回しによるノイズの混入や電源部品のシャーシへの接触防止の入念な配慮がされています。
電源回路には最大電流、平均電流の制限回路や温度保護回路、電源電圧センサー、スイッチング回路感知センサーなどの保護回路を搭載しています。
また、オーディオ部には出力電流制限回路や温度センサーによる電流制限回路、アクティブ方式のパワートランジスタ保護回路などを搭載しています。
バランス/アンバランス入力に加え、入力バッファーを介在せずに入力できるローインピーダンス入力のミニマル・パス、将来の電流伝送モードのためのカレントモード入力などの入力端子を搭載しています。
スピーカー出力端子にはオリジナル設計の金メッキ大型パラコネクターを採用しています。
この端子はバナナプラグにも対応しています。また、二組の端子はバイワイヤ接続が可能です。
タワー型の独特のデザインを採用することで、電源部とアンプ部を独立筐体に収納して干渉を防いでいます。
また、このデザインによって設置床面積を最小に抑えています。
縦に長くスリットの入ったヒートシンク構造によってチムニー効果による放熱効果を得ています。
天然木ブロック削り出しのウッドスタンドを装備しています。
通常のカラーバリエーションの他に受注生産品としてガンメタル仕上げのものがありました。
2003年のカタログでは、ガンメタル仕上げが消えており、その代わりにミッドナイトブラック仕上げが掲載されていました。
機種の定格
型式 | モノラルパワーアンプ |
定格出力 | 225W(8Ω) 400W(4Ω) |
低負荷駆動特性 | 150W(8Ω) 300W(4Ω) 600W(2Ω) 1,200W(1Ω) |
高周波出力特性 | 100kHzにて-0.5dB |
全高調波歪率 | -134dB(1kHz) |
SMPTE-IM | -120dB |
入力端子 | XLRバランス:1系統 RCAアンバランス:2系統 RCAカレントモード:1系統 |
外形寸法 | 幅400x高さ790x奥行400mm |
重量 | 57kg |