DIATONE DS-2000HR
¥200,000(1台、1987年10月発売)
解説
音の立ち上がり、持続する音、音の立ち上下がりの3要素を追求することでより自然な音を目指したスピーカーシステム。
ウーファー
低域には30cmコーン型ウーファーを搭載しています。
振動板にはダイヤトーン独自のイントラプライハイブリッドカーブド・ハニカムコーンを採用しています。
この振動板はハニカム振動板を発展させたもので、表スキンには高剛性によるハイスピード再生と適正なロスを持たせ、裏スキンには信号が消えた後の減衰の美しさを追求しています。
表スキンには芳香族ポリアミド系アラミッドとPAN系高強度炭素繊維をイントラプライ構造に織り込んだハイブリッドウィービングを採用しています。アラミッド繊維は高強度・高剛性に加え軽量で適度な内部損失を持つ芳香族ポリアミド系の繊維素材で、PAN系高強度炭素繊維は原料にポリアクリロニトリルを用いることで極めて高い比弾性率を持っています。また、裏スキンには芳香族ポリアミド系アラミッドを採用し、適度な内部損失によるロスファクターの向上を目指しています。
こうして完成したスキン材をハイブリッド構造とすることで互いの物理特性を最大限に発揮しています。また、ダストキャップもハイブリッドウィービングと徹底しています。
さらに、独自開発の可撓性レジンを用いることで最適ロスファクターを獲得しています。
フレーム部にはアドバンスドDMM方式を採用しています。
DMM方式では磁気回路全体を強固なフレームで固定することで優れた立ち上がり特性を実現しています。アドバンスドDMMはDMM方式の高剛性思想をさらに発展させ、構造部全体での振動減衰特性の向上を図っています。
まず、高剛性化によって磁気回路をしっかりと抑えこみ、基本波に対して剛性を維持しています。そして、高次モードに対しては、これを分散させる新しい構造物をコンピュータ・シミュレーションによって完成しています。これによりセンターポールの固有音と中高域を汚すフレームの固有振動を抑え、S/Nの良い鮮明な再生を可能としています。
スコーカー
中域には6.0cmドーム型ミッドレンジを搭載しています。
振動板には60mm強化拡散ボロナイズドチタンDUDを採用しています。
振動板の構造に採用されたDUDはダイアフラムとボイスコイルボビンを一体化したもので、ボイスコイルに発生した駆動力を損失なく振動板に伝達することが可能です。これによりトランジェント応答性の改善や高い高域限界周波数の実現とともに、リニアリティや耐入力性の向上などの特性を得ています。
また、DS-2000HRでは振動板素材に使用されているボロンの拡散成長をさらに強力に推し進め、高比弾性率、高耐久・耐候性、固有音の抑制などの優れた特性をつきつめています。
フレーム部にはDM方式を採用しており、磁気回路のプレート部をマウントプレート化するモノコック構造によって磁気回路を直接エンクロージャーにマウントしています。これによりさらなる高剛性化を実現しています。
DS-2000HRではDS-10000クラヴィールで導入された技術を投入しています。
まず、振動板を支えるサスペンション部での固有音を抑えるため、減衰特性に優れた芳香族アラミッド繊維をバイアスとし、グラファイトスライスを混入したブチルゴムを成形し3層構造とする積層タンジェンシャルエッジを採用しています。
また、振動板からのバックプレッシャーが直接かかってくるアコースティックカバーには手造りによるスピニング加工が施されており、共振モードを一箇所に集中させず、構造的に分散させています。
さらにフロントカバーは不要輻射を抑えるために硬鋼線金網を廃止し、かわりに硬鋼線と銅線をハイブリッド構造に織り込むことで不要共振を低減させています。
ツィーター
高域には中域同様に強化拡散ボロナイズドチタンDUD振動板を用いた2.3cmドーム型ツィーターを搭載しています。
このユニットではエッジ部に特殊コーティングの積層タンジェンシャルエッジを採用しており、不要共振を抑えてDUD振動板の音を際立たせています。
また、フレーム部にDM方式を採用することで立ち上がり特性を改善しています。
ネットワーク
ネットワーク回路間の電磁干渉やエンクロージャーの振動による影響を低減するため、ネットワーク部には3ピース分離分割方式を採用しています。そして、その基材には減衰の美しいスプルース材を使用し、さらに裏板からの振動を減衰させるために制振材を介したフローティング構造としています。
ネットワークのワイヤリングにはハンダ付けを一切使用せず、同時に金属境界面における歪にも着目し、無酸素銅スリーブ圧着ワイヤリングを採用しています。さらに、ラジアル分電によって3つのユニットへ同じ条件でダイレクト給電しています。
配線材には全て銅結晶の境界面の少ない線状結晶銅線を採用しており、さらに各素子や配列にも厳選を尽くしています。
エンクロージャー
エンクロージャーのバッフル板には40mm厚の2層ラミネートパーティクルボードを採用しています。また、胴板や裏板全てにわたって剛性を強化し、さらにエンクロージャー全体の剛性強化のためにコンピューター解析を駆使して共振モードを抑える分散共振構造を採用しています。
また、パーティクルボード自体のチップの構成を吟味して内部損失の高いものを厳選して使用するとともに、内圧の付加の大きい裏板を3層構造とすることで充分な曲げ剛性を確保するなど、各板の固有共振を分散させることで減衰特性を改善し、美しい減衰を実現しています。
外観は美しい木目のサッサフラス突き板仕上げが施されています。
ユニットの取付けボルトには制振キャップを採用しており、ボルト部での共振の影響を排除しています。
その他
別売りオプションとしてDS-2000HR専用に設計されたスピーカースタンドDK-2000がありました。
DK-2000では脚部にはエンクロージャーと同じ高密度パーティクルボードを使用し、底部は黒鉛鋳鉄とパーティクルボードの貼り合わせというハイブリッド構造を採用しています。
さらに、スピーカー底板とスタンド底部間や2本の脚部間に生じる定在波に着目し、スタンド底部はラウンド形状に、脚部配置は非平行としています。
機種の定格
方式 | 3ウェイ3スピーカー・密閉方式・ブックシェルフ型 |
使用ユニット | 低域用:30cmコーン型 中域用:6.0cmドーム型 高域用:2.3cmドーム型 |
公称インピーダンス | 6Ω |
再生周波数帯域 | 28Hz~40kHz |
出力音圧レベル | 90dB/W/m |
クロスオーバー周波数 | 500Hz、4.5kHz |
最大入力 | 180W(EIAJ) |
外形寸法 | 幅410x高さ712x奥行372mm |
重量 | 42kg |
別売:スピーカースタンド DK-2000(2台1組、¥80,000) | |
外形寸法 | 幅440x高さ272x奥行400mm |
重量 | 25kg |