
DENON DR-M4
¥107,000(1983年頃)
解説
Mシリーズの最高級モデルとして開発されたカセットデッキ。
メカニズム部には2キャプスタン方式を採用しています。この方式ではヘッドを中心に2組のキャプスタンを設置し、2組のキャプスタン各々の回転数を微妙に変化させ、ヘッド付近での適度なテープテンションと安定したテープ走行を実現しています。
また、カセットハーフ内におけるハブの暴れや、テープのスリップシートとの褶動等で発生するテープ振動などもヘッド面に影響を与える前に両キャプスタンとピンチローラーで遮断し、変調ノイズの少ないクリアな音質を実現しています。
キャプスタン駆動用モーターには平面対向形設計を用いたダイレクトドライブモーターを採用しており、強い回転トルクを得るとともにトルクムラを解消しています。また、ブラシレスなため電気ノイズを発生せず、耐久性も向上させています。
さらに、キャプスタン駆動をダイレクトで行い、フライホイール面につけられた速度検出機構との組合せによって直接サーボすることでワウフラッターを向上させています。また、このサーボ回路には全周積分サンプル&ホールド方式のFGサーボを採用しており、高利得で極めて高い安定性を得ています。
DR-M4では回転速度の制御にクォーツロック方式を採用しており、正確・安定な水晶発振器を用いた位相制御回路によってFGサーボの動作をより確実なものにしています。
走行系にはサイレントメカニズムを採用しています。
このメカニズムでは機械音の大きなプランジャーなどを排してモーターカム駆動を採用しています。さらに光学検出式カウンター、独自の位置検出用エンコーダーとメカ制御モーター(カム駆動用)の間にマイコンを置き、テープのポイント探しと駆動モードの確認をコンピューターが制御しています。
ノンスリップ・リールドライブ方式を採用しており、均一な巻取りテンションを実現しています。
この方式はリールモーターの回転数とトルクの関係特性を生かしたもので、一般的な機械的スリップ機構で問題となる温度や湿度などの変化による巻取り力の変化を解消し、ドロップアウト、ワウフラッター、位相特性などを改善するとともにメカニズムの耐久性を向上しています。
録再ヘッドにはSF(スーパーフリケンシー)コンビネーションヘッドを採用しています。
録音ヘッド部には飽和磁束密度の高いスーパー・パーマロイをコアに使用しており、メタルテープなどのハイレベル録音テープにも対応しています。さらにダミーコアにセンダストを採用することで耐摩耗性を大幅に向上しています。
また、再生ヘッド部には高域損失が少なく耐摩耗性にも優れた高密度フェライトコアをコンビネーションヘッドとしては初採用しています。しかも磁性粒子の大きさを従来の1/2以下とすることで変調ノイズの原因となる摺動ノイズや温度変化による磁気特性の変動を改善しています。
SFヘッドはこれらのヘッドをコンビネーション化しており、特に高域特性や位相特性の保持に欠かせない録音ギャップと再生ギャップの平行ズレは1/20度以内に抑えることでワイドでフラットな周波数特性を獲得しています。さらに、コイルには無酸素銅線を使用することで音質改善を図っています。
電源回路はアンプ系とロジック系を完全分離しており、相互干渉を排除しています。また、アンプ系にはインデペンデント・パワー・サプライと呼ばれる独立電源方式を採用しており、回路の安定化を実現しています。
録音アンプと再生アンプはローノイズ設計の差動入力プッシュプルDCアンプ回路を採用しており、±2電源方式によって高圧電源を供給しています。これによりダイナミックレンジをさらに拡大し、信号伝送系でのクリッピング歪を防止しています。また、再生ヘッドと初段アンプ間のコンデンサーを除去するとともに終段までDCアンプで構成することで高音質化を図っています。
バイアス回路には安定度の高いトランスとプッシュプル構成を採用しており、バイアス波形歪を改善するとともに消去ノイズを低減しています。
ディスプレイ部には蛍光バーグラフ方式を採用したワイドレンジのピークメーターを採用しています。
FLメーター内にはドルビーB&C、モニター、テープポジションなどが集中ディスプレイされています。また、ピークメーターには1.5秒ごとにオートリセットされるピークホールド機能を装備しています。
ワンタッチレックポーズ機構を採用しており、RECボタンを押すだけで録音スタンバイとなります。
ノイズリダクションシステムとしてドルビーBタイプとドルビーCタイプを採用しています。
DR-M4ではダブルドルビー構成とすることで録音同時モニター時にもドルビー再生が可能です。
MPXフィルターを内蔵しており、FMソースの19kHzパイロット信号のカットが可能です。
コンピューターカウンターを採用しており、スイッチ切り替えにより通常の4桁電子カウンターだけでなく走行時間を分秒単位で表示することもできます。
コンピューターチューニング機能を搭載しています。
この機能では10万通りの調整の中からテープに最適なポジションを自動的に見つけ、あらゆるテープに対して感度を合わせ、周波数特性をフラットに設定できます。
前後20曲の頭出しが可能なコンピューターサーチ機能を搭載しています。
この機能は曲間の3~4秒以上の無録音部分を感知して動作します。
メモリーストップ機構を搭載しています。
ヘッドホンのボリュームコントロールと連動したアウトプットレベルコントロールを搭載しています。
タイマーPlay/Rec機構を搭載しており、別売りタイマーを接続することで留守録音や目覚し再生が可能です。
Pause/Mute機構を採用しており、レックミュートとポーズを1つにまとめることで操作性の向上を図っています。
録音時に押し続けるとレックミュート、離すとポーズとなり、再びプレイボタンを押すと録音状態となります。
後追い録音機構を搭載しており、テープを走行させたままの再生状態からワンタッチで録音状態に移れます。
リモコン端子を搭載しており、別売りリモコンユニットRC-57が使用できます。
機種の定格
型式 | カセットデッキ |
トラック方式 | 4トラック2チャンネルステレオ |
テープセレクター | 3段オートテープセレクター(Normal、CrO2、Metal) |
ヘッド | 録再:SFコンビネーションヘッド 消去:ダブルギャップフェライトヘッド |
モーター | キャプスタン用:FGサーボクォーツロックDDモーター リール用:DCモーター メカ制御用:DCモーター |
ワウ・フラッター | ±0.04%(W.Peak) 0.027%(WRMS) |
早巻時間 | 約90秒(C-60) |
総合周波数特性(入力-20VU) | Metalテープ:20Hz~23kHz(25Hz~21kHz ±3dB) |
総合SN比 | Dolby C NR on:73dB以上(3%THDレベルに対して、CCIR/ARM測定法) |
入力端子 | Mic:0.35mV/10kΩ不平衡(10kΩ以下のマイクに適合) Line:77.5mV/50kΩ不平衡 |
出力端子(Vol.max) | Line:775mV/10kΩ不平衡 Headphone:1.2mW(8Ω負荷時、8Ω~2kΩのヘッドホンに適合) |
電源 | AC100V、50Hz/60Hz |
消費電力 | 22W |
外形寸法 | 幅464x高さ115x奥行286mm |
重量 | 6.5kg |
別売:リモコンユニット RC-57(¥6,000) | |
コード長 | 5m |
外形寸法 | 幅38x高さ17x奥行120mm |
重量 | 約160g(コード含む) |