
DENON DL-103S
¥27,000(1974年7月発売)
解説
DL-103をベースにしつつ振動系の軽量化とともコンプライアンスを大きくしたMCカートリッジ。
振動系の構造や発電方式、外形寸法、出力電圧、電気インピーダンスはDL-103と全く同じとなっています。
カンチレバーを極細の鋼線で支えているワンポイント支持方式となっており、カンチレバーが長さの方向の有害な振動をしません。また、ステレオ再生に大切な針先の上下左右どの方向への振動も重となっており、コンプライアンスが同じです。さらに針圧がかかって針先が沈んでも振動の中心点が変わらない構造となっています。
アーマチュア部には十字形アーマチュアを採用しており、カンチレバーの質量を小さくするとともに左右チャンネルの発電コイルをしっかりと対称的に巻くのを容易にしています。
カンチレバーにはDENON独自の二重構造カンチレバーを採用しています。
この構造では外側のパイプと内側のパイプの長さの組み合わせによって高域特性をかなり自由に変化させる事が可能となっています。さらに両パイプの材質の組み合わせや表面処理によっても特性のコントロールが可能です。
DL-103Sではカンチレバーに特殊合金を使用しており、最適な寸法の組み合わせを採っています。また、ダイヤモンドチップを0.15mm角とより小さく軽くし、高域共振周波数を限界とも言える約60kHzに設定する事ができ、優れた特性を得ています。
ワンポイント支持の鋼線をDL-103より若干細くするとともにダンパーの材質を変えて針先の動きを柔らかくしています。これは振動系の軽量化と相まって、可聴周波数範囲だけでなく低音域から超高音域まで機械インピーダンスを小さくした事になります。これにより音溝に対する針先の追従性が高められ、針飛びが起きにくくなっています。
適正針圧はDL-103より0.7g軽く1.8±0.3gに設定されています。自重もDL-103より0.7g軽くなっているため、同じヘッドシェルを使用すると針圧の再調整なしで交換が可能です。
針先のダイヤモンドチップには、録音用カッター針の形状に似た特殊研磨の楕円針を採用しています。
軽質量・高追従性と相まってトレーシング歪や損失の少ない再生を実現しています。
DL-103Sには別売りオプションとしてディスクリート4チャンネル用のピックアップフィルタPUF-1がありました。
DL-103Sは再生周波数帯域が60kHz以上にも及ぶため、4チャンネル再生で不要な45kHz以上の成分も再生してしまいます。この成分は4復調時に雑音となるため、PUF-1を用いてカットする必要があります。
ディスクリート再生時以外は不要ですが、接続したままでも使用が可能です。
機種の定格
型式 | MC型カートリッジ |
出力電圧 | 0.3mV(1kHz、50mm/s水平方向) |
再生周波数範囲 | 20Hz~60kHz |
出力インピーダンス | 40Ω(1kHz) |
適合負荷インピーダンス | 100Ω以上(トランス40Ω) |
左右分離度 | 25dB以上(1kHz) |
左右感度差 | 1dB以内(1kHz) |
コンプライアンス | 8x10-6cm/dyne(100Hz、レコードで測定) 25x10-6cm/dyne(Static測定) |
針先 | 0.15mm角ソリッドダイヤチップ特殊楕円針 |
適正針圧 | 1.8±0.3g |
自重 | 約7.8g |
付属 | 添付データ |
針交換 | 本体交換(¥16,000) |
別売 | ピックアップフィルター PUA-1(2個1組、¥1,500) |