
DENON DA-S1
¥780,000(1993年発売)
解説
ALPHAプロセッサーを搭載したD/Aコンバーター。
デジタル回路にはALPHAプロセッサー(Adaptive Line Pattern Harmonized Algorithm)を採用しています。
この方式は16ビットデータを20ビットクオリティで再現するアナログ波形再現技術で、CDなどのデジタルデータをベースにして自然界に存在するアナログ波形に近づくようデジタルデータの補間を行っています。
また、A/Dコンバーターを通さずにデジタル化された信号が記録されているなどの記録方法が異なるCDを再生した場合においても、入力信号を判断して遮断帯域を自動的に可変する世界初の適応型デジタルフィルター(Automatic Low Pass filter Harmonic Adjustment)としても機能しています。
デジタルフィルターには多ビット入力が可能なデバイスとしてNPC社のSM5842APを搭載しています。
5種類のデジタルインターフェースを搭載しており、ST-Link、Tos-Link、平衡型ライン(AES/EBUバランス伝送)XLR、不平衡型(2線式同軸アンバランス伝送)RCA、BNCに対応しています。
特にST-Linkは米国AT&T社の純正規格に対応しており、光信号伝送パワーレベル及びLED発光波長などの互換性を確保した事で完全な互換性を実現しています。
クロック発振回路にはレベルIとレベルIIの2つのモードを同時搭載しており、EIAJ規格で定められた業務用と民生用機器のサンプリング周波数に厳格に対応しています。
レベルIIのLiTaO3バリメガモジュールによるPLLは、PCMエンコーダーのサンプリング周波数である44.056kHzに適合する±1000ppmのモードとなっています。また、レベルIは単にクロック周波数精度だけでなく、クロックのC/Nを向上させてジッターの低減を図るため、超階段接合型の電圧可変容量ダイオードと高精度水晶発振器によるVCXOを用いたダブルPLL方式となっており、±50ppm以上の可変幅を持つ事で精度の高いクロック周波数を取り出しています。
DP-S1と組み合わせて使用する際にはST Gen-Lockによる同期ドライブが可能です。この状態ではD/Aコンバーター側のマスタークロックでCDトランスポート側のICが同一タイミングで作動し、デジタル伝送で生じるクロックのジッターを追放しています。
44.1kHzのワードクロックのような低い周波数を用いて同期をかける場合、CDトランスポート側にもPLL回路と水晶発振器が必要となるため、厳密にはマスタークロック方式ではありませんでした。ST Gen-Lock方式ではD/Aコンバーター側に搭載されたマスタークロックを用いてCDトランスポートを動作するため、発振周波数と受信周波数が完全同期します。水晶発振器の発振周波数は16.9344MHzとなっており、従来の光伝送モジュールでは帯域が狭く送れませんでしたが、DA-S1ではST-Linkを用いた方式を採用する事でこれを可能にしています。
ST Gen-LockはST-Link、TOS-Link、XLR、RCA、BNCのデータ伝送全てに対応しています。
アナログ出力段にはFET入力ディスクリート無帰還A級DCアンプを搭載しており、低インピーダンスと広ダイナミックレンジを獲得しています。
また、DCサーボによって直流成分をカットしており、アンプやスピーカーを破損から守っています。
DA-S1ではデジタルフィルター出力からデジタル演算によって反転信号を創り出し、D/Aコンバーターの出力段をバランス駆動しています。これによりデジタル処理で対称性の精度を高め、よりピュアな信号増幅を可能としています。
バランス出力アンプは専用のアンプボードで別系統としており、信号がアンプを何段も通過しないよう配慮しています。
D/A変換部にはDENON独自のΛ(LAMBDA=Ladder-form Multiple Bias D/A)S.L.C.を搭載しています。
D/Aコンバーター用のLSIはS/N、THD、リニアリティの3点で選別されたLSIを使用しています。また、従来のLSIで問題であった微分直線性の調整による波形上下のゲイン誤差発生を解決するため、差動構成電流加算回路を搭載しています。抵抗アレーのトラッキング精度が確保できる回路構成によって2次高調波歪発生を防いでいます。
内部レイアウトは中央のデジタル回路の左右にアナログ回路の左右チャンネル回路を配置した構成となっています。これによりデジタル回路とアナログ回路の干渉を排除すると共に左右チャンネル回路間の干渉も排除しています。
また、超高速フォトカプラによって全信号ラインのデジタル・アナログ分離を実現しており、アースラインからデジタルノイズがアナログ信号に漏れるのも防いでいます。
銅メッキシールド構造を採用しており、高周波ノイズを防いでいます。
機種の定格
型式 | D/Aコンバーター |
チャンネル数 | 2チャンネル |
周波数特性 | 2Hz~20kHz ±0.2dB |
SN比 | 120dB |
ダイナミックレンジ | 100dB |
全高調波歪率 | 0.0015%(1kHz) |
チャンネルセパレーション | 120dB(1kHz) |
ワウ・フラッター | 測定限界(±0.001%W.peak)以下 |
出力電圧 | Unbalance:2.5Vrms(10kΩ負荷) Balance:2.5Vrms(10kΩ負荷、3番HOT) |
デジタル入力信号フォーマット | フォーマット:Digital Audio Interface(CP-1201) Optical-ST:受光電力-10~-32.5dBm以上、受光波長875nm(-50 +25nm) Optical-TOS:受光電力-15~-27dBm以上、受光波長660nm(±30nm) Coaxial-RCA:0.5Vp-p/75Ω Coaxial-BNC:0.5Vp-p/75Ω Balance:5.0Vp-p/110Ω |
デジタル出力信号フォーマット | フォーマット:Digital Audio Interface(CP-1201) Optical-TOS:ピーク光電力-15~-21dBm、発光波長660nm Coaxial-RCA:0.5Vp-p/75Ω Output-ST Gen Lock Clock:ピーク光電力-15~-20dBm、発光波長875nm、信号フォーマット16.9344MHz(384fs)、Duty50%クロック |
電源 | AC100V、50Hz/60Hz |
消費電力 | 27W |
外形寸法 | 幅434x高さ141x奥行419mm |
重量 | 20.0kg |
付属 | RCAピンケーブル |