
DENON AVC-A1SE
¥395,000(2000年頃)
解説
DTS-ESデコーダーを搭載し、DENONの技術とノウハウを投入して開発されたフラッグシップモデルのAVアンプ。
ルーカスフィルムの提唱する高音質・高信頼性基準であるTHX ultra規格を取得しており、マルチチャンネルの大迫力再生でも高音質を楽しめる高信頼性を確保しています。
AVC-A1SEでは構造的にも回路的にも理想的な構成を目指して設計されており、各回路は電源部(トランス巻線)から独立し、さらに回路毎にシールドされて独立したブロックとして構成されています。
シャーシには黒色塗装した厚さ1.6mmのシャーシと黒色アルマイト塗装と銅板によって構成された大型アルミヒートシンクを採用する事で不要振動の防止と信頼性を実現しています。また、内部レイアウトについては電源トランスをほぼ中央に配置してトランス自身の振動などの影響を制御しています。そして、ユニットの中央部の下にデジタル回路を、左右にパワーアンプ回路を配置しており、アナログ回路部とビデオ回路部も分離構造とする事で各回路間の相互干渉を徹底的に排除しています。
パワーアンプ部にはPc220Wの大電流型パワートランジスタを用いたシングルプッシュプル回路を採用しています。この回路を合計7チャンネル搭載し、全チャンネル同一パワー、同一レスポンスを実現しています。
また、左右対称に配置した大型アルミブロックヒートシンクと低騒音、インテリジェント制御による空冷ファンを併用しており、永年使用した際の信頼性にも配慮しています。
電源部は大型トロイダルトランスと大容量音響用ブロックコンデンサ、ショットキーバリア型ダイオードなどによって構成されています。
トーンコントロール回路をジャンプするダイレクト機能や、ビデオ回路を電源からシャットダウンしてオーディオアンプとして動作するビデオオフ機能、AVC-A1SEをアナログステレオアンプとして機能させるピュアダイレクトモードを搭載しています。これにより、純粋にステレオ音楽のみをさらに高音質で楽しむ事が可能となっています。
本体のキー操作によってピュアダイレクトモードにすると、ビデオ回路電源が自動的にオフとなり、FL管を消灯します。また、アナログ音声入力時はデジタル回路電源もオフにし、オーディオ回路に他の回路の影響が及ぶのを最大限抑えています。
プリアンプ部では、8チャンネルの信号レベルを制御するボリューム回路に高耐圧プロセスを使用したデバイスを厳選して採用しています。また、全チャンネルともにディファレンシャル構成とする事で高ダイナミックレンジを実現しています。これにより全チャンネルで相互偏差0.3dB以下、可変ステップ1dBの正確な音量調整を実現しています。
また、信号をパワーアンプ部に送り出すバッファーアンプ部にも高音質タイプを採用しています。プリアンプ部の電源は大容量音響用ブロックコンデンサとファーストリカバリーダイオードで構成されています。
New D.D.S.C.デジタルを搭載しています。
New D.D.S.C.は、サラウンド回路を構成する一つ一つのブロックを高性能な集積回路の組み合わせで完成されたダイナミック・ディスクリート・サラウンド回路(D.D.S.C.)をさらに高精度化してブラッシュアップしたもので、より正確なサラウンド再生を可能にしています。
また、PCM、DTS、ドルビーデジタル等のデジタルソースに対し、DENONならではのHi-Fiサラウンド再生を実現しています。
ドルビーデジタルやDTSのデコーダー部には業務用エンコーダーにも使用されている32bit flating point DSPであるSHARCを2個搭載しています。これによりオリジナルデコードプログラムにより近い32bit floating point方式の演算処理を可能にしており、より完成度の高いデコードを実現しています。
初段のDSPではドルビーデジタルやDTSのデコードを行い、2段目のDSPではTHXフィルターやEX用マトリクス処理、ベースマネージメント、各チャンネルのディレイなどを行っています。
32bit floating point方式によってデコードされた32bit信号を24bitに変換してデジタルフィルター部へ伝送するため、独自開発したI2Sインターフェースを搭載しています。
D/A変換部には192kHz/24bit D/Aコンバーターを全チャンネルディファレンシャル駆動で使用しています。
D/A変換後のポストローパスフィルターにはDENON製CDプレイヤーなどにも採用されたGIC型フィルターを全チャンネルに採用しており、急峻なカットオフ特性によってクリアな帯域内再生と帯域外ノイズの低減を実現しています。
フロント2chにはAL24プロセッシングを搭載しています。
リニアPCM信号を入力した際のD/A変換処理にDENON独自のアナログ波形再現技術であるAL24プロセッシングを搭載しています。これにより音楽信号をデジタル入力した際の量子化歪を低減し、低レベルの再生時の音楽再生能力を高めています。
また、D/Aコンバーターをダブル差動動作に切り替えてD/A変換を行います。
DVDの高音質フォーマットである96kHz/24bitのデジタル信号を直接入力できるインターフェース回路を搭載しており、DVD-Video/Audioの高音質規格で作られたソースも直接デジタル入力する事でより高音質な再生が可能です。
96kHz/24bit A/Dコンバーターを搭載しており、アナログの2チャンネル信号でもマルチチャンネルサラウンド再生が楽しめます。
レーザーディスク用にRFディモジュレーターを搭載しています。
DTS社が開発した6.1chのサラウンド方式であるDTS-ESのデコーダーを搭載しています。
DTS-ES Discrete6.1では、追加されたSBチャンネルを含めて6.1チャンネル全てがデジタルディスクリート方式によって独立したチャンネルとして記録されています。
DTS-ES Matrix6.1では、追加されたSBチャンネルを予めSL/SRチャンネルへマトリクスエンコードを施して挿入し、再生時にマトリクスデコーダーによってSL/SR/SBの各チャンネルにデコードしています。DTS社の開発したデジタルマトリクスデコーダーを用いる事で記録時のエンコーダーと特性をあわせる事ができ、従来の5.1chや6.1chシステムに比べて制作者のサウンドデザインに忠実な再生が可能です。また、ビットストリームのフォーマットは従来のDTSと互換性があるため、5.1chの信号ソースでもMatrix6.1の効果が確認できます。
DTS Neo:6ではDTS-ES Matrix6.1に採用されたデジタルマトリクスデコーダーを従来の2チャンネル信号に応用する事で6.1chのサラウンド再生を行います。高精度な入力信号検出及びマトリクス処理によって6.1chの全てのチャンネルでフルバンド(周波数特性20~20kHz以上)の再生が可能な上、各チャンネル間のセパレーション特性もデジタルディスクリート方式と同等なほどまで向上しています。DTS Neo:6haは再生する信号ソースの内容に合わせてDTS Neo:6 Cinema、DTS Neo:6 Musicの2つのモードがあります。
THXサラウンドEXデコーダーを搭載しています。
THXサラウンドEXは「ドルビーデジタルEXで収録されたソフトを高品位な映画館で楽しむ」というコンセプトのもとにルーカスフィルム社が提案しドルビー研究所の協力を得て実現したサラウンド方式を、一般家庭で忠実に再現するフォーマットです。このTHXプロセッサーの働きによって家庭用AVルームでのサラウンド再生に対して最適化を行い、映画音響制作者が意図した音場を再現します。
従来のドルビーデジタルやDTSの2ch~5.1chの信号に対しても同様にTHXプロセッサの働きによる再生が可能です。
オートサラウンドバックチャンネルオン機能を搭載しています。
ドルビーデジタルEXやDTS-ESでエンコードされていることを示す識別信号が記録されたDVDなどのディスクを再生すると、その識別信号を検出して自動的にサラウンドバックチャンネルをONにします。
また、5.1chのドルビーデジタルやDTSエンコードされているソフトも好みに応じて6.1chや7.1chに切り替えて楽しめます。
DENON独自のサラウンドモードを搭載しています。
このサラウンドモードでは2chから5.1chの信号ソース全てで7.1chの再生が可能です。ドルビーデジタルやDTSなどの5.1chソースで映画館のマルチサラウンドスピーカーによるエフェクト効果を再現するニューデザインのWide Screenモードなどが選択できます。
サラウンドスピーカーA/B切換機能を搭載しており、2系統をサラウンドモード毎に選択できます。
SPコンフィグレーションやタイムアライメント等のパラメータはそれぞれ独立して調整でき、推奨スピーカーシステムやセッティングが異なる音楽と映画のサラウンド音場に一台で対応しています。
将来性や発展性を考慮して8chEXT入力端子を2系統搭載しています。
RS-232Cポートを装備しており、プログラムアップデート機能に対応した設計となっています。
また、双方向のコントロール拡張コマンド機能も備えており、カスタムインストールに対応する事も可能になっています。
マルチゾーン出力機能とセレクト機能を搭載しており、メインルームを含めて最大で3ゾーンまでソースを選択して出力できます。
コンポーネントビデオ入力を3系統と出力を1系統装備しています。
信号切換には高性能リレーを採用しており、DVDのプログレッシブ映像などの高周波数帯域信号にも対応しています。
独立可変型のトーンコントロール機能を搭載しており、サブウーファーを含めて全チャンネルを独立して調整できます。
オンスクリーンディスプレイ機能を搭載しています。
大型液晶を装備したタッチパネルリモコンが付属しています。
このリモコンでは320x240ドット表示の大型液晶パネルを装備しており、ジョグスイッチとタッチパネルで操作する方式となっています。また、暗い場所でも操作ができるようグリーン色のバックライト点灯機能を装備しています。
このリモコンでは照明やエアコンを含め赤外線方式で制御可能な機器を最大23機種まで操作登録できます。また、キーの位置変更やキーの追加・削除等の編集が可能となっており、ユーザーが使いやすいようカスタマイズできる設計となっています。ユーザーバックアップ機能を搭載しており、カスタマイズした設定は本体内フラッシュメモリにバックアップが可能です。
さらに、タッチパネル方式の液晶画面の他に使用頻度の高いキーボタン(ボリューム、チャンネル、ミュート、ライト)は独立したキーボタンを装備しています。
その他に、各社のリモコン送信コードを呼び出して操作するプリセットメモリ機能や、手持ちのリモコンのキーボタンを登録する学習機能、複数の機器の電源投入からの一連の操作手順を記憶できるシステムコール機能(最大20コール)を搭載しています。
将来的にパソコンからリモコン設定を変更できるようUSB端子を搭載していました。
機種の定格
型式 | AVアンプ |
対応フォーマット | THX Surround EX DTS-ES DTS Dolby Digital Dolby Pro Logic |
サラウンドモード | 8通り スーパースタジアム ロックアリーナ ジャズクラブ クラシックコンサート モノムービー マトリクス ワイドスクリーン 5ch/7chステレオ |
オーディオ入力 | アナログ:13系統 マルチチャンネル入力:8ch 2系統 |
オーディオ出力 | プリアウト:8ch レックアウト:5系統 マルチルームアウト:2系統 |
デジタル入力 | 光:6系統 同軸:3系統 ドルビーデジタル(AC-3 RF):1系統 |
デジタル出力 | 2系統 |
ビデオ入力 | コンポジット:8系統 S端子:8系統 コンポーネント:3系統 |
ビデオ出力 | コンポジット:6系統 S端子:5系統 コンポーネント:1系統 |
スピーカー出力 | フロント(L/R):1系統 センター:1系統 サラウンド(L/R):2系統 サラウンドバック(L/R):1系統 |
<パワーアンプ部> | |
定格出力 | フロント: 170W+170W(8Ω、20Hz~20kHz、THD 0.05%) 200W+200W(6Ω、20Hz~20kHz、THD 0.05%) センター: 170W(8Ω、20Hz~20kHz、THD 0.05%) 200W(6Ω、20Hz~20kHz、THD 0.05%) サラウンド: 170W+170W(8Ω、20Hz~20kHz、THD 0.05%) 200W+200W(6Ω、20Hz~20kHz、THD 0.05%) サラウンドバック: 170W+170W(8Ω、20Hz~20kHz、THD 0.05%) 200W+200W(6Ω、20Hz~20kHz、THD 0.05%) |
実用最大出力 | フロント:275W+275W(6Ω、EIAJ) センター:275W(6Ω、EIAJ) サラウンド:275W+275W(6Ω、EIAJ) サラウンドバック:275W+275W(6Ω、EIAJ) |
ダイナミックパワー | 190W+190W(8Ω) 310W+310W(4Ω) 390W+390W(2Ω) |
出力端子 | フロント・センター:6~16Ω サラウンド AorB:6~16Ω、A+B:8~16Ω サラウンドバック AorB:6~16Ω |
<プリアンプ部> | |
入力感度/インピーダンス | 200mV/47kΩ |
S/N比 | 105dB(ダイレクトモード) |
周波数特性 | 10Hz~100kHz +0 -3dB(ダイレクトモード) |
歪率 | 0.005%(20Hz~20kHz、ダイレクトモード) |
定格出力 | 1.2V |
最大出力 | 8V |
<デジタル部> | |
S/N比 | 115dB |
ダイナミックレンジ | 112dB |
全高調波歪率 | 0.003% |
定格出力 | 2V(0dB再生時) |
<フォノイコライザー部(Phono入力-Rec out)> | |
入力感度 | 2.5mV |
RIAA偏差 | 20Hz~20kHz ±1dB |
S/N比 | 80dB(JIS-A、5mV入力) |
歪率 | 0.005%(1kHz、3V出力時) |
定格出力 | 150mV |
最大出力 | 8V |
<ビデオ部> | |
標準映像端子 | 入出力レベル/インピーダンス:1Vp-p/75Ω 周波数特性:5Hz~10MHz 0 -3dB |
S映像端子 | 入出力レベル/インピーダンス Y:1Vp-p/75Ω C:0.286Vp-p/75Ω 周波数特性:5Hz~10MHz 0 -3dB |
コンポーネント端子 | 入出力レベル/インピーダンス Y:1Vp-p/75Ω Cb/Cr:0.7Vp-p/75Ω 周波数特性:DC~30MHz 0 -3dB |
<総合> | |
電源電圧 | AC100V、50Hz/60Hz |
消費電力 | 580W(電気用品取締法) 3W以下(スタンバイ時) |
最大外形寸法 | 幅434x高さ216x奥行486mm(フット、つまみ、端子を含む) |
重量 | 29kg |
付属:ワイヤレスリモコン RC-871 | |
乾電池 | DC6V LR6(単3型)アルカリ乾電池4本使用 |
外形寸法 | 幅96x高さ38x奥行168.5mm(フット、つまみ、端子を含む) |
重量 | 242g(乾電池含む) |