COUNTERPOINT NPA
¥1,005,000(1台、1993年頃)
解説
完全無帰還構成を採用したモノラルパワーアンプ。
NPAは(Natural Progression Monaural Amplifier)の略になります。
NPAは6DJ8真空管入力段と絶縁ゲート・バイポーラトランジスタ(IGBT)出力段を組み合わせた構造となっており、真空管増幅ならではの音をIGBTが250Aの高電流出力によってスピーカーへ送り込んでいます。
内部ロスの少ないBJT(バイポーラジャンクショントランジスタ)の出力特性と、電流ゲインの高いMOS
FET双方の特性を持つIGBTを有効に生かす回路を設計するとともに、IGBTによるドライブ回路のシンプル化も行うことで、トランジスタ固有の音質を排除したハイカレントパワーアンプを実現しています。
NPAでは独自のゲイン段設計を採用しており、リニアリティや信号純度の向上を図っています。
この方式では、2本の3極管のカソードとカソードを接続し、一方のカソードを通じてもう一方のカソードをドライブしています。そして、3極管のカソードを定電流負荷に直接カップリングすることによって高域におけるディティールと信号ダイナミクスの損失を排除しています。また、プレートに定電流負荷を採用することで歪率を低減しています。
NPAではオープンループ増幅回路の採用によってトランジェントIM歪を排除し、完全バランス対称入力を実現しています。
一般的なアンプではNFBが採用されていますが、特性改善に効果はあっても原理上極めて大きなループを持つ形となるため、音楽信号を扱う動作には適していない面がありました。NPAではダブルカップル3極管という構成によって高域歪を抑えているため、低歪率化を図るためのオーバーオールフィードバックループの必要がありません。入力段にフィードバックループが無いためパワーアンプとプリアンプ間の相互干渉を低減でき、機器間のマッチングがとりやすくなっています。
また、真空管アンプが本来高入力インピーダンスなため、言わば逆流フィードバック信号の影響を受けにくいなどのメリットも持っています。さらに、オープンループ初段設計では完全に対称な入力段となるため、プリアンプはマッチングのとれた負荷においてプッシュプルを行うことができます。
NPAではDCサーボも排しており、DCループを出力段にのみ組み込んでいます。これによりDCサーボ補正のメリットを得つつサーボと信号間の干渉を抑えています。
入力端子にはXLRコネクターとRCAコネクターを搭載しています。
NPAは完全バランス入力回路となっているため、通常はXLRコネクターの使用を推奨しています。RCAコネクターは正相入力用の+端子と信号極性を反転するタイプのプリアンプとの接続に対応する−端子を装備しており、+端子と−端子の出力端子を別々に持つプリアンプにも対応しています。
出力端子は2組をパラレル結線にて配置しているため、バイワイヤリング接続を行う場合には両組とも使用することができます。
リアパネルにはミュートスイッチを搭載しています。
このスイッチをスピーカーを繋ぎ変える際に使用することで、ケーブル抜き差し時のショックノイズを心配せずにスムーズに接続変更ができます。
シャーシは30点のアルミニウム及び銅メッキスチールパーツで組み上げられており、いずれの部品ともカリフォルニア州カールスバッドのカウンターポイント社内精密板金加工部門において製造・加工されています。
また、NPAではサイドをウッドパネルで補強しています。
パワートランスには社内精密磁気部門で設計・製造された2000VAトランスを採用しています。
トランスはシャーシから物理的にアイソレートして設置されており、静かな動作を実現しています。
パーツ類にはドイツ製メタルフィルム1%抵抗や、TRT製フィルムキャパシター等のパーツを採用しています。
保護機能として出力ヒューズを採用するとともに、サーボの出力電圧を絶えずモニターし、入力オーバードライブ等によって電圧が所定の限界を超えた場合に動作するミュート回路を搭載しています。
機種の定格
型式 | 管球式モノラルパワーアンプ |
定格出力 | 300W(4Ω) 150W(8Ω) |
入力インピーダンス | 100kΩ(対アース間、全入力) |
入力感度 | 1.15Vrms(最大出力時) |
ゲイン | 29.7dB |
周波数特性 | 3Hz~100kHz -3dB |
SN比 | 90dB以上(1W、IHF WTD) |
スルーレイト | 25V/μs |
電流供給能力 | 250A(peak to peak) |
消費電力 | 150W(無信号時) |
外形寸法 | 幅483x高さ172x奥行470mm |
重量 | 32kg |