B&W 801F
¥450,000(1台、1982年11月発売)
解説
英国EMIなどの数多くのスタジオでモニタースピーカーとして採用されたフロア型スピーカーシステム。
ユニットはレーザー・インターフェロメーターによる振動解析試験などの綿密なテストが行われており、さらにユニット同士の特性差が0.25dB以内のものをワンペアとしてアッセンブルしています。
また、完成したシステム1台ごとに実測データが添付されてました。
低域には27cmコーン型ウーファーを搭載しています。
コーン素材にはベクストレーンを採用し、ダンプ剤によるコーティングが施されています。ベクストレーンは結晶性が大きく剛性も高いポリマーで、リニアリティに優れ、低域の過渡入力に対しても歪みやたわみが生じにくいというメリットを持っています。また、ライブサウンドの120dBに匹敵しうる最大音圧レベルが得られるよう、コーンのストロークは6mmと十分に余裕を持たせています。
中域には10cmコーン型ミッドレンジを搭載しています。
振動板には過渡特性やリニアリティに優れた特性を持つ芳香族ポリアミド繊維が採用されています。宇宙船の熱処理に用いられているものとほぼ同じポリアミド・ファイバーグラスをB&Wがパテントを保有する特殊な処理法によって樹脂加工して使用しています。
高域には2.6cmドーム型ツィーターを搭載しています。
ダイアフラムはポリエステル単繊維を編み上げたもので、可聴帯域外までの周波数特性を確保しています。
マグネットには磁束密度の高いニッケルコバルトを採用しており、ユニット体積をぎりぎりまで小さくすることで高域のディスパージョンを改善しています。
ネットワーク部はコンピューターによる解析技術を導入しており、独自に開発した数値最適化と呼ばれる設計技法を応用して設計されています。これは各ユニット単位の特性データと回路定数とを組合せてコンピューターのディスプレイ上でクロスオーバーネットワークの動作がシミュレートできるシステムで、ユニット間の理想的な繋がりを高精度に追求できます。
また、ネットワークを構成するパーツにも高品質なものを採用することで音質劣化を防いでいます。
保護回路として世界で初めて開発されたAPOC(Audio Powered Overload Circuit)を搭載しており、スタジオでのマイクスタンド転倒等の事故による過大入力によるユニット破損を防いでいます。
APOCシステムでは各ユニットのボイスコイルに加えられる電圧を読み取り、ある一定の時間内に限界値を超えるとリレーを働かせて入力信号をカットし、オーバーロードによる熱破損からユニットを保護します。
APOCシステム作動中は赤いLEDが点灯し、オーバーロード状態が解消されるとLEDは消灯してスピーカーの動作は自動的に降っかいします。
エンクロージャーは各ユニットのブロックが独立した構造となっており、ユニット相互の干渉を低減しています。また、各ユニットの位置に段差をつけたインライン配置を採用しており、ユニット間の位相ズレを補正し、水平方向の広がりを改善しています。さらに、クロスオーバーネットワーク自体でも生じるタイムラグを解消するため、綿密な遅延補正が行われています。
ウーファー用エンクロージャーは25mm厚のパーティクルボードの両面に突き板を張って気密性を高め、内部には25mm厚の合板で額縁状の補強を施し、エンクロージャー自体の共振を低減しています。また、ウーファーは厚いゴムガスケットでエンクロージャーから分離しており、振動の伝搬を遮断することでエンクロージャーの面振動を12~14dB改善しています。
ミッドレンジ用エンクロージャーは内部にファイバークリートと呼ばれるガラス繊維強化コンクリートを使用しています。硬ポリスチレン製エンクロージャーをファイバークリートで裏打ちしたことによって木製エンクロージャーと比較して300Hz~3kHzの帯域で振動を10dB改善しています。
ツィーターとミッドレンジのエンクロージャーはラバーマウントによってウーファー用エンクロージャーから分離しています。さらにリスニングポジションに応じて指向性が調整できるよう左右に角度を変えることが出来ます。
エンクロージャーの全てのエッジは斜めにカットされており、音像定位を乱す回折現象を防いでいます。
リスニングルームの音響条件に応じて中域と高域のレベルが調整できる音場補正コントローラーをミッドレンジエンクロージャーの背面に装備しています。
トータルデザインはペンタグラム・デザイン研究所で科学的なアプローチから得られたフォルムをベースにまとめられています。
また、外観の仕上げはウォールナット仕上げとブラック仕上げの2種類のバリエーションがありました。
機種の定格
方式 | 3ウェイ・3スピーカー・密閉方式・フロア型 | ||
使用ユニット | 低域用:27cmコーン型 中域用:10cmコーン型 高域用:2.6cmドーム型 |
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周波数特性 | 45Hz~20kHz ±2dB(距離2m、正面、フリーフィールド) | ||
インピーダンス | 8Ω | ||
許容入力 | 出力50W以上のアンプに適合。 APOCシステム内蔵により上限無し |
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出力音圧レベル | 85dB/W/m(300Hz) | ||
クロスオーバー周波数 | 400Hz、3.5kHz、24dB/oct | ||
レベルコントロール |
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過負荷保護回路 | APOC(Audio Power Overload Circuit)システム | ||
外形寸法 | 幅432x高さ948x奥行560mm | ||
重量 | 47kg |