AUDIO CRAFT PE-6000 Signature
MM/MC:¥1,250,000(1995年発売)
MM:¥950,000(受注生産、1995年発売)
解説
PE-5000の後継機として開発されたフォノイコライザーアンプ。
PE-6000 SignatureはMM/MCモデルと受注生産のMM専用モデルの2種類のバージョンがありました。
回路には差動増幅2段によるNF型イコライザー回路を採用しており、出力回路は2段目差動増幅器に直結したSEPP回路の増設によって構成されており、バランスとアンバランスの出力信号を得ています。
イコライザー回路とDCレギュレーター及びMCトランスのターミネート抵抗にはVishayのKシリーズとSシリーズを採用しています。
KシリーズとSシリーズはセラミック基板上に特殊抵抗体のBMF(バルク・メタル・フォリ)を張り、フォトエッチング技法によって複雑な回路パターンをコスえいしたもので、抵抗体の精度と環境に対する安定度に優れた信頼性を持っています。
この抵抗は高精度の測定装置や医療機器、NASAの宇宙船や各プラントの中心的な制御機器などに使用されています。
PE-5000ではプリント基板の電源及びシグナルアースをそれぞれ一極集中配線としており、再生音の力強さと分解能を高めていました。PE-6000ではこの手法をさらに発展させ、誘電特性に優れたBTレジンを用いた70ミクロン箔の両面基板を採用しており、一極集中配線の徹底を図っています。
各素子への給電は一本線による枝分かれ配線を避け、それぞれ独立した給電方式のプリントパターンを採用しています。これは電源供給の配線が共通インピーダンスになることを避けたもので、レギュレーターも同一思想で設計されています。これにより一点集中アース方式の効果を上げてS/N比を向上しています。
PE-6000ではさらに発展させ、SEPP回路によるノーマル出力と高精度のバランス出力を増設し、さらに強化レギュレーターはイコライザー部と同様の接続方式を採用しています。
デジタル機器や他のライン出力レベルを考慮してイコライザーゲインは42dB(アンバランス)に設定されており、バランス出力は42dB+6dBとなっています。
MM/MC対応モデルでは、各種MCカートリッジのインピーダンスに対応するため、3系統MCトランスを新開発して搭載しています。
本体内部にはクリーン電源として専用のアイソレーション電源を搭載しており、機内でAC31V、101Hzの正弦波を作り出してドライブしています。これにより商用電源の波形歪やノイズの影響を排除しています。
増幅器は外部電源からフローティングされて外部電源を含む機器接続ループを防ぐことができるため、微小信号を扱うフォノイコライザーアンプとして理想的な電源を実現しています。
電源供給や信号入出力部などの主要配線には誘電特性に優れたテフロンワイヤーを採用しています。
電源ケーブルには0.75スクエアの6N銅線を採用しており、本体側にはIEC規格の三極ACインレットを装備しています。
このACインレットには2本のヒューズが内蔵されており、1本はメインヒューズ、他の1本は予備ヒューズとなっています。使用ヒューズはミゼット型/1Aです。
入出力端子は直接リアパネルに取り付けず、絶縁体による端子板に取り付けてからマウントしています。
これによりシャーシに流れる迷走電流による影響を防いでいます。
MCトランスユニット、イコライザー回路基板、DCレギュレーター基板はそれぞれ特殊なソルボダンパーによってフローティングしています。
また、アイソレーションレギュレーターは回路及びシールドケースをダンピング材を介してマウントしており、シャーシからフローティングしています。
DC電源とアイソレーションレギュレーターをそれぞれ2.3mm厚の電磁シールドケース内に収めており、内部伝搬を防いでいます。
機種の定格
型式 | フォノイコライザーアンプ |
入力感度 | MM:2.5mV/47kΩ(1kHz) |
許容入力 | 150mV(1kHz) |
RIAA偏差 | 20Hz~20kHz ±0.3dB |
利得 | 42dB(1kHz、Normal) 42dB+6dB(Balanced/Hot 2) |
S/N比 | 90dB以上 |
出力インピーダンス | 100Ω(Normal、Balanced) |
MC入力 | Low:2Ω~10Ω(4Ω=20dB) Mid:10Ω~30Ω(20Ω=16dB) High:25Ω~40Ω(40Ω=16dB) |
外形寸法 | 幅430x高さ80x奥行310mm |
重量 | 約12kg |