AKG K1000
¥175,000(1990年発売)
解説
          AKGのトランスデューサーテクノロジーを投入し、新しいアプローチで開発されたヘッドホン。
          
          イヤーパッドを排除し、耳を覆う代わりにこめかみの辺りをソフトに押さえるパッドを採用しています。これによりイヤーパッドによって発生する定在波や櫛形効果を排除しています。
          K1000では固定パッドと可変パッドのコンビネーションによってリスナー個々の頭の形状にフィットさせており、長時間装着による疲労や圧迫感を防いでいます。
          
          フレーム全体はスイベルによって最大60゜回転させる事ができ、最適なポジションに設定する事ができます。また、フレーム素材にはファイバーを50%含有したプラスチックマトリックスを用いる事で軽量化と耐久性向上を図っています。
          ヘッドバンドはソフトレザー製で、セルフアジャスト設計によって高さが自動調整できます。
          
          自由な振動を実現するため、新設計の磁気回路やダイアフラムを採用しています。
          大型マグネットやヨークを用いる従来のダイナミック型ではダンプ材を用いても望ましい透明感が得られず、AOC(オープン感係数=Acoustic Openness Coefficient)は30%程度でした。しかも良好な低域特性を得るためには分厚いイヤーパッドが必要でした。また、オルトダイナミック型もAOCの向上に伴って効率が低下して基準に合いませんでした。そして、ダイアフラム動作のリニアな電磁型もAOCは50%を超えることが出来ず、イヤーパッドが必要でした。
          K1000の磁気回路は高磁束のネオジウムアイアン・マグネットの小片をラジアルに配したVLD(Ventilated Linear Dynamic)マグネットシステムと呼ばれる独自のデザインを採用しています。この方式ではマグネットにも電極にも通気性が妨げられない構造となり、AOC75%という高い数値をクリアし、音質の阻害も抑えられ、急峻なトランジェントにも優れた追従性を確保しています。
          
          ダイアフラムは多層構造になっており、極めて薄いプラスチックフォイル材を7μm厚の2層にした上で、16世紀のヴァイオリン作りたちが多用していたものと同じワニス材をコーティングしています。これにより可聴帯域全域にわたって不要な部分振動を抑えています。さらにダイアフラムの動作を完全なピストンモーションにするため、独自のクロスサスペンションを採用しています。コイルには80μm厚のアルミリングを採用しており、NC工作機械で入念な加工が施されています。
          Qを高くとっているため特別なダンピングが不要な構造となっています。
          
          一般的なヘッドホンジャックでは信号強度が足りないため、K1000の入力端子には金メッキ4端子XLRコネクタ付きの専用ケーブルによってパワーアンプのスピーカー端子へダイレクトにバランス接続する設計となっています。理想的にはクラスAアンプでの使用を想定しています。
          
          システム全体の周波数特性は従来のヘッドホンのようなカプラーを用いずに無響室にて測定しており、スピーカーと変わらない基準で調整がされています。
          
          別売りオプションとして、スピーカーとの切替を容易にするセレクターボックスがありました。
			
機種の定格
| 型式 | ヘッドホン | 
| 形式 | VLDマグネット使用ダイナミックトランスデューサー | 
| 定格インピーダンス | 120Ω | 
| 入力感度 | 74dB(1mW、スリーフィールド) | 
| 使用電力 | 100mW | 
| 歪率 | 2次高調波:0.5%以下(200~2kHz) 2次高調波:1.0%以下(100~200Hz)  | 
                
| 重量 | 270g(コード含まず) | 
.jpg)
.jpg)
.jpg)