
AKAI GXC-760D
¥148,000(1976年頃)
解説
3ヘッド・3モーター構成のステレオカセットデッキ。
ヘッド部には3ヘッド構成を採用しています。
録音ヘッドと再生ヘッドを専用化できる3ヘッド方式ではそれぞれのヘッドに要求される特性を十分に発揮させるような設計をすることができるため、テープの性能を活かした録音、再生が可能です。
ヘッドには新開発のREC/PBコンビネーションGXヘッドを採用しています。
このヘッドでは録音ヘッドギャップは4μ、再生ヘッドギャップは1μの超ナローギャップが採用されており、カセットの弱点である高域リニアリティが改善され、低域から高域までフラットに伸びた周波数特性が得られています。また、GXヘッドの特長である耐摩耗性により、優れた初期特性を持続することができます。
REC/PBコンビネーションGXヘッドは1ギャップ用にできているカセットハーフのパッドに対して2ギャップを入れ、しかもテープタッチが十分にとれるような表面形状の工夫がされています。録音ギャップと再生ギャップの平行度やチャンネル間の方向ズレも超精密加工技術を駆使して殆ど影響のない程度に抑えられており、アジマス損失や位相ズレを抑えています。
また、録再ヘッドが4.5mmと隣接していますが、録音同時テープモニター時の漏洩磁束(フィールドスルー)による影響を少なくするため特殊なシールド法が採用されています。さらに、再生時に低域がうなるコンターエフェクトに対してもヘッドの先端形状の加工によって対策が施されています。
録音同時テープモニター時のタイム差は0.1秒に抑えられています。
メカニズム部には前面操作型のカセットデッキでは初めて3モーターシステムを採用しています。
従来の1モーターカセットデッキはテープ走行・供給・巻取りを1個のモーターでドライブさせるため回転機構部にベルト、アイドラ、プーリーなどの多くの回転部品を使用していました。このため構成部品の精度誤差やガタつき、経時変化による回転の不均一などが発生していました。3モーターシステムではキャプスタンモーターはフライホイールの回転のみ、テープ供給及び巻取りにはそれぞれ専用のリールモーターを用いてテープ走行の安定化を図っています。
メカニズムにはクローズドループダブルキャプスタン方式を採用しています。
この方式では2組のピンチローラーとキャプスタンシャフトによってテープの供給と巻取り側を遮断してループ内のテンションを常に一定に保ち、テープ巻径による張力の変化を防止してテープのヘッドに対するタッチを安定して保つことができます。
キャプスタンシャフト、ベルト、フライホイール、ピンチローラーなどの走行径を構成する部品には真円度誤差0.1μで鏡面研磨仕上げの3mmφキャプスタンシャフトを始めとして寸法精度を良くして工作誤差を無くすための注意が払われています。
キャプスタンモーターにはAKAIのオープンリールデッキで実績のあるCPG内蔵ACサーボモーターをカセット用に小型化して採用しています。回転トルクが大きくサーボアンプの働きで回転を正確にコントロールするCPG内蔵ACモーターは固定部と回転部に刻まれた40枚のギアによって検出されるAC電圧が大きく、周波数発電機がモーターに内蔵されているため、検出部の芯振れを最小限に抑えることができ、滑らかな回転を実現しています。
リールモーターにはスロットレスDCモーターを採用しています。
このモーターは特に低速時におけるコッキングが少なく耐久性に優れています。また、リールモーターはベルトやプーリーを介さずにダイレクトにリール軸と直結しているため、ベルトの摩耗や劣化による特性変化がありません。
キャプスタンとリール台を別々に専用のゴムベルトで駆動するダブル独立駆動方式を採用しており、キャプスタンの回転に無駄な負担がかからず、安定したテープ走行を実現しています。
システムコントロール部にはロジック回路を採用しており、各モードの切換は軽く押すだけで作動します。ボタンは内部から点灯する自照式となっており、モードの識別も容易になっています。
また、別売りのリモートコントロールユニットRC-17やタイマーコントロールアダプターTA-270の接続も可能となっており、別売りタイマーを組み合わせることで留守録音や目覚まし再生が可能です。
休止中はピンチローラーが自動的にキャプスタンから離れるフルリリースオートストップ機構が作動するため、メカニズムに無駄な負担がかかりません。
フルダイレクトファンクションチェンジ機構を採用しており、PlayからのFF/RWDなどの際に一旦Stopを挟まなくてもシステムコントロールによって直接作動させることができます。
ピーク/VU切換式のメーターを搭載しています。
ピークチェック時における-20VUから0VU間のメーター指針の応答時間は10ミリセカンド、復帰時間は1.5セカンドで動作します。瞬間的に入力される大きな入力信号に対しても素早く応答することでS/N比の良いダイナミックレンジの広い録音が行えます。
ピークチェック時にメーター上の0VUは+8dBに設定され、メーターの指針の振れで最大録音レベルが直感的に把握しやすくなっています。
自動テープたるみ除去機構を搭載しています。
カセットテープにたるみがあるまま機械を操作すると、テープを巻き込むなど、テープを痛める原因となります。
テープを機械にセットするとリールモーターが自動的にテープのたるみを除去し、安全なテープ走行に備えます。
内蔵の発振器による400Hzのテストトーンとモニタースイッチの利用によってテープの標準録音レベルを正確に設定できます。
ノイズリダクションシステムとしてドルビーB NRを搭載しています。
ADRシステムを搭載しています。
この方式は実際の使用状況にそくした録音状態で音の大きさと周波数帯域に対応して高域信号がテープの飽和レベルを超えてオーバー録音にならないようにイコライザー特性を自動的に可変して録音する方式となっています。これにより高域録音限界が拡大され、テープのダイナミックレンジを活用した録音を可能にしています。
ADRシステムで録音されたテープはどのカセットデッキでも再生できます。
ラインとマイクのミキシングが可能です。
フェリクロームテープにも対応した3ポジションテープセレクターを搭載しています。
通常録音での高域特性を改善するMPXフィルタースイッチを搭載しています。
テープ毎にレベル調整ができるレックキャリブレーションボリュームを搭載しています。
カセットホルダーの上部にハウジングランプを搭載しており、反射板を利用してカセットハーフのテープ監視用窓を背面から明るく照らしています。これによりテープ状態が確認できます。
リニアーモーション機構を搭載しており、頻繁に上下移動するヘッドをブロックごとリニア軸とベアリングの働きで直線的に運動させ、前後左右のガタつきを排除しています。
これによりメカニズムの信頼性を高め、より忠実な録音、再生を可能にしています。
ダブルアクションカセットホルダーを採用しており、Ejectボタンを押すとカセットホルダーが手前に12mmスライドしてから20度前面に傾斜します。
これにより開口部に十分なゆとりができ、カセットテープの出し入れが簡単に行えます。
別売りオプションとしてウッドケースがありました。
機種の定格
型式 | ステレオカセットデッキ |
トラック方式 | 4トラック2チャンネルステレオ方式 |
テープ速度 | 4.75cm/s |
ワウ・フラッター | 0.06%WRMS |
周波数特性 | 30Hz~19kHz ±3dB(フェリクロームテープ使用時) 30Hz~16kHz ±3dB(クロームテープ使用時) 30Hz~15kHz ±3dB(ローノイズテープ使用時) |
歪率 | 1.0%(1kHz、0VU) |
S/N比 | 55dB ドルビーNR使用時:6dB改善(1kHz)、10dB改善(5kHz以上) |
バイアス周波数 | 100kHz |
ヘッド | 録再:GXコンビネーションヘッドx1 消去ヘッドx1 |
モーター | CPG内蔵ACサーボアウターローターモーターx1 DCモーターx2 |
早送り、巻戻し時間 | 70秒以内(C-60テープ) |
入力レベル | Mic:0.3mV/-69dB/600Ω~10kΩ Line:70mV/-21dB/100kΩ |
出力レベル | Line:0.775V(0VU時)/20kΩ以上 Headphone:50mV/8Ω |
電源 | AC100V、50Hz/60Hz |
消費電力 | 50W |
外形寸法 | 幅440x高さ142x奥行306mm |
重量 | 11.1kg |
付属 | コネクションコードx2 小型ドライバーx1 |
別売 | ウッドケース CB-760(¥7,000) |