
ACOUSTAT Model3M
価格不明(1980年代頃?)
解説
Model2+2で得たポリシーとノウハウを生かして開発されたコンデンサー型スピーカーシステム。
アコースタットのスピーカーは23cmx115cmの基本ユニットを2~6個組み合わせた構成を採用しており、型番の数字はユニットの数を示します。
Model3Mは8畳から20畳までの部屋での使用を推奨しています。
従来のコンデンサースピーカーは2ウェイまたは3ウェイ構成を採用しており、高域や中域を再生する小さなユニットと低域を再生する大きなユニットを組合せていました。このためクロスオーバーネットワークを使用する必要があり、ネットワークに起因する音質劣化が起きていました。
アコースタット社のジェームス・C・ストリックランドは、コンデンサー型スピーカーが全帯域再生できない原因としてパワーアンプとユニットの間に必要なインターフェイス内部の昇圧トランスにあることを発見しました。この回路で使用されている昇圧トランスは2次側が1000V以上となるため巻線比も10対1程度の大きな比率となります。しかも電圧が高いため絶縁もしっかりと行わなければならず、絶縁体が厚いと線と線の間に容量ができて高域特性が悪くなります。この問題を解決するため、アコースタットでは低域特性を重視したトランスと高域特性を重視したトランスの2つを組み合わせることで広帯域特性を実現しています。
基本ユニットはダイアフラムを2枚の固定極で挟んだ構造となっています。2つの固定極はMK121Aインターフェイスのプラスとマイナスの出力に繋がれており、MK121Aによって高い電圧に昇圧されたアンプからのオーディオ信号が加えられるようになっています。
ダイアフラムは電圧の高い小電流のバイアス電圧がかかっており帯電しており、そして両側の2つの固定極は加えられたオーディオ信号の電圧に見合う強さの電界を形成しています。オーディオ信号が加えられると、その電界から帯電したダイアフラムに働きかける力が生じ、ダイアフラムが動きます。
ダイアフラムは0.0165mmの薄膜に良導性の物質(未公表、例えば石墨のようなもの)の微粉末を接着剤に溶かしたものを吹き付けてコーティングしてあります。
固定極はPVC(ポリ塩化ビニール)被覆の銅線を格子のように張って電極を形成しています。この固定極は、できるだけダイアフラムに近づけることができ、スパークが起こりにくくダイアフラムを焼損しにくく、ダイアフラムから生じた音圧をできるだけ妨げないという条件を満たすように設計されています。
スピーカー背面下部にはインターフェイスMK121Aを搭載しています。
この部分には高域用と低域用の2つの昇圧トランスとダイアフラムへのバイアス電圧供給用トランスで構成されています。
昇圧トランスはパワーアンプの出力を約1,500V程度の高電圧に昇圧する役割持っており、それぞれの受持ち帯域を昇圧したあとで、再び加え合わされて広帯域にわたる特性を実現しています。この出力も固定極に入力されています。
バイアス電圧供給用トランスではAC100Vを1,500V程度に昇圧しており、これを整流してダイアフラムへ入力しています。
また、高域用のレベルコントロールを搭載しています。
このMK121Aは単体で4個まで基本ユニットをコントロールでき、Model6では2個必要となります。
サランネットは通常のブラック以外にオフホワイトもありました。
オフホワイトは注文時は納期約3ヶ月だったようです。
キャスターが2個付属しており、設置時の自由度を向上させています。
機種の定格
方式 | 1ウェイ・3スピーカー・フロア型 |
使用ユニット | 全帯域用:23cmx115cm静電型x3 |
周波数特性 | 30Hz~20kHz ±2dB |
出力音圧レベル | 88dB/W/m |
インピーダンス | 4Ω |
レベルコントロール | 10kHz以上のレベルを可変 |
推奨パワーアンプ出力 | 70W以上 |
電源 | AC100V、50Hz/60Hz |
消費電力 | 5W |
外形寸法 | 本体:幅710x高さ1,820x奥行89mm ベース部:幅765x奥行480mm |
重量 | 36.3kg |
付属 | キャスター2個 |