Accuphase T-106
¥145,000(1984年1月発売)
解説
電子同調回路やDGL FM検波器などの新技術を投入したFM部と、シンクロナス検波のAM部を搭載したFM/AMチューナー。
同調には水晶発振子を用いており、希望信号に±0.002%の精度で合わせる事ができるとともに、時間や温度変化によるズレも殆ど無く、歪最少、感度最高の点にロックします。
電子同調のため、外部振動による変調歪や雑音が発生しません。また、周波数のデジタル表示は雑音の発生しないスタティック方式を採用しています。
14局ランダム・メモリーを搭載しており、7個のフェザータッチ・ボタンを複式に使用し、14局のFMとAM局を好みのボタンにランダム・メモリーできます。
また、バリコン式チューニングと同じフィーリングの、光学を応用した回転ツマミ式チューニングも備えており、ピップ音とともに100kHzおき(AMは9kHzおき)に連続選局することもできます。
フロントエンド部は、入力と増幅段間がそれぞれ複同調となっており、大入力の妨害はによる混信(RF相互変調)を大幅に改善しています。
新開発のDGL検波器と特に選択した群遅延平坦IFフィルターを組合わせる事で優れた特性を得ています。
DGL検波方式は高速ロジックICの出力の遅れ時間に着目した回路で、高速ロジックICを19個直列にして、歪最少かつS/Nが最良になるように位相角を114゜遅らせ、この遅延信号と入力信号をエクスクルーシブオア回路に加えることで、2つの信号間の電位を選択して回路を開閉し、変調によって生じる信号波の疎密度をデジタル的に検出(論理的乗算)して音声信号を取り出しています。遅延回路の直線領域が±5MHzと広く、しかも無調整回路なため、安定で優れた微分利得直線特性が得られます。
また、IFフィルターは広(Normal)と狭(Narrow)の2組を使用しており、混信の激しい時はNarrowに切り替えることにより、選択度重点の受信が可能です。
FMステレオ復調回路には、最新技術を集積しており、優れた特性を得ています。
AM放送受信も重視し、歪が少なく混信除去能力に優れたシンクロナス検波を採用しています。
シンクロナス方式は混合器に注入する局部発振周波数を入力搬送波と同一にすることにより、一挙にオーディオ信号を取り出すもので、選択度はオーディオ回路に設けた低域フィルターの特性で決まり、検波歪の少ない優れた方式となっています。
さらに、シンクロナス検波のもう1つの特徴として、妨害波が受信局より高い周波数側か、低い周波数側かにより、側波帯(Sideband)を選択することができるので、上空波が強くなる夜間や海外局の混信に悩む地域で威力を発揮します。
T-106では標準広帯域スーパー方式にプラスしてシンクロナス検波を採用しており、周波数特性はNHKのサウンド・イコライジング(プリエンファシス)特性に合わせたエンファシス特性を持たせてあるので、プリエンファシス放送を良好な周波数特性で受信することができます。
また、9kHzフィルターにより隣接局のビートを取り除いています。
信号強度を示すシグナルメーターと、変調度を200%まで表示するピーク変調度計により、入力電波の状態を知る事ができます。
また、変調度計はスイッチ切り替えにより、マルチパス計となり、歪最少になるアンテナの方向を知る事ができます。
付属機能として、電波の弱いステレオ局のノイズを低減するノイズ・フィルターや混信の多いときに使用するセレクティビティー・スイッチ、局間ノイズを除去するミューティングスイッチ、混信時にAM側波帯を選択するサイドバンドセレクター、他のプログラムソースの音量にレベルを合わせるレベルコントロールなどを搭載しています。
写真に使用されている天然ローズウッドキャビネットは別売りでした。
また、ブラックモデルのT-106Bがあります。
機種の定格
型式 | AM/FMチューナー | ||||||||||||
<FMモノラル特性> | |||||||||||||
受信周波数 | 76.0MHz~90.0MHz | ||||||||||||
実用感度 | 11dBf(IHF) | ||||||||||||
S/N 50dB感度 | 17dBf(IHF) | ||||||||||||
定在波比 | 1.5 | ||||||||||||
S/N(80dBf入力、A補正) | 90dB | ||||||||||||
全高調波歪率 (80dBf入力、±75kHz偏移、Normal時) |
20Hz:0.04% 1kHz:0.04% 10kHz:0.04% |
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IM歪率(80dBf入力、±75kHz偏移) | 0.01% | ||||||||||||
周波数特性 | 10Hz~16000Hz +0 -1.0dB | ||||||||||||
2信号選択度(IHF) |
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キャプチャーレシオ | 1.5dB | ||||||||||||
RF相互変調 | 80dB | ||||||||||||
スプリアス妨害比 | 120dB | ||||||||||||
イメージ比 | 120dB | ||||||||||||
IF/2スプリアス・レスポンス | 100dB | ||||||||||||
AM抑圧比(65dBf入力) | 80dB | ||||||||||||
サブキャリア抑圧比 | 70dB | ||||||||||||
SCA妨害比 | 80dB | ||||||||||||
出力電圧(±75kHz偏移) | 1.0V | ||||||||||||
<FMステレオ特性> | |||||||||||||
感度(IHF) | S/N 40dB:29dBf S/N 50dB:37dBf |
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S/N(80dBf入力、A補正) | 85dB | ||||||||||||
全高調波歪率 (80dBf入力、±75kHz偏移、Normal時) |
20Hz:0.04% 1kHz:0.04% 10kHz:0.08% |
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IM歪率(80dBf入力、±75kHz偏移) | 0.03% | ||||||||||||
周波数特性 | 10Hz~16000Hz +0 -0.5dB | ||||||||||||
ステレオ分離度 | 100Hz:50dB 1kHz:50dB 10kHz:45dB |
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ステレオ切替入力電圧 | 20dBf | ||||||||||||
<AMチューナー部> | |||||||||||||
受信周波数 | 522kHz~1611kHz | ||||||||||||
実用感度(S/N 20dB) | 20μV/m | ||||||||||||
イメージ妨害比 | 50dB | ||||||||||||
全高調波歪率(1mV/m、1kHz、30%変調) | 0.3% | ||||||||||||
S/N比(1mV/m、1kHz、30%変調) | 50dB | ||||||||||||
ディエンファシス | 100μS | ||||||||||||
出力電圧(30%変調) | 0.3V | ||||||||||||
<総合> | |||||||||||||
アンテナ | FM:75Ω不平衡(300Ω平衡変換器付) AM:空芯ループアンテナ |
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同調方式 | クォーツ・シンセサイザー方式 14局ランダムメモリー・チューニング |
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検波方式 | FM:DGL方式 AM:シンクロナス方式 |
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出力インピーダンス | 固定出力:200Ω 可変出力:1.25kΩ(最大) |
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メーター | 信号強度、マルチパス/モジュレーション切替式 | ||||||||||||
使用半導体 | トランジスタ:38個 FET:6個 IC:50個 ダイオード:63個 LED:10個 オプト・カプラー:2個 |
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電源 | AC100V、50Hz/60Hz | ||||||||||||
消費電力 | 23W | ||||||||||||
外形寸法 | 幅445x高さ128x奥行370mm(脚含む) | ||||||||||||
重量 | 9kg | ||||||||||||
別売:ウッドキャビネット A-9(¥16,000) | |||||||||||||
外形寸法 | 幅:466x高さ153x奥行385mm |