Accuphase T-104
¥250,000(1978年10月発売)
解説
シンセサイザー方式を採用したFMステレオチューナー。
シンセサイザー方式の選局回路は、クリスタル発振子で基準周波数を作り、必要な受信周波数にプリセットするプログラム・ディバイダーとPLL回路の組み合わせにより、電子的にフロントエンドを希望信号に同調させるものです。また、バリコン方式のように受信周波数が連続的に変化するものではなく、100kHz間隔で同調しています。
シンセサイザー方式の受信周波数の精度は、基準周波数を作っているクリスタル発振子の精度で決まるため、T-104型では0.002%以内の精度で受信周波数に同調しています。
放送局の選局は、あからじめ希望局を記憶させておきワン・タッチで呼び出すメモリーチューニングと、従来の回転ツマミ式手動チューニングと同じフィーリングで同調できるパルス・チューニング(PAT.PEND)を搭載しています。
メモリーは4局まで可能で、付属のリモート・ステーション・セレクターにより5m先からでもメモリーを呼び出せます。
また、手動のパルス・チューニングは回路スクリーンを挟んで赤外線発生器と受光器があり、スクリーンの回転によりパルス信号を発生するもので、周波数が変化するごとに「ピッ」というピップ・トーンが聞こえ、目と耳の両方から同調周波数を知る事ができます。このピップトーンは消す事も可能です。
受信周波数の計算やメモリーの書き込み呼び出しの指令は、内臓の4ビット・マイクロ・コンピューターで行われています。また、メモリーにはニッケル・カドミウム・バッテリーを内蔵しており、電源スイッチを切った状態でも約1年間はメモリーが保持されます。
そして、電源スイッチを入れることによりバッテリーは自動的に充電され、半永久的に使用が可能となっています。
フロントエンド部は、PLL回路と組み合わされたバラクター素子を使った純電子コントロール方式となっています。
入力と高周波増幅には、2段複同調方式、局部発振同調、同調バッファーという構成で、スプリアス妨害に強い設計がされています。
IF回路には、高選択度特性と低歪率特性を両立するため、選択度、群遅延特性の優れたSAW(Surface
Acoustic Wave)フィルター(表面弾性波フィルター)とLCフィルターを組合わせた回路を採用しています。
SAWフィルターは圧電体の上に櫛の歯状の電極を対向させたものを2組作り、発振側をピエゾ励振し表面振動として発振電極に伝え電気変換するもので、素材の弾性や電極の形で周波数や帯域幅をきめることができ、長期にわたって安定な性能を持続します。
選択度はNormal(低歪率)とNarrow(高選択度)の2段切替えとなっています。
検波回路では、優れた微分利得特性を得るため、特殊設計の広帯域比検波器を採用し、ステレオ特性を向上しています。
ステレオ復調回路には、パイロット・キャリアを取除く回路を内蔵したPLL復調器を採用しています。
リニアフェーズIFフィルターと広帯域検波器、PLL復調回路によって優れたセパレーションを獲得しています。
入力信号強度をみるSメーターと、変調の深さをモニターする変調度計を備えています。完全同調点は「Tuned」の文字が表示され、ステレオ放送受信中は「Stereo」の文字で表示されます。
また、Sメーターはプッシュ・スイッチによってマルチパスを検出できます。
遠くからでもメモリー・チューニング選局ができるように、5mのコードが付いたリモート・ステーション・セレクターが付属しています。
ステレオ受信時のノイズを低減するノイズフィルターや、ステレオを強制的にモノラルにするモードスイッチ、局間ノイズを取り去るミューティングスイッチ、部屋の明るさに合わせて照度を下げ同時にピップ・トーンを消すディマースイッチ等の機能を搭載しています。
出力端子は2系統で、1系統はフロントパネルのレベルコントロールによって音量コントロールが可能です。
天然木ローズウッド・キャビネットに収納されています。
機種の定格
型式 | シンセサイザーFMチューナー | |||||||||
<モノラル特性> | ||||||||||
感度 | 実用感度:11.2dBf(2.0μV) S/N50dB感度:17.3dBf(4.0μV) |
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定在波比 | 1.5 | |||||||||
S/N(65dBf(1mV)入力) | 77dB | |||||||||
高調波歪率(65dBf入力、 SelectivityスイッチNormal時) |
100Hz:0.03%以下 1kHz:0.03%以下 10kHz:0.04%以下 |
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IM歪率(14Hz:15kHz=1:1) | 0.01%以下(アンテナ入力65dBf、100%変調) | |||||||||
周波数特性 | 20Hz~15000Hz +0 -0.5dB | |||||||||
2信号選択度 (45dBf(100μV)入力) |
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キャプチャーレシオ | 1.5dB | |||||||||
RF相互変調 | 75dB | |||||||||
スプリアス妨害比 | 120dB | |||||||||
イメージ比 | 120dB | |||||||||
IF/2スプリアス・レスポンス | 100dB | |||||||||
AM抑圧比(65dBf(1mV)入力) | 80dB | |||||||||
サブキャリア抑圧比 | 80dB | |||||||||
SCA妨害比 | 80dB | |||||||||
出力電圧(100%変調) | 1.5V | |||||||||
<ステレオ特性> | ||||||||||
感度 | S/N 40dB感度:28.8dBf(15μV) S/N 50dB感度:37.3dBf(40μV) |
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S/N(65dBf(1mV)入力) | 75dB | |||||||||
高調波歪率(65dBf(1mV)入力) | 100Hz:0.03%以下 1kHz:0.03%以下 10kHz:0.1%以下 |
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IM歪率(9kHz:10kHz=1:1) | 0.03%以下(アンテナ入力65dBf、ステレオ100%変調) | |||||||||
周波数特性 | 20Hz~15000Hz +0 -0.5dB | |||||||||
ステレオ分離度 | 100Hz:50dB 1kHz:50dB 10kHz:45dB |
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ステレオ切替入力電圧 | 19.2dBf(5.0μV) | |||||||||
<総合> | ||||||||||
受信周波数 | 76.1MHz~89.9MHz | |||||||||
同調方式 | クォーツロック・フリケンシー・シンセサイザー・チューニング | |||||||||
周波数確度 | ±0.002%以内 | |||||||||
出力インピーダンス | 固定出力端子:200Ω 可変出力端子:2.5kΩ |
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アンテナ入力インピーダンス | バランス:300Ω アンバランス:75Ω |
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メーター | 2個 信号強度計/マルチパス/モジュレーション切替式 |
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使用半導体 | トランジスタ:43個 FET:3個 IC:42個 ダイオード:58個 オプト・カプラー:3個 |
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電源 | AC100V 、50/60Hz | |||||||||
消費電力 | 25W | |||||||||
外形寸法 | 幅466x高さ188x奥行391mm | |||||||||
重量 | 14.1kg |