
Accuphase DP-70V
¥480,000(1990年11月発売)
解説
DP-80L/DC-81Lで培った技術を導入して開発されたCDプレイヤー。
DP-70Vではデジタルコントロールセンター機能を搭載しており、デジタル入出力端子によって複数のDATやBSチューナーのデジタル信号を復調できます。
デジタルコントロールセンターとしての機能を実現するため、3方式のサンプリング周波数を内蔵しており、ソースの周波数を自動選択します。
D/A変換部には20ビット・ディスクリート方式D/Aコンバーターを採用しています。
各ビットの精度は1/220=9.54x10-7で、16ビットに対し16倍の精度で変換する能力を備えており、優れた特性を実現すると共に量子化雑音を大幅に低減しています。
変換方式はリニアリティで優位性がある電流加算型を採用しており、20ビットの理論限界値の性能を実現するために厳選された素子によるディスクリート方式で構成しています。DP-70Vでは電流スイッチ素子と超精密抵抗によって構成されており、完全な動作を実現するため1台1台を厳密に調整が施されています。これにより、微小レベルから大レベルまでの全出力レベル範囲で理想的な直線性を実現し、ゼロクロス歪や小出力時の歪を取り除いています。
デジタルフィルターには左右独立の20ビット8倍オーバーサンプリングデジタルフィルターを採用しています。
DP-70Vのフィルターは高度なデジタル演算手法を駆使することで24.1~328.7kHz間を-110dBという優れた値に抑圧することに成功しています。また、音質劣化の原因となる通過帯域リップルは±0.00005dB以内に抑えられています。
オーディオローパスフィルターには素子を厳選したGIC3次バターワース・アクティブフィルターを採用しています。
この出力はゲイン0dBのバッファアンプを通してダイレクトに出力されます。
デジタル信号部とD/Aコンバーター以後のアナログ回路をオプト・カプラーで電気的に分離し、デジタル信号による音質劣化を防いでいます。オプト・カプラーは40Mbit/secの伝送能力を持つ高速型で、DP-70Vではこれをチャンネル当り4個使用して電気的に絶縁し、光による忠実な信号伝送を行っています。
また、電源部を通しての悪影響も防ぐため、デジタルとアナログ回路の電源トランスをそれぞれ独立させた2トランス構成としています。さらにアナログトランスの巻線は左右独立となっており、左右チャンネル間の相互干渉を防いでいます。
高周波雑音成分が空間を通して静電的に干渉し、電磁気としても干渉するのを防ぐため、それぞれの回路を厚手の金属プレートで完全にシールドしています。
サンプリング周波数を作り出すVCOにはリチウムタンタレート単結晶振動子を採用しています。
リチウムタンタレートはサイド・スペクトラム(不純成分)を水晶振動子のレベルに抑えながらサンプリング周波数のロック範囲を広く設定できる特徴を持ってます。
デジタル入力端子は光2系統と同軸2系統の4系統を搭載しています。
また、出力端子は光と同軸を各1系統搭載しています。
ノイズシェーパーを搭載しており、デジタルフィルターが発生するまるめ誤差を次のデータに帰還することでノイズを低減することで可聴帯域内の雑音を減少しています。
録音時に高域を上昇させ、再生時にその分下降させるエンファシス適用CDに対応するため、デジタル・ディエンファシス回路を搭載しています。
通常はCR素子によりオーディオ回路の周波数特性を変えて対応していますが、DP-70Vではデジタルディエンファシスによってデジタル信号の状態で特性を変えることで優れた特性を実現しています。
デジタル方式のレベルコントロールを搭載しており、-40dBまで1dBステップで調整できます。DP-70Vでは4ビットの余裕によって音量を絞った状態でも音質劣化が少なく理想的なレベルコントロールが可能です。
また、リモートコマンダーによって聴取位置から調整が可能です。
アナログ出力はXLRタイプの平衡出力とRCAフォノジャックを搭載しています。
メカニズム部をアルミダイカストフレームにマウントすることで共振を防ぎ、さらにシャーシからフローティングすることで振動の伝達を遮断しています。これによりディスク・テーブルともフローティングされ、メカニズム本体に対する外部からの振動を最小限に抑えています。
また、構造体の振動モードを解析し、メカニズム本体を厚手の金属シャーシで支持することで二次共振に対しても徹底的に強化しています。
従来のCDプレイヤーでは、レーザーピックアップに取り付けられた信号を読取るフォト・ディテクターの出力はそのままユニットの外に導かれRFアンプで増幅していました。DP-70Vでは超小型軽量のRFアンプをディテクターに接して取り付けることによって大きな信号出力を得ており、雑音による妨害を抑えています。
全ての動作タイミングを1つのマスタークロックでコントロールしています。これにより、デジタル信号処理用とマイクロプロセッサー用の2種類を使用した場合に問題となるビートを防いでいます。
レーザーピックアップのトラッキングにリニアモーターメカニズムを採用しており、専用に開発された8ビット・マイクロプロセッサーでコントロールすることでスピーディでスムーズな選曲を可能にしています。
フレーム再生機能を搭載しており、1フレーム(1/75秒)単位での頭出し・再生が可能です。
ワイヤレスリモコンが付属しています。
機種の定格
型式 | CDプレイヤー |
<プレイヤー部> | |
フォーマット | CD標準フォーマット エラー訂正方式:CIRC チャンネル数:2チャンネル 回転数:500~200rpm(CLV) 演奏速度:1.2~1.4m/s一定 |
読取り方式 | 非接触光学式読取り(半導体レーザー使用) |
レーザー | GaAlAs(ダブルへテロ・ダイオード) |
デジタル出力フォーマットレベル(EIAに準ずる) | フォーマット:Digital Audio Interface Optical:光出力:-21~-15dBm(EIAJ) 発光波長:660nm Coaxial:0.5Vp-p/75Ω |
<デジタル・プロセッサー部> | |
フォーマット | EIA標準フォーマット |
量子化数 | 16ビット直線 |
サンプリング周波数 | (タイミング精度:レベルII) 32.0kHz ±0.1% 44.1kHz ±0.1% 48.0kHz ±0.1% |
周波数特性 | 4.0Hz~20kHz ±0.3dB |
D/Aコンバーター | ディスクリート20ビット |
デジタルフィルター | 20ビット8倍オーバーサンプリング ノイズ・シェーパー機能 デジタル・ディエンファシス機能 偏差 ±0.001dB |
全高調波歪率+ノイズ | 0.0016%(1kHz) 0.002%(20Hz~20kHz) |
S/N | 119dB |
ダイナミックレンジ | 98dB |
チャンネルセパレーション | 109dB |
定格出力/インピーダンス | Balanced:2.5V/50Ω(25Ω/25Ω)、平衡XLRタイプ Unbalanced:2.5V/50Ω、RCAフォノジャック |
出力レベル・コントロール | 0~-40dB間、1dBステップ(デジタル方式) |
デジタル入力フォーマットレベル(EIAに準ずる) | フォーマット:Digital Audio Interface Optical:受光電力:-15dBm~-27dBm Coaxial:0.5Vp-p/75Ω |
<その他> | |
使用半導体 | トランジスタ:32個 IC:74個 ダイオード:66個 |
電源 | 100V/117V/220V/240V、50Hz/60Hz |
消費電力 | 23W |
外形寸法 | 幅475x高さ135x奥行389mm |
重量 | 24.3kg |
付属:リモート・コマンダー RC-7 | |
リモコン方式 | 赤外線パルス方式 |
電源 | DC 3V |
乾電池 | SUM-3(IEC呼称、R6)、2個 |
最大外形寸法 | 幅64x高さ176x奥行18mm |
重量 | 180g(乾電池含む) |