Accuphase P-600
¥650,000(1983年4月発売)
解説
新時代のパワーアンプの理想を求めて開発されたステレオパワーアンプ。
大出力を連続動作で補償するため、出力段は、Pc(コレクター損失)200Wの広帯域トランジスタをチャンネルあたり14個、7-パラレル・プッシュプルで構成しており、2.8kWの電力容量をもたせています。
通常の使用状態でも2Ωまでの低負荷を駆動することができますが、業務用等でさらに低いインピーダンスで駆動する場合のため、Low
Load Impedance Operationスイッチを設けています。
このスイッチは、出力トランジスタの安全を保ちながら、大電流が供給できるようにするもので、これにより1Ω負荷に対しても450W/chの出力を得ることが可能です。
出力段をドライブするドライブ段は、電力増幅用MOS FETで構成しており、低インピーダンス大電流駆動を行い、併せて高域の特性を大幅に改善しています。
また、熱特性がバイポーラ・トランジスタを安定させる方向に働くため、出力段のバイアス電流が安定します。このため出力段のエミッター抵抗を低くすることが可能で、さらに7-パラレルにより等価エミッター抵抗は1/7と低くなり、出力トランジスタのバイアスがカットオフするために発生するスイッチング歪が殆どなくなっています。
プリドライブ段はダーリントン・カスコード・プッシュプルを構成しており、ミラー効果の無い優れた高域特性とリニアリティの良好な大振幅動作を両立させ、MOS
FETをドライブしています。
また、プリドライブ段で構成されているダーリントン接続は、この段の入力インピーダンスを高くしているので、これが負荷になる差動入力回路の動作に影響を与えず、良質な増幅を可能にしています。
入力増幅回路はFET入力のカスコード・ブートストラップ・プッシュプル回路を採用しています。
カスコード・ブートストラップはハイゲインであると共に高域特性を改善し、入力インピーダンスの上昇(入力レベル・コントロールの変化)による歪の悪化を防止しています。
デュアルFETによるプッシュプル入力回路を採用しており、入力に直流が発生せず入力コンデンサーを取り去ることが可能です。
また、DC漏れのプリアンプとの併用で出力にDCが現れ、スピーカーに悪影響を及ぼすのを防ぐため、DCサーボアンプで直流帰還をかけており、直流を遮断するとともに回路内で発生するドリフトも抑えています。
ブリッジ接続によりモノラルアンプとしても使用することができます。
ブリッジ接続の原理は、それぞれのアンプに同一波形で逆相の信号を入力し、スピーカーを両アンプの出力に接続することにより、スピーカーに印加される電圧が2倍となり、原理的には4倍の出力が取り出せます。
また、逆相駆動のため偶数次高調波歪がキャンセルされて特性が改善されるというメリットも持っています。また電源から流れるエネルギーがプラス、マイナス交互に流れ、一方向のみのエネルギーが両アンプに流れることが無いので、見かけ上の電源変動率が改善されたことになり、リニアリティの良好なエネルギーをスピーカーに送り出すことができます。
通常の20kΩアンバランス入力(フォノジャック)の他に、本格的な600Ωバランス入力(3Pキャノンタイプ)を搭載しています。
P-600のバランス入力の位相反転はトランスでは無く、低歪広帯域の差動増幅回路を採用しています。
ピーク値を直読できるデジタルパワーメーターを搭載しています。
デジタルパワーメーターは12bitのA/Dコンバーターと4bitマイクロプロセッサーを組合わせて構成しており、アナログ信号をA/Dコンバーターによりデジタル信号に変換し、正確な表示を行っています。
表示は3桁であるためレンジ切り替えを備えており、レンジ切り替えにより0.001W~999Wを直読できます。また、ホールドタイムは3秒と30分が選べ、30分レンジを使用すればレコード片面のピーク値を読むことが出来、最大カッティングレベルを知る事ができます。
P-600のデジタルパワーメーターは出力電圧を電力に換算して表示していますが、出力電圧が同じでもスピーカーインピーダンスによって出力電力は大幅に変化します。正確な出力電力を表示させるため、スピーカーの公称インピーダンスに表示器の動作を合わせる、パワーメーター用のインピーダンス切替スイッチを設けています。
通信機用25接点ロータリースイッチと高精密抵抗による本格的なアッテネーターを搭載しています。
0dB~-20dB間は1dBステップ、以後-23dB、-26dB、-30dB、-∞を±0.1dBの精度で選ぶ事ができます。
サブソニックフィルターを搭載しています。
フィルターの切替えは、プリント基板上の回路内にリレーを設けており、フロントパネル面のスイッチでこのリレーをコントロールすることで、特性劣化を防いでいます。
別売りで24mm厚のパーシモン仕上げのウッドパネルがあります。
別売りで放熱用ファンがあり、放熱効果の悪い場所にセットしたり、長期にわたって大出力駆動を行う場合にファンが取付可能です。
機種の定格
型式 | ステレオパワーアンプ | ||||||||||||
連続平均出力 (20Hz~20kHz、 歪率0.02%) |
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全高調波歪率 |
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IM歪率(EIA) | 0.01% | ||||||||||||
周波数特性 | 20Hz~20kHz +0 -0.2dB(連続平均出力時、レベルコントロールMAX) 0.5Hz~250kHz +0 -3dB(1W出力時、レベルコントロールMAX) 0.5Hz~150kHz +0 -3dB(1W出力時、レベルコントロール-6dB) |
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ゲイン | 27.8dB(ステレオ仕様時) 33.8dB(モノラル仕様時) |
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負荷インピーダンス | ステレオ仕様時:1Ω~16Ω モノラル仕様時:2Ω~16Ω |
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ダンピングファクター (EIA 50Hz) |
ステレオ仕様時:300 モノラル仕様時:150 |
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入力感度 |
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入力インピーダンス | 20kΩ不平衡 600Ω平衡 |
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S/N(A補正) |
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サブソニックフィルター | 10Hz、-12dB/oct | ||||||||||||
出力メーター |
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使用半導体 | トランジスタ:90個 FET:8個 IC:36個 ダイオード:104個 LED:8個 |
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電源電圧 | AC100V/117V/220V/240V、50Hz/60Hz | ||||||||||||
消費電力 (Normal Load Imp. Operation) |
165W(無入力時) 1100W(電気用品取締法) 1100W(8Ω負荷定格出力時) |
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外形寸法 | 幅480x高さ232(脚含む)x奥行476mm | ||||||||||||
重量 | 38.5kg | ||||||||||||
別売 | パーシモン・ウッドパネル A-14(取付金具共一式、¥16,000) 放熱用ファン O-81(一式、¥8,000) |