Accuphase P-360
¥370,000(1991年3月発売)
解説
P-300シリーズの後継機として開発されたステレオパワーアンプ。
一連のアキュフェーズ・パワーアンプが採用しているシンメトリーデザインに変更し、機能等の基本は300シリーズを踏襲しています。
大電流容量トランジスタを7-パラレル・プッシュプルで構成し、1msでは210Aの電流を取り出すことを実現しています。
電源部のトランスには効率の高い大型1KVAのトロイダル・トランス、平滑コンデンサには40,000μF/80Vx2が使用され、20Hz~20000Hzまで平坦な出力電圧を得ています。
ドライブ段にはアキュフェーズオリジナルのMOS FET+カスコードプッシュプル回路を用いています。これにより小信号時の特性を改善しています。
さらに、出力段がバイポーラトランジスタで温度傾斜が正、ドライブ段がMOS FETで温度傾斜が負となり、互いに相殺しあうことで良好で安定度の高いパワーアンプを形成しています。
更にプリドライバーには、同様にA級カスコードプッシュプル回路を用いており、MOS
FETの安定度を増しています。
アンプの入力は信号がダイレクトに印加される直結方式を採用しています。
わずかな直流入力でも大きく出力され、スピーカーにダメージを与えてしまうため、DC領域は増幅しにくくするDCサーボをかけて直流をカットしています。
この方式は、同時にアンプ自体の出力オフセットを抑えるようにNFBをかけてあるので、温度変化に対しても安定した動作を実現しています。
入力段は平衡差動ピュアコンプリメンタリー・プッシュプルとなっており、+(ノンインバート)、−(インバート)入力にそれぞれ高入力インピーダンス・低インピーダンス駆動のFET入力バッファーアンプが接続されています。
バランス入力時には、直接これらの端子に入力され、純度の高い増幅を行います。
ブリッジ接続時には、同一信号を一方のアンプの+入力と他方のアンプの−入力に同時に入力されます。
このように、あらゆる方式の入力において変換器などの余分な回路が一切付加されず、同質の増幅を可能にしています。
通常の20kΩRCAピンジャック入力の他に、40kΩバランス入力を設けおり、国際規格のXLRタイプコネクターにより、あらゆるインピーダンスのバランス出力を接続することが出来ます。
バランス入力回路は差動入力回路のプラス、マイナス入力へそのまま信号を注入する構成となっているため、プラス、マイナス入力それぞれにレベル・コントロールを挿入しなければなりません。そこで、P-360では連動誤差の少ない1dBステップ2連アッテネーターを採用しています。なお、入力回路はレベルコントロールの位置で周波数特性が変化しないように配慮されています。
P-360ではブリッジ接続により、ステレオ駆動時の4Ω負荷における2倍の出力を得ることが出来ます。
通常のブリッジ接続時は、一方のアンプに位相反転回路を挿入しますが、P-360では二つのアンプの差動入力回路の極性を利用し、お互いに逆そう信号が入力されるように接続変更する方法で、特別の回路を挿入しないで純粋な切替回路を構成しています。
入力レベル調整器には、特に歪率の小さい鏡面仕上げの抵抗体を採用しています。
鏡面化により、歪特性が良好で耐摩耗性に優れ、ブラシ抵抗体の間にはグリスなどの音質を損なうようなものは塗られていません。
また、一般的なVRは抵抗体によりカシメ部分を通して外部にリード線を出し、ブラシが摺動子(ローター)になっていますがP-360では抵抗体がローターになっておりブラシの部分が固定されて直接外部に出るようになっています。
このため金属接合部分が5ヵ所から3ヵ所に減り、音質への悪影響を減らしています。
入力回路は−(インバート)とプラス(ノンインバート)になっており、チャンネル当り2連で構成されています。連動誤差の少ない1dBステップのアッテネーター形式となっており、入力レベルを正確にコントロールすることができます。
ヘッドフォンによる高音質再生を目指し、ヘッドフォン専用のアンプを設けています。
入力段はFET方式のサーボコントロールによるアンプを採用しているため、主回路には影響を与えていません。
ヘッドフォンのボリュームはスピーカーの音の大きさに無関係にコントロールすることが可能です。
出力メーターは対数圧縮型のピーク表示により-50dB~+3dB間のレベル再生が一目でわかります。dB及び8Ω負荷時における出力電圧が直読できます。
また、メーターの動作と照明を切るスイッチも装備しています。
入力はバランス1系統、アンバランス2系統となっていて、フロントパネル内のスイッチで切り替えることができます。
この内、アンバランス1系統はフロント・サブパネル内に設けてあります。
スピーカー出力端子は2系統を切り替えることが出来ます。
切り替えスイッチにより、並列接続により駆動することもできます。
電源スイッチ以外は全て下部のサブパネル内部に収納したシンプルなデザインで、シャンペンゴールドの仕上げとなっています。
両サイドは、天然パーシモン仕上げのボードです。
機種の定格
型式 | ステレオパワーアンプ |
連続平均出力 (20Hz~20kHz) |
ステレオ仕様時(両チャンネル同時動作) 400W/ch:2Ω負荷 300W/ch:4Ω負荷 200W/ch:8Ω負荷 100W/ch:16Ω負荷 モノフォニック仕様時(ブリッジ接続) 800W:4Ω負荷 600W:8Ω負荷 400W:16Ω負荷 |
高調波歪率 | ステレオ仕様時(両チャンネル同時動作) 0.02%、2Ω~16Ω負荷 モノフォニック仕様時(ブリッジ接続) 0.02%、4Ω~16Ω負荷 |
IM歪率 | 0.003% |
周波数特性 | 20Hz~20kHz +0 -0.2dB(連続平均出力時、レベル・コントロールMAX) 0.5Hz~16k0Hz +0 -3.0dB(1W出力時、レベル・コントロールMAX~-6dB) |
ゲイン(利得) | 28.0dB(ステレオ/モノフォニック仕様時共) |
負荷インピーダンス | ステレオ仕様時:2Ω~16Ω モノフォニック仕様時(ブリッジ接続):4Ω~16Ω |
ダンピング・ファクター | ステレオ仕様時:300 モノフォニック仕様時(ブリッジ接続):150 |
入力感度(8Ω負荷) | ステレオ仕様時 1.59V:連続平均出力時 0.11V:1W出力時 モノフォニック仕様時(ブリッジ接続) 2.76V:連続平均出力時 0.11V:1W出力時 |
入力インピーダンス | バランス:40kΩ アンバランス:20kΩ |
S/N(A補正) | 120dB(入力ショート、連続平均出力時) 100dB(入力1kΩ、1W出力時) |
ステレオ・ヘッドフォン | 適合インピーダンス:4Ω~1000Ω |
出力メーター | 対数圧縮型、-50dB~+3dB及び出力直読目盛 |
使用半導体 | トランジスタ:63個 FET:32個 IC:10個 ダイオード:77個 |
電源 | 100V、117V、220V、240V、50Hz/60Hz |
消費電力 | 無入力時:100W 電気用品取締法:590W 8Ω定格出力時:633W |
外形寸法 | 幅475x高さ180(脚含む)x奥行409mm |
重量 | 27.4kg |