Accuphase P-300V
¥350,000(1987年7月発売)
解説
全増幅段プッシュプル駆動を基本に、ドライブ段までの全てを高周波特性に優れたカスコード接続で構成したプリメインアンプ。
初代P-300から続き、P-300S、P-300X、P-300L、そしてP-300Vとモデルチェンジされてきており、5代目にあたり、さらに1Ω負荷にも耐える超低インピーダンス駆動と、より完全なバランス入力回路の実現を図っています。
出力段はコレクター損失Pcが130Wの広帯域トランジスタを10パラレルで合計20個で構成しています。
これにより、トータルPcはチャンネル当り2600W、出力段のパワー効率を70%とすると、理論的限界出力は3700Wに達しており、これにより低い負荷インピーダンスにもリニアで良質な電力を送り込める構造となっています。
20個のトランジスタを10パラレルで構成したため、低インピーダンス負荷時の大電流にも対処でき、1Ωという低インピーダンスでもドライブが可能となっています。
ブリッジ接続が可能となっています。
ブリッジ接続は、同一のアンプに同じ大きさで位相が逆(逆相)の信号を入れ、スピーカーを両アンプの出力端に接続することによりステレオ駆動時の4Ω負荷における倍の出力を得ようという方法です。
通常ブリッジ接続時は、一方のアンプに位相反転回路を挿入しますが、P-300Vでは二つのアンプの差動入力回路の極性を利用し、お互いに逆相信号が入力されるように接続変更する方法で、純粋な切替え回路を構成しています。
本格的な40kΩバランス入力を搭載しています。国際規格の3P-XLRタイプ・コネクターにより、あらゆるインピーダンスのバランス出力を接続することが可能となっています。
P-300Vのバランス入力回路は差動入力回路のプラス、マイナス入力へそのまま信号を注入する構成となっており、理想的な構成となっています。
また、この方式の場合、プラス、マイナス入力それぞれにレベル・コントロールを挿入しなければなりませんが、連動誤差の少ない1dBステップ・アッテネーターを採用しています。
出力段で生じる小出力時のスイッチング歪を抑えるため、PNP/NPNそれぞれの素子が入力信号によってカットオフにならないように動作点を厳密に設定しています。
また、終段をドライブする前段は、ノンスイッチングA級ドライブと等価な、MOS
FETによるカスコードプッシュプルで構成されています。そして、その前段もA級カスコード・プッシュプル構成としています。これにより、ノイズ領域の小出力から定格出力の大出力まで、歪の少ない安定した出力段を実現しています。
入力回路は、カスコード・ブートストラップ・プッシュプル回路を構成しています。
カスコード・ブートストラップ回路は高利得でかつ超高域の周波数特性や位相特性に優れ、入力インピーダンスの変動に対しても歪率の悪化がないという、入力段が備えるべき条件を満足した回路となっています。
この回路をプッシュプルで構成することで、広帯域ドライブ段と相まってNFループ内の素特性を改善しています。
電源部は、トランスに前段増幅回路専用の巻き線を設け、左右独立の整流をし、フィルター回路を通じて供給しています。
入力信号はInputにダイレクトに入力される直結方式を採用しています。
このため、DCドリフトの大きいプリアンプ等が接続されると、それが増幅されて出力に現れ、スピーカーを破損する恐れがあるため、アキュフェーズオリジナルとなっているDCサーボ方式により直流をカットすると共に、温度変化によるアンプ自体のDCドリフトも安定化させています。
モニターに便利な出力計を搭載しています。
対数圧縮型ピークパワー・メーターでdBと共に8Ω負荷時の出力電力を直読できます。
バランス1系統、アンバランス2系統の3系統の入力を搭載しており、フロント・パネルのスイッチで切り替えが可能です。
アンバランス入力のうち1系統は全面のフロントパネルのサブパネル内に設けられています。
スピーカーはA、B2系統の接続が可能です。
使用していない方のスピーカーが振動を受けて共振し、音質を損ねることがあるため、動作していないスピーカーを自動的にショートし共振を防止するように配慮しています。
表面パネル上部はゴールド調スクラッチ・ヘアライン仕上げとなっており、下部サブパネルはブラック・ヘアライン仕上げとなっています。
また、両サイドに天然パーシモンのサイドボードを取り付けています。
機種の定格
型式 | ステレオパワーアンプ |
定格出力 (20Hz~20kHz、歪率0.01%) |
ステレオ仕様時(両チャンネル同時動作) 2Ω負荷:350W/ch 4Ω負荷:280W/ch 8Ω負荷:180W/ch 16Ω負荷:90W/ch モノラル仕様時(ブリッジ接続) 4Ω負荷:700W 8Ω負荷:560W 16Ω負荷:360W |
全高調波歪率 | ステレオ仕様時:0.01%(両ch同時動作、2Ω~16Ω負荷) モノラル仕様時:0.01%(ブリッジ接続、4Ω~16Ω負荷) |
IM歪率 | 0.003% |
周波数特性 | 20Hz~20kHz +0 -0.2dB(連続平均出力時、レベルコントロールMAX) |
ゲイン | 28.0dB(ステレオ・モノラル仕様時共) |
負荷インピーダンス | ステレオ仕様時:2Ω~16Ω モノラル仕様時(ブリッジ接続):4Ω~16Ω |
ダンピングファクター | ステレオ仕様時:300 モノラル仕様時(ブリッジ接続):150 |
入力感度(8Ω負荷) | ステレオ仕様時 連続平均出力時:1.5V 1W出力時:0.12V モノラル仕様時(ブリッジ接続) 連続平均出力時:2.7V 1W出力時:0.12V |
入力インピーダンス | アンバランス:20kΩ バランス:40kΩ |
S/N(A補正、 ステレオ・モノ仕様時共) |
120dB(入力ショート、連続平均出力時) 100dB(入力1kΩ、1W出力時) |
ステレオヘッドホン | 適合インピーダンス:4Ω~100Ω |
出力メーター | 対数圧縮型 -40dB~+3dB及び出力直読目盛 |
使用トランジスタ、ダイオード | トランジスタ:90個 FEt:16個 IC:8個 ダイオード:73個 |
電源 | AC100V/117V/220V/240V、50Hz/60Hz |
消費電力 | 無入力時:130W 電気用品取締法:630W 8Ω負荷定格出力時:600W |
外形寸法 | 幅475x高さ170(脚含む)x奥行408mm |
重量 | 24.8kg |