オーディオの足跡

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HX-10000の画像
 解説 

ヤマハが創業100周年を記念して開発したフォノイコライザアンプ。

プレイヤーシステム2台、または2本アーム仕様のプレイヤーシステムと組み合わせた場合の音質面、使い勝手への配慮から、フォノ入力を2系統装備したうえ、MCヘッドアンプはフォノ1、フォノ2独立で4基搭載。その後段で、フォノセレクタの選択により、フォノ1、フォノ2共用のイコライザアンプ2基へ送られるブロック構成となっています。
これは、ローインピーダンスの低出力MCカートリッジに代表されるマイクロボルト・オーダーの微小信号レベルでの切換接点を極小にする目的から考えられたもので、MCカートリッジの出力は、フォノ1、フォノ2独立のカートリッジロードセレクタのみを介してMCヘッドアンプに直結させています。
また、4MCヘッドアンプ搭載により、フォノ1にハイ・インピーダンスMC、フォノ2にロー・インピーダンスMCといった、異なるカートリッジ仕様のプレイヤーシステム2台を、常時それぞれ最適の入力条件のもとに固定使用が可能です。

MCカートリッジをより高品質で楽しむため、ステップアップ・トランスやイコライザアンプ自身のゲイン可変等ではなく、MCカートリッジ用のヘッドアンプを別に搭載する方式を採用しています。
シンプルな回路設計に努め、回路構成は、初段に超ローノイズ・トランジスタ8個を使用した、4パラレル入力コンプリメンタリー・プッシュプルとし、電圧増幅段、出力段ともコンプリメンタリー・プッシュプルとした、計3段増幅による全段コンプリメンタリー・プッシュプル構成となっています。
特に初段のトランジスタにはベース拡がり抵抗の極小な超ローノイズタイプを採用し、4パラレルで使用することで等価雑音抵抗を低減しています。
加えて、全段A級プッシュプル動作であるため、トランジスタが等価的にパラレルで働いてるのと動揺の効果がありMCヘッドアンプ全体でローノイズな特性を実現しています。

イコライザアンプは、低域下降、高域上昇のRIAA特性をイコライジングする役割を持っているため、十分なゲインとピークマージンを有した熱的安定度の高い回路構成をとる必要があります。
そこで、初段には、高GmのデュアルFET2個を使用した、差動入力・カスコードブートストラップにより、広帯域・高ゲインを獲得。低歪率を実現しています。
また、初段のデュアルFETをパラレルで使用することにより、カートリッジ実装S/Nを向上しています。
一方、負荷の重いRIAA素子をドライブする出力段にはパワーMOS FETを採用し、コンプリメンタリー・プッシュプル構成とし、RIAA素子への余裕のある低インピーダンス・ドライバビリティを獲得しています。

MCヘッドアンプ、イコライザアンプの各アンプ間の相互干渉を排除し、最適化による性能追及を行えるよう、MCヘッドアンプ(フォノ1、フォノ2)、イコライザアンプ(L/R)は、それぞれ独立の回路基板で組む、ユニットアンプ構成を採用しています。
各ユニットアンプ基板は、振動による音への影響を無くす為、コーナーとセンターの5ヵ所に対して、8mm径の真鍮削り出しポスト5本により、内部シャーシに厳重に固定しています。
さらに耐振性を高め、外来ノイズのシールド対策として、非磁性アルミ押し出し材によるアルミハウジングを用意しており、4つのユニットアンプ基板を、4つのアルミハウジングに格納しています。

内部での電気的・磁気的ノイズの発生源となりやすい電源部をアンプ部から分離し、それぞれを独立のBOXに収納する、高剛性2ボックスシャーシを採用しています。
アンプ部と電源部は3ミリ厚のアルミ押し出し材で仕切られ、電源トランスを中心とした磁気ループをアンプ部に及ぼさないようにしています。
また、シャーシには、機械曲げ加工などの金属疲労を伴わない非磁性アルミ押し出し材を使用しています。フロントパネルに9mm厚、トップとボトムに5mm厚、リアパネルに3mm厚の部材を使い分け、互いを強固にビス止めすることで剛性を高めています。

電源部には、シールドケース入りの低リーケージフラックス・大型トランスに加え、平滑用ケミコンにはオーディオ用アルミ電解コンデンサを、メインに10000μFx6本、さらに、4700μFx6本、1000μFx8本、470μFx12本を搭載しています。
複数個パラレルで段階的に使用することにより、電源インピーダンス上昇を抑圧しています。

配線材を使用した給電は、引き回しによる電源インピーダンスの上昇や不用意なカレントループの形成による誘導ノイズの発生などを引き起こしやすいため、内部配線材の使用を最小限にとどめたマザーボード方式を採用しています。
マザーボードには、MCヘッドアンプ用、イコライザアンプ用の各定電圧回路を一括搭載しており、内部シャーシ下部に、真鍮削り出しポストで固定したのち、各ユニットアンプ基板±B電源へは、コネクタにより内部シャーシをストレートに貫通させてジョイントしています。
これにより、最短距離でリジッドに結合し、ロスの少ない良質の電源供給を可能にしています。

MC、MMほか、様々なカートリッジを最適な入力条件で使いこなせるよう、6ポジションのカートリッジロードセレクタを、フォノ1、フォノ2独立で設けています。

ゲインの異なる各ユニットアンプ間の電源を介しての干渉を防ぐため、イコライザアンプ用の第1次レギュレータと、MCヘッドアンプ用のフォノ1・フォノ2独立・第2次レギュレーターの3つの定電圧回路を搭載しています。
アンプ部同様、オールディスクリートパーツ構成となっています。

イコライザアンプのRIAA素子用コンデンサに、2%級・高精度ポリプロピレンフィルムコンデンサ、位相補正用コンデンサには、マイカコンデンサ及びポリプロピレンフィルムコンデンサ、DC成分の漏れを防ぐため、出力カップリングコンデンサには10μFのフィルムコンデンサを使用。
また、RIAA素子を含む全ての信号系抵抗には、1%級・高精度角型金属被膜抵抗を投入してます。

各ユニットアンプ基板、電源マザーボードともに、パーツ実装信頼度の高いガラスエポキシ両面基板を採用しています。

アースラインの低インピーダンス化をはかるため、基板上の要所に金メッキ処理のOFC(無酸素銅)バスバーを埋め込んでいます。

パワースイッチ連動の出力ミューティングリレー回路には、金クラッド接点・窒素ガス封入のオーディオ専用リレーを使用しており、酸化による信号接点の劣化を防ぎ、高信頼・高安定性を得ています。

フォノ入力端子及び出力端子には、真鍮削り出しの金メッキピンジャックを使用しており、グランド端子にも、同じく金メッキ処理の真鍮削り出し素材を使用しています。

AC電源コードには、OFC(無酸素銅)線による10ミリ径のケーブルを使用しています。
また、極性表示付となっています。

機種の定格
型式 フォノイコライザアンプ
入力感度/インピーダンス MCハイゲイン:60μV/10Ω、30Ω
MCローゲイン:200μV/30Ω、100Ω
MM:2.5mV/47kΩ・100pF、47kΩ・330pF
最大許容入力(1kHz、0.01%THD) MCハイゲイン:3.4mV
MCローゲイン:12mV
MM:120mV
出力電圧/インピーダンス 150mV/470Ω
最大出力電圧 5V(20Hz~20000Hz、0.01%THD)
RIAA偏差 ±0.2dB(20Hz~20000Hz)
全高調波歪率
(20Hz~20000Hz、3V出力時)
MC:0.002%
MM:0.001%
S/N比(IHF-A補正) MC:88dB(250μV入力ショート)
MM:93dB(2.5mV入力ショート)
入力換算雑音レベル MC:-160dBV(250μV入力ショート)
MM:-145dBV(2.5mV入力ショート)
チャンネルセパレーション(1kHz) MC:50dB
MM:86dB
電源電圧 AC100V 50Hz/60Hz
消費電力 20W
外形寸法 幅475x高さ130x奥行432mm
重量 20kg