YAMAHA A-7
¥89,000(1981年頃)
解説
アブソリュートクオリティでハイパワー軽量・小型を実現するヤマハXアンプシリーズの第3弾として開発されたプリメインアンプ。
主な回路構成は、ピュアカレントサーボアンプ方式採用のイコライザアンプ→ハイゲインDCメインアンプというシンプルな基本構成に、必要な場合に0dBゲインのトーンコントロールや、コントロール機能を挿入できるようになっています。
各ユニットアンプはX電源からの安定した電力の供給を受けて、各々の回路が最良の状態で動作することで優れた特性を実現しています。
電源部には、X電源(Phase Angle Control電源)を搭載しています。このX電源は、従来の技術による巨大電源と等価な効果を、小型・軽量な電源で得ており、メインアンプ出力段までの定電圧化を実現しています。
X電源のしくみは、電源の二次側から一次側への精密なフィードバック回路であり、出力信号の変化などによって二次側の供給電圧が下がろうとするのを、電圧比較増幅器で検出しています。この電圧比較増幅器からの情報は発光ダイオードとフォトトランジスタを組合わせたフォトカプラを通して一次側に高速フィードバックされます。これによりトランスの一次側に挿入されたTRIACの動作をコントロールしています。
TRIACは、電源周波数に同期してon⇔offを繰返すスイッチのような構造となっています。このTRIACによりトランス一次側に流れる電圧波形の導通(通電)位相角(Phase
Angle)をコントロールして、供給電圧を厳密に一定に保っています。
これにより負荷変動や一次側の電圧変動に影響されない安定した定電圧電源となっています。また、通電時間をコントロール(短時間化)したことでトランスの鉄芯での損失を少なくでき、コイルの巻線も少なくて済むため、従来のスイッチング電源などに比べて回路がシンプルになり信頼性が向上し、さらに20kHz~80kHzといった高周波を使わないため、雑音特性にも優れています。
イコライザアンプ部は、理想素子を理想環境で使うというアンプの理想に挑戦した「ゼロ素子感度アンプ」という考え方により新開発された、ピュアカレントサーボアンプ方式を採用しています。このピュアカレントサーボアンプは信号電流が電源やアースラインに全く流れない方式で、電源ラインは常に一定電流を流しています。このため電源部や配線のL、C、R成分、電流変化によるノンリニアなど給電系の影響を受け難い構造となっています。
このイコライザアンプの回路構成は、ローノイズデュアルFET差動カスコードブートストラップカレントミラー負荷の初段→カスコード増幅、定電流負荷のプリドライブ段→SEPP出力の出力段で構成されています。ピュアカレントサーボアンプ方式と相まって、優れた特性を得ています。
フロント面のPhonoスイッチを切換えることによりMCヘッドアンプをダイレクトに楽しむ事ができます。
回路的にはイコライザアンプのゲインを切換える構造となっています。
トーンコントロール回路は、高精度オペアンプを用いた新設計のヤマハ方式トーンコントロールで、従来のものに比べてコントロールカーブが非常に精密で素直な特性となっています。
また、このトーンコントロール回路は0dBゲインに設計されており、信号経路から切離してもアンプ全体としてのゲイン低下がありません。さらにトーンコントロールやフィルタ類を操作した時の音質劣化を極力抑えるため、高精度オペアンプによるフラットアンプを、メインアンプとの緩衝用に搭載しています。
このトーンコントロール回路ではターンオーバー周波数が2段階で切換えできます。
メインアンプ部は、ローノイズデュアルFETによる差動入力+カスコードブートストラップ+能動負荷の初段→差動+カスコード増幅+カレントミラー負荷のプリドライブ段→3段ダーリントン接続の出力段のDCアンプ構成で、入力感度が150mVで設計されているため、通常のパワーアンプに比べ約16dB以上もゲインが高くなっています。
DCアンプで特に問題となる中心電圧のドリフトに対しては、初段に電気的・温度的に特性の揃ったFETを1つのパッケージに収めたローノイズデュアルFETを採用しています。また、従来の電源では不可能だった出力段での定電圧化を実現しているため、安定してハイパワーを得ています。
B級アンプ特有のスイッチング歪を低減するため、fTが高くリニアリティの優れた素子が採用されています。
ラウドネスコントロールには、コンティニュアスラウドネスを採用してます。
これは、専用のスライドボリュームを設けて、実際に聴く人の耳を基準にして調整が出来るようにしたもので、状況は音量などにあわせて自由にコントロールが可能です。
DISCスイッチを搭載しており、このスイッチを押すと内蔵のセレクターのポジションに関わらず、DISC(レコード)の最優先回路となり、各セレクタスイッチをジャンプします。
Phonoセレクターを搭載しており、Phono1回路でインピーダンスの選択やMCポジションの選択が可能です。
Rec outセレクターを搭載しており、演奏しているプログラムに関係なくRec outへの信号が選べます。
Main Directスイッチを搭載しており、このスイッチを押すと、トーンコントロール、コンティニュアスラウドネス、ハイフィルタ、サブソニックフィルタが信号経路から外され、ダイレクトにメインアンプに入力できます。
Listening Level Monitorを搭載しており、スライドボリューム上のLEDの点灯によって、リスニング時の出力のピーク値が確認できます。スピーカーの許容入力にあらかじめセットしておけば、ボリュームを上げすぎたときなどにLEDの点灯で確認できます。
2系統のスピーカー出力、Balance、Mode、Phones、自照式パワースイッチなどを搭載していあmす。
より高音質化するため、イコライザ初段のローノイズデュアルFETや、位相補正用のマイカコンデンサ、カップリング用のマイラーコンデンサ、電源ケミコンに並列に挿入したマイラーコンデンサ、メインアンプ初段のワンチップデュアルFET、金メッキを施したPhono端子などを採用しています。
機種の定格
型式 | ステレオプリメインアンプ |
実効出力(20Hz~20kHz、0.007%) | 120W+120W(8Ω) |
パワーバンド幅(60W、0.002%) | 10Hz~50kHz(8Ω) |
ダンピングファクター | 55(8Ω、1kHz) |
入力感度/インピーダンス | Phono MM:2.5mV/100kΩ、47kΩ、33kΩ、100Ω Phono MC:160μV/100Ω Tuner、Aux、Tape:150mV/47kΩ |
最大許容入力 | MM:250mV MC:15mV |
出力レベル/インピーダンス | 150mV/600Ω |
ヘッドホン出力/インピーダンス | 0.89V/8Ω(0.01%) |
周波数特性 | Tuner、Aux、Tape:20Hz~20kHz +0 -2dB |
RIAA偏差 | MM:±0.2dB MC:±0.3dB |
全高調波歪率(20Hz~20kHz) | Phono MM→Rec out(10V):0.003% Phono MC→Rec out(7V):0.006% Tuner→SP out(60W):0.005% |
混変調歪率 | Tuner、Aux、Tape(120W、8Ω):0.002% Main Direct on(1W、8Ω):0.01% |
SN比(IHF-Aネットワーク、入力ショート) | Phono MM(2.5mV基準):87dB Phono MC(250μV基準):71dB Tuner、Aux、Tape:103dB |
入力換算雑音(IHF-Aネットワーク) | Phono MM:-139dBV Phono MC:-143dBV |
チャンネルセパレーション(1kHz、Vol-30dB、5.1kHz) | Phono MM:70dB Phono MC:70dB Aux、Tape:70dB |
トーンコントロール特性 | ターンオーバー周波数 Bass:125Hz、500Hz Treble:2.5kHz、8kHz 最大可変幅 Bass:±10dB(20Hz、500Hz) Treble:±9.5dB(20kHz、2.5kHz) |
フィルタ特性 | サブソニックフィルタ:15Hz、12dB/oct ハイフィルタ:10kHz、12dB/oct |
コンティニュアスラウドネスコントロール最大補正量 | 20dB(1kHz、聴感補正カーブによる) |
スルーレイト | 200V/μsec |
付属機構 | ディスクスイッチ メインダイレクトスイッチ フォノセレクタ Rec outセレクタ モードスイッチ リスイニングレベルモニタ スピーカー端子(A、B、A+B) |
ACアウトレット | 連動:2系統(100W) 非連動:1系統(100W) |
電源 | AC100V、50Hz/60Hz |
定格消費電力 | 215W |
外形寸法 | 幅435x高さ133x奥行365mm |
重量 | 10.3kg |