VICTOR XD-Z1100
¥198,000(1987年頃)
解説
ビクターの持つテープオーディオ技術やVHS技術を投入して開発されたDATデッキ。
メカニズム部にはミクロンオーダーの高精度を追求したファイントラッキング・メカニズムを採用しています。
このメカニズムでは、センダスト/フェライト複合ヘッドやロータリードラムなどの精密パーツにミクロンオーダーの精度を追求すると同時に、MR型ダイレクトドライブモーター、ドラム用ダイレクトドライブモーターなどをオリジナル開発することで、駆動系の安定化と高精度を達成しています。
さらにビクターの特許である屈伸2節リングのM型ローディングを採用しており、理論値だけでは安定したテープパスが得られない傾斜ポストの角度や、テープがヘッドに当たる角度、テープ位置の規制メカニズムなどに、VHSで培った技術とノウハウを投入しています。しかも、回転ヘッド部分には2重構造によるデュアルメカ・シャーシを採用するとともに、外部の変形圧力から隔離するため、樹脂ベースにメカ部分をつるす特殊なフローティング機構を取り入れて高特性を追求しています。また、テープの動特性を安定させるため、摩擦係数の極めて低い多空孔構造のセラミック製ガイドポストを採用しています。
DATテープでは、一本一本のトラックの中のPCMエリアの両脇にATFエリアがあり、ヘッドがトレース中に拾うATF信号をサーボ回路が読取ることでトラックずれを補正しています。また、この際の許容範囲は±3μmとなっています。
XD-Z1100では、精密な回転ヘッドメカに直径40mmの大型フライホイールを採用しており、ジッターを減らして確実にATF信号を受けられるよう配慮しています。さらに強力なサーボ回路を導入したことにより、トラックずれは基準値の半分以下という優れた特性を達成しています。
また、テープの巻き始めと巻き終わりで異なるテープの張力を一定に保つため、テンションサーボ機構を搭載しており、駆動系を常に安定させるとともに、テープの耐久性も向上させています。
A/D変換部には、LRバランスが全く等しい1チップ構成の高速縦続積分型のA/Dコンバーターを採用しています。
またD/A変換部には、オーバーフローリミッター付の新開発DAT用デジタルフィルターと、1チップ逐次比較型D/Aコンバーターを搭載しています。
デジタル&サーボ系とアナログ系を完全に独立させ、さらにオーディオ回路を一枚のガラスコンポジット基板にまとめてシールドボックスに収容しています。これにより、磁気滞留や誘導ノイズの発生を抑えられるとともに、マイコンやサーボ系のノイズからオーディオ回路を保護しています。
アナログ入出力に加え、同軸と光のデジタル入出力端子を搭載しています。
電源部は、サーボ電流部とオーディオ部、デジタル部の3電源をそれぞれ分離させ、電磁的な影響を排除しています。
さらにアナログ電源部には、リップル除去率74dBにおよぶ低インピーダンス設計の±2電源を採用し、安定した電源の供給を実現しています。
メカニズムを振動から守るため、無共振・無振動設計が採用されています。
高剛性重量級ソリッドベースで低重心・制振構造を追及するとともに、板厚3mmのアルミ製トップ&サイドカバーなどで強靭なボディを形成しています。
また、大型インシュレーターによってスピーカー等の外部振動も抑えています。
48kHz/16bitの通常録再の他に、32kHz/12bitの長時間録再に対応しており、R-120テープで4時間の録再が可能です。
また、ミュージックテープ用の再生専用モードとして、44.1kHz/16bitの標準とワイドトラックの2モードにも対応しています。
カセットドアには、滑らかに上下してテープの挿入口を開閉するガルウィング・ドアを採用しており、モータードライブのカセットホールド機構とあいまってメカの精度を維持したままテープを定位置にホールドさせます。
アフターサンプリングモニターを搭載しており、デジタル入力をそのままD/A変換してアナログ系端子に出力できます。また、アナログ入力時にもA/D変換後ただちにD/A変換してモニターすることができるため、録音直前の音質の確認やレベルのチェックが可能です。
録音時は常時モニターでき、ストップ時にはコール/モニターキーを押す事でアフターサンプリングモニターできます。
キャプスタン駆動による3倍速サーチを搭載しており、音声を聴きながら早送り・巻戻しができます。
動作しているビットが直接読取れるアクティブビット表示やピークホールドを備えた平均値/ピーク並列表示メーターを搭載しています。さらに、フルビットレベルに対するマージンを表示するデジタルピークティスプレイを搭載しており、録音レベルの正確な調整が行えます。
大型FL管を採用したマルチモードディスプレイを搭載しています。
このディスプレイでは、オーバーロード・インジケーター、レベルメーター、デジタルピーク表示、メモリー・インジケーター、リピート・インジケーター、テープモード・インジケーター、ワーニング・インジケーター、デジタルカウンター、カウンターモード・インジケーター、プログラムNo表示、サブコード・インジケーター、アフターサンプリングモニター・インジケーターを表示できます。
デジタルインプット・インジケーターを搭載しています。
このインジケーターが点灯状態の場合はデジタルコピーが可能です。また、PCM-IDにデジタルコピー禁止の信号が記録されている場合やサンプリング周波数が44.1kHzのデジタル信号の場合は早い点滅をします。
デジタル入力信号が無い場合は遅い点滅をします。
DAT特有のサブコードシステムに対応しています。
これにより、スタートIDによる頭出しやプログラムNoによるダイレクト選曲、最大50曲のランダムアクセスプログラム、スキップIDによるスキップ機能、END情報やテープ巻き終わりで自動停止してテープ頭まで巻き戻すオートリワインド機能、スタートIDを用いたイントロスキャン、END情報または未録音部分を探し出すブランクサーチ、テープ全体/好みの曲/2点間のリピート機能などの機能を可能にしています。
ワンタッチで無録音部分を作れるオートRECミュートを搭載しています。
タイマースタート機構を搭載しており、別売タイマーを併用することによって希望時間に電源オンや録音・再生を開始させることができます。
シンクロ端子を搭載しており、ビクターのシンクロ端子付きCDプレイヤーやカセットデッキとのシンクロ操作が可能です。
10キー付きのワイヤレスリモコンが付属しています。
サイドパネルは別売オプションでした。
機種の定格
型式 | 回転ヘッド方式デジタル・オーディオ・テープ・デッキ |
ヘッド | センダスト/フェライト複合ヘッド |
モーター | キャプスタン用:MR型DDモーター ドラム用:DDモーター リールモーター ローディングモーター カセット入出用モーター |
周波数特性 | 5Hz~22kHz ±0.5dB(標準モード) 5Hz~14.5kHz ±0.5dB(長時間モード) |
SN比(エンファシスoff、JIS-A) | 90dB(標準モード) 88dB(長時間モード) |
ダイナミックレンジ(エンファシスoff、JIS-A) | 90dB(標準モード) 88dB(長時間モード) |
全高調波歪率(1kHz) | 0.005%(標準モード) 0.05%(長時間モード) |
ワウ・フラッター | 測定限界以下 |
高速サーチ | 平均アクセスタイム:15秒(R-120) |
早送り・巻戻し時間 | 約50秒(R-120) |
アナログ入出力端子 | Line in:RCAピンx2 Line out:RCAピンx2 |
ヘッドホン端子 | φ6.3標準ジャックx1 |
デジタル入出力端子 | 同軸入力端子:RCAピンx1 同軸出力端子:RCAピンx1 光入力端子x1 光出力端子x1 |
シンクロ端子 | φ3.5ミニx2 |
電源 | AC100V、50Hz/60Hz |
消費電力 | 30W |
最大外形寸法 | 幅435x高さ110x奥行327mm |
重量 | 約9.0kg |
付属 | ワイヤレスリモコン RM-RD1100 ピンコード リモートワイヤー |
別売 | サイドパネル RK-WD11J(¥5,000) |