VICTOR KD-11
¥50,800(1976年頃)
解説
KD-31からANRS・IC回路を省略した構成のステレオカセットデッキ。
LEDを使用しTTL ICで制御する5点マルチ・ピークインジケーターを搭載しています。
-10dB、-5dB、0dB、+3dB、+6dBの各段階で5個のLEDが次々に点灯し、VUメーターでは追従できない瞬間的なパルス入力を示します。
録音アンプ部は、ボリュームの前で規準レベルに対して+48dBの、最終段で+18dBのリニアリティを確保しています。
また、再生アンプも同様に+20dB以上も確保しており、5点マルチ・ピーク・インジケーターやANRS・IC回路とあいまって、歪の少ないクリアな音質が得られています。
また、スタート時のクリックノイズを防ぐ電子ミューティング回路や録音ボタンをロックするだけでレベル調整ができる方式など、使用感や操作性の向上を図っています。
ライン入力は、スイッチの切換えによってマイクアンプを通らずに録音回路へ入力される方式を採用しており、SN比やリニアリティを改善しています。
テープセレクターは、バイアスとイコライザーを単独のスイッチで別々に切換える方式を採用しています。
クローム・イコライザーには、高域だけでなく低域のリニアリティを向上させる3180μS-70μSの時定数を採用しています。
録再ヘッドには、ナローギャップ精密仕上げの硬質パーマロイ材(クロニオス)ヘッドを採用しており、パーマロイ材の優れた磁気特性を得つつ、硬度の高いクロームテープへの対応を図っています。また、ギャップ面の形状効果により低域のあばれを低減しています。
消去ヘッドには、摩耗に強いハイデンシティ・フェライト材を採用しています。
電源部では、全回路にリップル・フィルターと定電圧化電源を採用し、変動の少ない安定な電源を実現しています。
また、歪の少ないバイアス発振回路や、可変コイルを用いた精密調整バイアス・トラップ回路によってバイアス効率を高めながらバイアス漏れの悪影響を抑えています。
メカニズム部は正立直視型を採用しており、キャプスタン・ベルトを他の駆動系から独立させたID(Independent
Drive)タイプとすることでリール台等からの干渉を防ぎ、ワウ・フラッターを低減しています。
キャプスタン自体も真円度0.1ミクロンのものを採用しています。
CdSフォトセルを用いたフルオートストップ機構を搭載しており、自動的にメカニズムをストップ状態に戻します。
カセットドアにはエアダンプ機構による滑らかな開閉動作を採用しています。
さらに、カセットホルダーがフリーヒンジ構造となっているため、テープの取り外しも容易でき、さらにヘッドクリーニングや消磁の際には、ドアを簡単に取り外すこともできます。
ポーズ機構と電磁ソレノイドを組合わせたタイマーレコーディング機構をそなえており、市販のタイマーを利用することでタイマー録再が可能です。
スタンバイ中はピンチローラーがキャプスタンから離れているため、ピンチローラーの変形やテープを痛める心配がありません。
別売りで専用のウッドケースがありました。
機種の定格
型式 | ステレオカセットデッキ |
トラック形式 | 4トラック・2チャンネル・ステレオ |
周波数特性 | 20Hz~18kHz(クローム) 20Hz~17kHz(ノーマル) |
SN比 | 56dB(JIS) 52dB(ピークレベルより) |
ワウ・フラッター | 0.09%(WRMS) |
クロストーク | 65dB(録・再飽和レベルにて) |
チャンネルセパレーション | 35dB(録・再飽和レベルにて) |
バイアス・消去 | ACバイアス95kHz、AC消去95kHz |
ヘッド | 硬質パーマロイ(クロニオス)録再ヘッド 消去ヘッド |
モーター | DC電子ガバナー |
早送り・巻戻し時間 | 125秒(C-60にて) |
入力感度/インピーダンス | Mic:0.2mV/600Ω Line:80mV/100kΩ |
出力レベル/インピーダンス | Line:300mV/5kΩ以上 Headphone:0.3mW/8Ω |
録再コネクター | DIN端子 入力:15mV/10kΩ 出力:500mV/5kΩ |
使用半導体 | トランジスタ:26個 SCR:2個 IC:3個 ダイオード:35個 ※モーター回路含まず |
電源 | AC100V、50Hz/60Hz |
消費電力 | 15W |
外形寸法 | 幅390x高さ151x奥行321mm |
重量 | 7.2kg |
付属 | 接続コード ヘッドクリーニングバー |
別売 | ウッドケース WD-6(¥4,500) |