VICTOR P-L10
¥250,000(1981年発売)
解説
徹底的な聴感重視主義による開発手法を採り入れ、従来と全く異なる発送で信号回路を構成し、最高水準の音質と機能を求めたラボラトリーシリーズの高級プリアンプ。
トランジスタの問題点を原点に返って見直し、聴感テストを重ねて独自の電流増幅回路であるGmプロセッサーを完成させ、ボリュームアンプに搭載しています。
このプロセッサは、信号電圧を電流に変換して増幅し再度電圧化して送り出すという動作をしており、電流⇔電圧の変換率を決める抵抗の値だけでゲインが変わるため、アンプ自体がボリュームの働きをしてくれます。このため、アンプの特性や音質にほとんど影響を与えません。
さらにボリュームの絞込みに比例してノイズレベルが低下するため、実際の使用状態でのSN比が優れているなどの特徴も持っています。
イコライザー回路にもGmプロセッサーを搭載しており、従来のNF型ともCR型とも異なる電流型イコライザーとしています。このため負荷となるCR素子の定数で単純にイコライザー・カーブが決まるため、RIAA偏差は100kHzまでフラットとなっています。
さらに、高域のダイナミックレンジはNF型と同等で、また電流増幅アンプがフラットなためCR型と同等の伝送特性、動特性が得られるなど、NF型とCR型の長所を併せ持つ構造となっています。
Phono1はGmプロセッサーの変換率切換えによるMM/MCハイゲイン・イコライザーで、Phono2は前段にMCヘッドアンプを設けています。
回路素子も格別の配慮をこめて聴き比べ、丹念に選びぬいたものを採用しています。
窒素封入高信頼リレー、高安定金属被膜抵抗、銀箔クラッド接点スイッチ、プレーン箔(無エッチング)大型電解コンデンサー、ローノイズ・ツェナーダイオード、高速ダイオードなど、パーツから基板パターンまで徹底した高信頼・音質重視設計となっています。
トーンコントロールやレコーディングセレクター、カートリッジ切換えなどの機能をシーリングポケット内に搭載しています。
ダイレクトスイッチを搭載しており、ONにするとトーンアンプとモードスイッチ、サブソニックフィルターがディフィートされ、ボリュームアンプとして出力が直結されます。
キャビネットはローズ調の天然木仕上げとなっており、ピアノに似た鏡面塗装が施されています。
通常ピアノの塗装は16工程程度ですが、P-L10では21工程に及ぶ入念な塗装が施されています。
機種の定格
型式 | ステレオプリアンプ |
入力感度/インピーダンス(1kHz)/容量 | Phono1 MM:2.5mV/47kΩ、100Ω、47Ω/470P、220P、47P Phono1 MC:200μV/47kΩ、100Ω、47Ω/470P、220P、47P Phono2 MC:70μV/100Ω、47Ω、10Ω Tuner、AUX、Tape1、2:150mV/47kΩ |
出力電圧/インピーダンス(1kHz) | pre out:2V/220Ω(Direct) rec out:150mV/220Ω(Phono) |
高調波歪率(20Hz~20kHz) | Phono1 MM:0.002%(rec out、15V出力時) Phono1 MC:0.002%(rec out、15V出力時) Phono2 MC:0.002%(rec out、15V出力時) AUX:0.002%(pre out、10V出力時) |
SN比(IHF Aネットワーク・ ショート・サーキット) |
Phono1 MM:85dB Phono1 MC:68dB Phono2 MC:68dB Tuner、AUX、Tape1、2:105dB |
Phono最大許容入力 (1kHz、歪率0.002%) |
Phono1 MM:300mV Phono1 MC:24mV Phono2 MC:8.4mV |
Phono RIAA偏差 | 20Hz~20kHz ±0.2dB |
トーンコントロール | bass:±8dB(100Hz) treble:±8dB(10kHz) |
サブソニックフィルター | 18Hz、-6dB/oct |
ミューティング | -20dB |
電源コンセント | 電源スイッチ連動:2系統 電源スイッチ非連動:1系統 |
電源電圧 | AC100V、50Hz/60Hz |
定格消費電力(電気用品取締法) | 65W |
外形寸法 | 幅460x高さ144x奥行420mm |
重量 | 12.0kg |