KENWOOD L-01A
¥270,000(1979年頃)
解説
徹底的な非磁性体化によってマグネティックディストーションの追放を図ったプリメインアンプ。
聴感上大きな影響を与えるマグネティックディストーションを抑えるため、L-01Aは全体を非磁性体で構成しています。
まず、磁性体・磁束の塊であるトランスを信号増幅部と分離し、別筐体に収めています。また、信号増幅部のコンストラクションも従来のものと一新しており、サブパネルとパネルケースの一部は新強化ナイロン、背面パネルは肉厚フェノール積層板、左右の側板はアルミ、底板はウッドと強度や使用目的に合わせて非磁性体を組み合わせて構成しています。
さらにヒートシンクはアルミ、ヒートパイプやブスアースは銅、パーツ類も樹脂コンデンサー、銅筐体のノングリススイッチ、銅スチロールコンデンサー、コンダクティブプラスチックボリュームを採用しており、筐体からパーツに至るまで徹底した非磁性体構造としています。
スピーカー制御をより高次元で実現するためダイナミックパワーサプライを搭載しています。
L-01Aでは537.6VAという従来のスケールを遥かに凌駕する大容量トランスを左右チャンネルにそれぞれ使用しており、しかも電源トランスを信号増幅系とは分離したダイナミックパワーサプライを採用することで、4Ωや8Ωなど接続するインピーダンスを変えても増幅率を落とさずにパワーをあげることが可能です。
このパワーリニアリティの良さによってインピーダンス変化の激しいスピーカーを接続しても実力を引き出すことができます。
電源部は電源トランスだけを信号系と分離して別筐体を構成しており、整流回路は信号系と同一筐体内に収納しています。この方式によって整流回路までは交流を使って電流容量を増やし、整流回路は信号系の近くに置くことによってインピーダンスを大幅に下げています。
また、パワーアンプ用にAC40Vx2・3Aの大容量トランスを左右チャンネル用にそれぞれ配したほか、MMイコライザー用AC28Vx2・0.5A、MCヘッドアンプ用AC15Vx2・0.6Aと各NFブロックに専用の巻線を使用した大容量トランスを使用しています。
さらにランプリレー用、リモート用電源トランスを含め、トランス専用筐体内の電源容量は537.6VAとなり、100Wアンプとしてはとても強力な電源部を構成しています。
レックアウトセレクターを搭載しており、入力セレクターに関係なくRec outへの信号を自由に選択できます。
また、Rec offポジションではRec out端子に接続されているテープデッキが切り離され、テープデッキからの影響を受けません。
純度99.96%の無酸素銅を用いた熱伝導率の極めて高いヒートパイプを放熱用に採用しており、ファイナルトランジスター間で発生する電磁波の飛びのループを最小限に抑えて信号系への悪影響を抑えています。
さらに、大電力部を集中化することによってヒートシンクを大電力部と小信号部との間に配置することができ、シールド効果を十分に発揮させています。
信号ラインは長く引き回さないという基本ポリシーから、バランスジャンプ回路を採用しています。
バランスジャンプスイッチがONの時には背面パネルから入力された信号はセット中央を通り、スピーカー端子へ送り込まれるという最短経路のシンプルな回路構成となっています。これにより大電力部から小信号部へ与える影響を少なく抑えて、そのうえ放熱板でその干渉を遮り、安定した性能を得ています。
イコライザーアンプ部は低歪率と高SN比を重視しており、初段にローノイズデュアルFETを用いたカレントミラー負荷カスコード差動アンプ(定電流駆動)、次段は定電流負荷カスコード・ダーリントン接続のAクラス増幅、最終段はSEPPのDC構成アンプで構成されています。
入力に使用したFETは信号源インピーダンスにSN比が左右されにくいため、MMカートリッジを実装した時にも優れたSN比を発揮します。
MCヘッドアンプ部はローノイズトランジスタを初段にシングル接続で使用した全段コンプリメンタリープッシュプルの増幅回路を持つDC構成を採用しています。
パワーアンプ部にはトリオ独自の方法で完成したダイナミックバイアス回路を採用しており、トランジスタに一定のバイアス電流を与えることによってアンプからスイッチング歪やクロスオーバー歪を消しています。また、TunerやAux端子からスピーカー端子まで低域カット用のコンデンサーをひとつも持たないストレートDCアンプとなっています。
パワーアンプ部はハイゲイン設計となっており、レコード再生時はイコライザーアンプとストレートDCパワーアンプだけのシンプルな回路となり、音の純度を高めてます。
回路構成は電圧増幅部を初段カスコード接続FET差動の3段差動増幅、電流増幅部をインバーテッド接続3段ダーリントンで構成しています。出力段には安全動作領域の広いEPR(エミッターウィズポリシリコン・バラステッドレジスター)トランジスタをパラレルで使用しています。
サブソニックフィルターを搭載しています。
フィルターには音質を重視してノンポーラ電解コンデンサーを使用しており、カットオフ周波数は2段階切替えができます。
パワーアンプ用に63V/18,000μFのアルミ電解コンデンサーを2本樹脂ケースに入れた新開発のデュアル樹脂コンデンサーを使用しています。低倍率の箔と超高速電解液を使用して低インピーダンスを確保しています。また、端子もプラス/グランド/マイナスと3本にし、端子間隔を極力小さくして飛びのループを抑えています。
またプリアンプ用として、MCヘッドアンプ部の電源回路には大容量樹脂コンデンサーを使用しており、25V/2,200μFを2本、イコライザー用には42V/1,700μFを2本使用しています。
ラウドネス、バランス、レックアウトセレクターにはノングリススイッチを採用しています。
通常の接点に使われている銀を保護するためにつけられていたグリスやオイルは誘電特性が非常に悪く、音質に悪影響を与えていました。L-01Aでは接点に硬質金メッキを施し、グリスやオイル無しでも耐環境性を良くしています。また、筐体には銅を使用しており、非磁性体化しています。
配線には無酸素銅リッツ線を使用しており、表皮効果による高周波特性の劣化を防いでいます。
従来のアルミ箔を銅にした新開発の銅スチロールコンデンサーを採用しています。しかもリード線も銅脚とすることで第3次高調波歪を20dBも提言しています。
また、ミニチュアリレーにも金接点やツインクロスバーを採用しており、接点抵抗を低減しています。
ボリュームには厚みが気につで表面の平滑性が0.2μ以下と極めて滑らかなコンダクティブ・プラスチックボリュームを採用しており、SN比を改善しています。
これまでのハイスピードアンプなどに採用されたタンタル皮膜抵抗、積層スチロールコンデンサー、ポリプロピレンフィルムコンデンサーなどを採用しています。
機種の定格
型式 | インテグレーテッドアンプ | ||
<総合特性(Tuner、Tape → SP out(一部Phono → SP out)> | |||
定格出力(両ch動作) | 100W+100W(8Ω、20Hz~20kHz) 160W+160W(4Ω、1kHz) |
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全高調波歪率(8Ω) |
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周波数特性 | ストレートDC on:DC~400kHz -3dB ストレートDC off:5Hz/18Hz~400kHz -3dB |
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混変調歪率 | 0.003%(60Hz:7kHz=4:1、定格出力時、8Ω) | ||
出力帯域幅 | 5Hz~100kHz(IHF、歪率0.05%、8Ω) | ||
ダンピングファクター | 1000(8Ω) | ||
入力感度/インピーダンス (Balance off) |
Tuner、Aux、Tape play:200mV/50kΩ Phono MM:2.5mV/50kΩ Phono MC:0.1mV/100Ω |
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S/N比(IHF-A) | Phono MM:90dB Phono MC:72dB Tuner、Aux、Tape play:110dB |
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サブソニックフィルター | 5Hz:6dB/oct 18Hz:6dB/oct |
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ラウドネスコントロール(Vol-30dB) | +3dB、+6dB、+9dB(30Hz/100Hz) | ||
トランジェントレスポンス | ライズタイム:0.8μs スルーレート:±150V/μs |
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<イコライザー部(Phono → Tape rec)> | |||
Phono最大許容入力(1kHz) | MM:250mV(歪率0.01%時) MC:9mV(歪率0.01%時) |
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Phono RIAA偏差 | 20Hz~20kHz ±0.2dB | ||
<総合> | |||
出力レベル/インピーダンス | Tape rec(PIN):150mV/180Ω | ||
電源コンセント | 電源スイッチ連動:2系統、100W 電源スイッチ非連動:1系統、400W |
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電源 | AC100V、50Hz/60Hz | ||
定格消費電力 | 300W(電気用品取締法) | ||
外形寸法 | 本体:幅440x高さ156x奥行452mm 電源:幅170x高さ156x奥行403.5mm |
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重量 | 本体:9.5kg 電源:17.5kg |