Technics ST-S5
¥44,800(1979年頃)
解説
クォーツシンセサイザ方式によって直流域(DC)までの忠実な波形伝送を実現したFMステレオチューナー。
クォーツシンセサイザのPLL回路とコントローラーには、15,000以上の素子を集積したマイクロコンピュータ内蔵の新開発28ピンICを採用し、さらにプリスケラー部もIC化することで優れた安定度と高精度を実現しています。
これによりST-S5は局部発振周波数の高安定度を実現しており、検波段以降のMPX出力段までの回路をDC化し、直流域までの増幅・検波・ステレオ復調を実現しています。
さらに、ICによって局発安定化のためのリファレンス周波数を5kHzから25kHzに変更しており、可聴域外に設定することで音楽信号中に信号が漏れるのを防いでいます。
DC電圧によって電気的にキャパシタンスを変化させるバリキャップを使用することで4連バリコンに相当するフロントエンドを構成しています。このバリキャップは、特にハイQのバックツーバック型のものを使用しており、隣接局のイメージ妨害排除能力を向上させています。
さらに、RFアンプには4極MOS型FETを使用しており、高感度を実現しています。
IF段には群遅延特性に優れたセラミックフィルタを3個使用しており、高選択度と低歪率をIF帯域の切換え無しで両立させています。
MPX回路にはDCピークサンプリングホールド回路を採用しています。
ST-S5では、立上りの早いパルス波形をスイッチング信号とし、そのピーク値をサンプリングホールドすることで分離度を高めています。また、検波段以降のMPX出力段までの回路をDC化することによって従来悪化が避けられなかった20Hzのステレオセパレーションも高い水準に保っています。
ジッター歪除去回路を搭載しています。
MPX回路で復調される38kHz信号が高域のオーディオ信号やパイロット信号によって揺られることでジッター歪が発生します。ST-S5ではこの歪を急峻なLCバンドパスフィルタを用いて除去しており、高域再生を一段とクリアにしています。
テクニクス独自のパイロット信号キャンセル回路を搭載しており、MPX回路でステレオ復調用に使った後、オーディオ再生には不必要な19kHzのパイロット信号を電子回路で除去しています。
この回路はPLL ICを利用してMPX入力側に波形整形した-19kHz信号を注入し、パイロット信号のみを除去しています。さらに、ST-S5ではキャンセルレベルのオートアジャスタも装備しており、必要とされるキャンセル量とキャンセルレベルの差であるリークキャリアの変動も防いでいます。
選局は、クォーツシンセサイザによってボタンのワンプッシュ毎に100kHzステップの調整ができます。
また、FM6局分のプリセットメモリーも搭載しています。
ラストワンメモリーを搭載しており、電源スイッチoff時に受信していた局をスイッチon時に効くことが出来ます。
バッテリーバックアップ機能を搭載しており、メモリー内容を保護しています。
リアパネルにFMウィングアンテナ用の接続端子を装備しています。
ボタンナンバーとプリセット局名が記入できるステーションインデックスをフロントパネル下部に収納しています。
機種の定格
型式 | FMステレオチューナー |
受信周波数 | 76.1MHz~89.9MHz |
実用感度(75Ω) | 12.8dBf(1.2μV、IHF'58) |
SN比50dB感度(75Ω) | mono:16.1dBf(2.2μV、IHF'58) stereo:38.1dBf(22μV、IHF'58) |
歪率 | mono:0.06% stereo:0.08% |
SN比 | mono:80dB |
周波数特性 | 20Hz~18kHz +0.2 -0.5dB |
実効選択度 | 75dB |
キャプチャーレシオ | 1.0dB |
イメージ妨害比 | 95dB(83MHz) |
IF妨害比 | 105dB(83MHz) |
スプリアス妨害比 | 95dB(83MHz) |
AM抑圧比 | 55dB |
ステレオセパレーション | 60dB(20Hz) 60dB(1kHz) 40dB(10kHz) |
リークキャリア(19kHz) | -70dB |
アンテナ | 75Ω同軸型 |
出力電圧 | 0.6V |
電源電圧 | AC100V、50Hz/60Hz |
消費電力 | 6W |
外形寸法 | 幅430x高さ53x奥行234mm |
重量 | 3.0kg |