Technics SU-V7
¥64,800(1980年発売)
解説
SU-V10で開発されたニュークラスAアンプの技術をベースに、歪理論値=ゼロを実現するリニアフィードバックを搭載することで、さらなる低歪化を図ったインテグレーテッドアンプ。
リニアフィードバック回路は、NFB理論の理想に立ち返り、アンプの裸増幅度を∞と想定した回路で、多重帰還回路技術の粋をつくしてNFBループ内にアンプの裸増幅度∞を可能とするような独立した帰還回路を形成することで、理論値として、歪=0、素子や電源の影響のないピュアゲイン、逆起電力や線材の影響のないスピーカー駆動を実現しています。
SU-V7では、独立した帰還回路には帯域制限を行っており、周波数が高くなるにつれて、帰還量をなだらかに抑えています。この構成では、100kHzで20dBほどのゲインアップを得ており、超高域でもNFBは従来の10倍安定にかかることになり、大幅に歪を低減しています。また、DC領域では無限大までのゲインアップが成されるため、入力換算では2μV/℃というDCドリフトに対する優れた安定度を得ています。
ニュークラスAの根幹をなすテクニクス独自のシンクロバイアス回路では、通常B級、AB級で高効率を得るため交互に完全休止してしまう出力トランジスタに、その休止サイクルと同期して一定バイアス電流を供給し、出力段を常に能動状態においておくことで、休止に起因するスイッチング歪を解消しています。
さらに信号経路とバイアス電流経路を独立させているため、出力段は常に適切な動作点をキープし、二重特性を持つ高速ダイオードの働きと相まって、クロスオーバー歪を解消し、高効率でA級のにごりの無い音質を実現しています。
出力段と電源部を一体化することで、電磁界の悪影響を根本から断ち切ったコンセントレーテッドパワーブロックを採用しており、電磁波の発生を根本から抑えています。
さらに、シャーシやカバーなどにシールド効果の高い磁性体を使用することで、外部誘導を抑えています。
出力段を含め、全段を定電圧で駆動する新開発のサーボ電源を採用しています。
この回路は、電源トランスの2次側に備えた2つのサイリスタ(SCR)と基準電圧/出力電圧比較回路の働きで、通電角をタイムコントロールする構造となっています。これにより、1次側の電圧変動や出力段の大出力大電流消費時の電圧変動による影響を抑え、一定電圧を出力段を含む全段に供給しています。
この回路は従来の10分の1という定インピーダンスを実現しており、従来の電源の10倍の電源部に等しい優れたレギュレーションを得ています。
また、電源トランスの2次側でSCRの通電角を制御するため、1次側での制御方式と異なりスイッチングノイズが他の機器に影響を与えません。
イコライザ部にはMC基本設計のハイゲインフォノイコライザを搭載しています。
初段にはローノイズデュアルFETによる差動増幅器を採用しており、MM/MCともにコンデンサを追放したICLイコライザとなっているため、動作モードをストレートDCにした時、フォノ入力からスピーカー端子までの間にカップリングコンデンサが一つだけというシンプルな回路構成を実現しています。
さらにフォノイコライザ次段に高ゲインIC(100dB以上)を採用しており、低雑音のFETの採用と相まってMM⇔MCのゲイン切換を実現し、MCカートリッジがダイレクトに使用できます。
また、ストレートDCポジションでの他のハイゲイン入力は、ハイゲインのDCアンプでダイレクトにスピーカー端子まで増幅され、忠実な波形伝送が可能です。
トーンコントロールはメインアンプのNFループを利用しており、高SN比、低歪を実現しています。
純電子式の保護回路を搭載しており、スピーカー端子にDC成分が発生した場合はリレーでスピーカーを切離します。
また、この回路はスピーカー端子のショートや異常な低インピーダンス負荷となった場合のアンプ保護にも動作します。
パワートランスには、低振動・低漏洩磁束の樹脂封止パワートランスを採用sいています。
ラッシュカレント防止回路を搭載しており、電源on後数秒間、ピーク電流をセーブします。
レコードのソリや偏心による低域の不要信号をカットできるサブソニックフィルターを搭載しています。
独立型のrec/inputセレクタを採用しており、レコードリスニング中にFMエアチェックやテープtoテープのダビングが可能です。
2系統のスピーカー出力を搭載しています。
機種の定格
型式 | インテグレーテッドDCアンプ |
<Tuner、Aux→SP out総合特性> | |
実効出力(20Hz~20kHz) | 80W+80W(4Ω、0.007%) 80W+80W(8Ω、0.003%) |
全高調波歪率 | 0.003%(定格出力-3dB、20Hz~20kHz) |
パワーバンド幅(THD 0.02%) | 5Hz~100kHz |
周波数特性(ストレートDC) | 20Hz~20kHz +0 -0.2dB 0.5Hz~170kHz +0 -3dB |
TIM | 測定不能 |
SN比(IHF-A、ストレートDC) | 100dB |
残留ノイズ(ストレートDC) | 550μV |
ダンピングファクター(8Ω) | 60 |
負荷インピーダンス | main or remote:4Ω~16Ω main and remote:8Ω~16Ω |
<その他特性> | |
入力感度/インピーダンス | Phono MM:2.5mV/47kΩ Phono MC:170μV/220Ω Tuner、Aux、Tape:150mV/27kΩ |
Phono最大許容入力 (1kHz、RMS、THD 0.01%) |
MM:150mV MC:10mV |
プリ部全高調波歪率 | Phono MM→Rec out(5V):0.005% |
Phono SN比 | MM:86dB MC(250μV入力):68dB |
Phono周波数特性 | 20Hz~20kHz RIAA ±0.5dB |
トーンコントロール | Bass:±10dB(50Hz) Treble:±10dB(20kHz) |
フィルター | High:7kHz、-6dB/oct Subsonic:20Hz、-12dB/oct |
ラウドネスコントロール | +9dB(50Hz、Volume -30dB) |
プリ部出力電圧 | Rec out:150mV |
<総合> | |
電源 | AC100V、50Hz/60Hz |
消費電力 | 140W |
外形寸法 | 幅430x高さ120x奥行362mm |
重量 | 9.5kg |