SONY MDS-JA555ES
¥120,000(1999年発売)
解説
新開発ATRAC用TYPE-R DSPや新DACシステムを採用したESシリーズのプレステージモデルにあたるMDデッキ。
ATRAC用DSPに信号処理能力を従来の2倍に高めたATRAC用TYPE-R DSPを新開発し採用しています。また、新規に開発したインテリジェント・ビット・リアロケーション・アルゴリズムの採用により、高められた処理能力を最大限に使い、スペクトラム変換されたデータを再分析することで、今まで発見が困難だった微小レベルの冗長なビット配分をサーチし、聴感上重要な周波数帯域に再分配しています。これによりビット配分がさらにきめ細かく洗練され、元の音楽ソースの波形に近づけることが可能になっています。
このATRAC用TYPE-R DSPで録音したディスクは、TYPE-R DSPを採用していないMDデッキでも再生が可能です。
ATRAC用TYPE-R DSP採用によるワイドビットストリームテクノロジーを導入しています。
入出力の24ビット化や演算語長の拡大を行うことで、MDフォーマットである16ビットを超える、20ビット相当精度のダイナミックレンジの広い録音・再生を可能にしています。
DAC部には、S-TACT ICを採用した新DACシステムを採用しています。
S-TACTは、入力されたデジタルデータを読み取って高精度なパルス信号に生成します。さらに、パルス生成部をデジタルフィルターやノイズシェーパーといったデジタル演算部から完全分離させることで、パルスの時間軸方向に対するデジタルノイズの影響を排除できるメリットを持っています。
MDS-JA555ESでは、このS-TACTのクロック精度を128Fsに高めた新開発のS-TACT
ICを採用しており、前段のデジタル演算部に採用された24bit(V.C.)デジタルフィルターの能力を引き出す事ができ、ダイナミックレンジの拡大やS/N比を向上しています。
DACシステムのD/A変換部には、ソニーのスーパーオーディオCDプレイヤーやESシリーズのCDプレイヤーに採用されているカレント・パルスD/Aコンバーターを採用しています。電圧として出力されるパルスを電圧性ノイズの影響を受け難い電流に置き換えて伝送しており、安定した電流源を持つことと、電圧変動の影響を受けないことで、優れた低音再生を可能にしています。
32kHzや48kHzの各サンプリング周波数を44.1kHzに自動変換するサンプリングレートコンバーターを搭載しています。
電源部には、トランスの鉄心に切れ目が無く、さらに断面も円形のドーナツ型にすることで磁束漏れと振動を大幅に減少させたRコアトランスを採用しています。
さらに、MDS-JA555ESではオーディオ系とデジタル信号系それぞれ1個ずつRコアトランスを搭載することで、干渉と揺らぎの少ない電源を実現しています。
シャーシ構造には、十分な強度を持ったメタル材をしようし、外周を取り囲むフレームと前後に渡したビームで、シャーシ全体を一つの箱として強固に固めたFBシャーシが採用されています。それぞれ異なる形状と大きさの部材を組み合わせる事で固有振動を相互に打消し、シャーシ全体としての振動を大きく低減しています。
さらに、フレーム前面と側面に斜めのビームを渡すことでさらにシャーシを補強し、2ミリ厚の底板を2枚採用するなど、耐振強化部材を投入することで、シャーシ全体としての振動を大きく低減しています。
ディスクの装填に低重心センターとレイ・ローディング方式を採用しています。
トレイ・ローディング部とベースユニット部はインシュレーターと圧縮コイル羽でフローティングし、ベースユニット部を保持するモールドにはPBTと呼ばれる振動減衰特性の優れた素材を採用することで、ディスクへの振動を少なくし、信号の読取り精度を高めています。
シャーシへの取り付け穴の位置をセンターからオフセットした偏心インシュレーターを採用しています。これにより外部から伝わる振動が相互に打消し合い、シャーシに伝わり難くなっており、特に聴感に影響する中高域の振動成分の減衰に効果を発揮しています。
デジタルRECレベルコントロールを搭載しており、ゲイン0dBを中心として-∞dBから最大+18dBまでコントロールができます。
また、設定した録音レベルを入力系ごとに記憶させることができるメモリー機能を搭載しています。
MDの再生時にデジタルフィルターの遮断特性を変える事で微妙な音の変化が得られる可変(V.C.=Variable
Coefficient)デジタルフィルターを搭載しています。MDS-JA555ESでは、演算語長が24ビットに高まったと同時に演算スピードも高速化しており、さらに128Fs対応のS-TACT
ICの採用と相まって処理能力を飛躍的に向上させています。
可変デジタルフィルターのポジションは4種類プリセットとなっており、好みに応じて音質調整が可能です。
24bitに対応した3系統のデジタル入力と2系統のデジタル出力を搭載しています。
2行表示のFLディスプレイを搭載しています。
デジタル録音時に3秒以上の無録音部を自動的に約3秒に揃えるスマートスペース機能を搭載しています。
タイマースタンバイ機能を搭載しています。
ソニーのCDプレイヤーと組み合わせて使用できるコントロールA1II端子を搭載しています。
ピッチコントロール機能を搭載しており、再生スピードを-98.5%~+12.5%の範囲で変えることが可能です。
ミュージックシンクロ機能を搭載しており、リモコンのミュージックシンクロ・ボタンを押した後に接続した機器の演奏をスタートさせるだけで、音楽信号の入力を感知して自動的に録音を開始します。
タイムマシン録音機能を搭載しており、録音ポーズ状態でマルチジョグダイヤルを押すと最大6秒前の音に遡ってディスクに録音できます。
MDを表示の2倍の長さで使えるモノラル録音・再生機能を搭載しています。
曲の分割(DIVIDE)、連結(COMBINE)、移動(MOVE)などの編集が可能です。また、間違えた場合に直前の編集操作をキャンセルできるUNDO機能を搭載しています。
COMBINEやDIVIDEでの編集ポイントを確認できるリハーサル機能を搭載しています。
編集ポイントの移動は、DIVIDEの編集点を分・秒・フレーム(約0.01秒)単位で微調整できます。
1曲内の指定した2点間を消去できるA-B ERASE機能を搭載しています。
ディスク名や曲名を約1,700文字までディスクに記録できるタイトル機能を搭載しています。
アルファベットや数字、記号に加え、カタカナ文字にも対応しており、録音・再生中でも本体及びリモコンから入力ができます。
MD-PCリンクに対応しており、別売りのMD-PCリンクキットにより、パソコンとの接続が可能です。
これにより、パソコンからMDデッキの基本操作をはじめ、様々なディスク編集がパソコン画面上で行えます。また、パソコンのキーボードからの感じ/ひらがな文字入力も可能(表示対応機種でのみ表示可能)です。
さらに、MDラベルの作成やPC CD→MDへの録音が楽しめます。
デジタル録音はSCMS(シリアルコピーマネージメントシステム)により、1世代に限り可能で、2世代以降のデジタル録音はできません。ただし、CS放送からの録音の場合、番組によっては録音できないことがあります。
ワイヤレスリモコンが付属しています。
機種の定格
型式 | MDデッキ |
A/Dコンバーター | 24bit⊿∑ |
D/Aコンバーター | カレントパルスD/Aコンバーター 24bit可変(V.C.)フィルター |
音声圧縮方式 | ATRAC |
録音・再生時間 | ステレオ:最長80分 モノラル:最長160分 |
周波数特性 | 5Hz~20kHz ±0.3dB |
ダイナミックレンジ | 108dB以上(再生時) |
SN比 | 108dB以上(再生時) |
全高調波歪率 | 0.002%以下(再生時) |
ワウ・フラッター | 測定限界(0.001%W・peak)以下 |
入力端子 | ライン:1系統 光デジタル:2系統 同軸デジタル:1系統 |
出力端子 | ライン:1系統 光デジタル:1系統 同軸デジタル:1系統 ヘッドホン:1系統 |
電源電圧 | AC100V、50Hz/60Hz |
消費電力 | 23W |
外形寸法 | 幅430x高さ126x奥行375.5mm |
重量 | 約15.3kg |
付属 | ワイヤレスリモコン RM-D40M |
別売 | MD-PCリンクキット PCLK-MD2(¥11,000) MD-PCリンクキット PCLK-MD1(¥15,000) |