SONY TA-NR10
¥800,000(1992年頃)
解説
TA-NR1をベースにカスタムメイド・パワーMOS FETなどによって完成度を高めたモノラルパワーアンプ。
出力段にはカスタムメイドパワーMOS FETを使用しています。
パワーMOS FETは優れた気泡特性を持っています。まず、電圧制御素子であるため前段からの電流の流れ込みがなく、段間の相互干渉が排除できます。また、多数キャリア制御によってスイッチング歪の原因となる電荷蓄積効果が無いこと。さらに、入出力は良好なエンハンスメント特性を示しており、特にコンプリメンタリーペアで使用した場合には相似関係にある互いの2乗特性が相殺され、微小レベルまで高いリニアリティが得られます。
TA-NR10ではこのパワーMOS FETに着目し、耐圧200V、最大ドレイン電流12Aの大容量で、しかも取り付けベースとリードに非磁性金メッキを施したカスタムメイド・パワーMOS
FETを新たに開発・搭載しています。この素子をピュアAクラス動作による10パラレルプッシュプル構成とするこでゆとりある電流供給能力を持たせ、ロード切替の必要なく1Ω負荷連続ドライブをも可能にしています。
さらに、ピュアAクラスならではのアンプ動作によって裸の歪は極少に抑えられており、NFBは6dBの低帰還量にとどめています。
出力段を固定するヒートシンクには純銅ブロックを採用してます。
純銅は一般的なアルミに比べて熱伝導率は約1.6倍あり、ベース肉厚18mm、1個10kgのヘビーウェイト仕様のヒートシンクとすることで自然空冷のままで使用できる高い放熱特性と、出力素子の鳴きを抑える制振性を確保しています。
電源部にはサイレントS.T.D.(スポンティニアス・ツイン・ドライブ)電源を採用しています。
S.T.D.方式では各段への供給を整流回路から分離しており、大出力時の干渉を排除しています。
電源トランスにはコアサイズφ120mmと巨大化した重量10kgの低リーケージフラックス・トロイダルトランスを採用しています。また、平滑用コンデンサーには、電極箔を分割・積層することで特性分布の均一化を図り音質を改善した、スタッキング構造の多素子アルミ電解コンデンサーを採用しており、電圧増幅段に9,200μFx2/330μFx2、電力増幅段に22,000μFx2を搭載しています。
シャーシにはハイカーボン・スチールシャーシを採用しています。
素材は工作機械の土台として使われる鋳鉄そのもので高い剛性と優れた振動減衰特性を持っています。この素材を最大部肉厚21mm、重量10.5kgに及ぶ剛体構造とすることで、重量級パーツをしっかりと支えています。
また、内部コンストラクションは電源部を挟んでパワーブロックを左右対称に配置したシンメトリー構成となっており、電気的・重量的に良好なバランスを得ています。
入力端子はアンバランス入力に加え、XLRターミナル・バランス入力を搭載しています。また、バランス入力にはピンジャック仕様の正相/逆相入力を併せて装備しており、TA-NR10を2台ブリッジ接続することでパワーアップを図ることができます。
フロントパネル及びリアパネルには7mm厚のアルミ押出材を使用しています。また、天板にはアルミ押出材にガラス繊維強化モールド製の通気口を備えています。そして、コーナーポストにもアルミ押出材を使用し、パワーブロックの回路基板に対向する両側板にはウッドを使用しています。さらに底板は鉄とベークライトのコンビネーションとしており、聴感とあわせたアコースティック・チューン構造体となっています。
使用パーツ類は音質部品を中心に構成されており、スペックだけでは分からない聴感上の特性にも配慮して信頼性のあるものを使用しています。特に信号系に関しては抵抗1本からコンデンサー1個まで試聴の上で選択しています。
電圧増幅段および電力増幅段の各回路基板には制振性を高めたOFC圧延・銅箔70ミクロン厚のガラスサンドイッチ基板を採用しています。
バランス入力用トランスには、均質な材料特性によって高い透磁率を誇る大型スーパーパーマロイコアを使用しており、信号全帯域にわたる低歪化を実現しています。
スピーカー端子には真鍮削り出し金メッキ仕上げの万力タイプ専用設計スピーカーターミナルを採用しています。
バナナプラグにも対応するため、バナナジャックも別で設けられています。
脚部には鋳鉄製のインシュレーターを採用しています。
インシュレーターとフロアとの接触面には振動を抑える無反発ゴムを使用しています。
過電流・DC検出方式によるプロテクション回路を搭載しています。
リレーには12接点6パラの高品質リレーを採用しています。
電源コードにはクラス1OFCを使用しており、柔らかめのシースを用いた極太2芯構造となっています。このケーブルはプラグに極性表示が付いています。
また、電源コードはトランス直下の底板からの引き出しとしています。
バックライト付きアナログ式テンプメーターを搭載しており、ウォームアップ時からのアンプの動作温度を監視できます。
機種の定格
型式 | モノラルパワーアンプ | ||
回路方式 |
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実効出力 |
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全高調波歪率 | 0.005%(8Ω負荷、10W出力時) 0.05%(8Ω負荷、実効出力時) 0.08%(4Ω負荷、実効出力時) |
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混変調歪率 | 0.05%(8Ω負荷、実効出力、60Hz:7kHz=4:1) | ||
ダンピングファクター | 100以上(1kHz、8Ω) | ||
残留雑音 | 30μV以下(Aネットワーク) | ||
SN比 | 120dB以上(Aネットワーク) | ||
周波数特性 | 5Hz~100kHz +0 -3dB | ||
入力感度/インピーダンス | Unbalanced:1.1V/47kΩ Balanced:0.55V/600Ω |
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適合負荷インピーダンス | 1Ω~16Ω | ||
電源 | AC100V、50Hz/60Hz | ||
消費電力 | 460W | ||
外形寸法 | 幅470x高さ220x奥行455mm | ||
重量 | 62kg |