SONY/ESPRIT TA-N902
¥280,000(1983年頃)
解説
3年半の歳月を費やし、耳と感性を用いて回路・ディバイス・機構の3つの要素を注意深くチューニングして開発されたステレオパワーアンプ。
TA-N902は、ステレオパワーアンプとモノラルパワーアンプの2通りの使用が可能で、切替えは背面パネルのスイッチから行います。
パワーステージは、歪低減回路とHi-fTトランジスタ5個を並列接続したエミッタホロワのSEPP出力で構成されています。
ここで搭載されたソニー独自の歪低減回路は、パワーステージのリニアリティを補正するようにドライブ電圧をコントロールしつつ、パワー素子を殆どの領域でAクラス動作させています。これによりプリステージへのNFB回路を取り除く事ができ、TIMやスピーカー負荷のリアクションによる影響を大幅に低減し、より純度の高い音質を実現しています。
電源部は大型電源トランスを左右チャンネル別に2個搭載しており、このトランスを核に、音質を吟味し高周波インピーダンスを低減した電解コンデンサーを組合せ構成しています。
また、電源コードにも注意を払い、伝送特性の良いスターカッド構造線を採用しています。
全段にわたり対称設計の左右ツインモノラル構成を採用しており、アースラインは集中アースとし、ステージ間のアース電位の差から発生する有害成分を排除しています。
ヒートシンクを外部に露出させたレイアウトを採用することで、余裕ある電源回路設計を可能にしています。
さらに、このヒートシンクそのものを大型・高剛性のアルミダイキャストで作り、キャビネット全体の強靭な構造基台としています。
また、フィンの鳴きが音質に影響を与える事に着目し、形状、材質を吟味した防振ゴムを専用に作り、聴感上もっとも理想的な位置に取り付けています。
トランスやコンデンサーの振動が音質に与える影響を考慮し、トランス内部に防振性に優れた物質を充填し、さらにトランスとシャーシの間にゴム製のダンパーを介在させることにより、トランスとシャーシ間の振動伝達を防いでいます。
また、コンデンサーも外側から特殊な制振材で振動を抑制しています。
天板の振動を抑える制振材を採用したほか、外部からの不要な振動成分を除く特殊材料の取付脚の採用など、徹底した防振設計が施されています。
3系統の入力端子を搭載しています。
Variable端子は、前面パネルのアッテネーターによりレベル、バランス調整が可能で、CDプレイヤーなどのプログラムソースをダイレクト接続し、よりピュアな状態で再生する事が可能です。
そして、2系統のFixed端子は、出力レベルが固定されており、Direct及びCoupledにプリアンプ出力を接続して使用するように設計されています。
フィルムコンデンサーには、従来問題とされてきた印加電圧による機械的な共振や損失を解決するため、フィルムを固く巻いて周囲を固定し、さらに電極とフィルム自体に機械的強度や電気的特性の優れたものを選んで使用してます。また、リード線、電極接合部、電極の材料や接合状態にも配慮がされています。
電源部の大容量コンデンサーには、陽極・陰極とも高純度アルミ箔を使用し、誘導体である酸化被膜には音質的に最適な化成方式を採用しています。また、電解液は高速、低歪率タイプで、温度安定性も優れたものを使用し、端子の材質からメッキに至るまで磁性体を排除、高周波インピーダンスを従来の1/2以下に改善など、様々な改良が施されています。
配線材には、世界で初めてLC(リニア・クリスタル)-OFCを電源、信号系線材に採用しています。
LC-OFCは第一種無酸素銅(純度99.995%以上)の結晶を巨大化し、結晶境界の数を少なくして容量リアクタンスによる音楽信号の劣化を減少させたもので、通常のOFC1m当り50,000個を超える結晶が、LC-OFCでは20数個に減少しています。このため、見かけ上信号経路が2,500倍に拡大された状態となっています。
アンプのフロントパネルにはTemperature(温度)モニターを搭載しており、パワーON後、温度が約40℃に達するまでは青、ベストコンディション(40℃~90℃)状態では緑、温度が上がりすぎた時は赤に除々に変化し、オーバーヒート状態が長く続いた場合は、プロテクションが働き信号が遮断されます。
ピークパワーインジケーターを搭載しており、LまたはRチャンネルのどちらか高いレベルの方のスピーカー出力を、大きさに応じて6段階に点灯します。
このインジケーターがフルに点灯し、オーバーロードがあった場合もプロテクションが動作します。
着脱自在のJIS/EIAラックマウント用取付金具が付属しており、自由なセッティングが可能です。
機種の定格
型式 | ステレオパワーアンプ | ||||||
回路方式 |
|
||||||
実効出力(20Hz~20kHz) |
|
||||||
出力帯域幅 | 5Hz~80kHz(65W出力、8Ω負荷、定格高調波歪率時) | ||||||
スルーレイト | 120V/μsec(8Ω) | ||||||
ダンピングファクター | 50(1kHz、8Ω) | ||||||
高調波歪率 (実効出力時) |
0.1%以下(8Ω) 0.2%以下(4Ω、モノラル8Ω) |
||||||
混変調歪率 (実効出力時) |
0.1%以下(8Ω) 0.2%以下(4Ω、モノラル8Ω) |
||||||
残留雑音 | 30μV以下(8Ω、Aネットワーク) | ||||||
SN比 | 120dB以上(クローズドサーキット、Aネットワーク) | ||||||
周波数特性 | DC~100kHz +0 -3dB(Direct) 5Hz~100kHz +0 -3db(Coupled) |
||||||
入力感度/インピーダンス | 1.3V/50kΩ(実効出力時) | ||||||
スピーカー出力 | stereo:4Ω~16Ωに適合 mono:8Ω~16Ωに適合 |
||||||
電源 | AC100V、50Hz/60Hz | ||||||
消費電力 | 330W | ||||||
外形寸法 | 幅480x高さ155x奥行485mm | ||||||
重量 | 28kg | ||||||
ラックマウント | JIS標準ラック(取付けピッチ100mm)で可能 |