解説　

TA-E9000ESとの組合せを想定して開発された5チャンネルパワーアンプ。

ダイナミック5アンプシステムを採用しており、他のチャンネルに比べて小さな出力が割り当てられていたリアチャンネルも含めて全て同一ステージとなっています。これにより、より迫力のあるサラウンド再生が可能です。
TA-N9000ESは独立した5チャンネルのアンプとして使用できるほか、2/3/4チャンネルアンプとしても動作可能です。さらに2ブロックのアンプ回路を連結して1つの大出力アンプとして使うBTL接続にも対応しています。

通常の5チャンネル入力端子のほかにエキストラ入力端子を搭載しており、ピュアオーディオ用のプリアンプの接続が可能です。

パワーアンプ回路と電源の関係を見直したダイレクトグラウンドドライブ方式を採用しています。
従来のアンプではトランスの出力をいったん整流回路に送り、各パワートランジスタには整流回路から供給する構造でしたが、ダイレクトグラウンドドライブ方式ではパワートランスとスピーカー負荷を直結し、負荷電流をパワートランスから直接供給しています。これにより高速でハイパワーな電力供給が行なえ、低音の量感やリズム感が改善されています。
この方式で重要となるグラウンド回路には蟹型グラウンドユニットを採用しています。この部品では通常プリントパターンの30倍の厚みに相当する1mm厚の銅板を用いて10本の分岐点と適切な接続順序を持たせており、極めて低インピーダンスのグラウンド回路を実現しています。

パワーアンプブロックは全チャンネルが分離したディスクリート構成で設計されています。
5個のアンプ回路を無理なく構成するため回路基板には表面実装基板を採用しており、振動に強い構造を実現しています。また、表面実装に向かない高音質用の電解コンデンサーなどにはリードタイプを使用し、抵抗体もソニーの高級コンポーネントRシリーズで開発したMELF抵抗を、角形チップ抵抗に代えて用いるなど、適材適所で使い分けを行なっています。

出力段にはワンプレート・デュアルチップパワートランジスタを採用しています。
このトランジスタは一枚の銅プレートの上に特性の揃ったパワートランジスタチップを2個近接して配置した構造となっています。これにより熱バランスを同一とし、さらに電流経路も近接した場所を通るため、合成にともなう歪などの発生を極めて小さく抑えています。

電源部にはEI 111x100サイズの大型電源トランスを採用しています。
このトランスにはラップ詰めコアを採用しており、通常はE形とI形の磁性鋼板をそれぞれ個別に積層して形成するコアを、E形とI形を交互に積み重ねた構造にしています。この構造は製造に手間がかかりますが音質的には有利で、磁路に断層的に切れている部分が無くなることで磁束の漏れが激減し、オーディオ回路に与える影響を少なく抑えています。

アンプ回路はヒートシンクや入力端子を含めてインナーシャーシにマウントされており、外装シャーシから振動面で分離されてます。さらに、基板をやや傾けてマウントするスラントマウント基板とすることで定在波の発生を抑え、共振を低減しています。
インナーシャーシは継目の無い単一のスチール材を用いたモノコック構造としています。

シャーシには接合点のロスによって振動を吸収して減衰させるFBシャーシを採用しています。

ヒートシンクにはフィンの共振を抑えるために新開発された振動分散型フィン構造を持つsfヒートシンクを採用しています。
このヒートシンクはフィンの一つ一つに位置の異なるリブを設けており、音叉振動を防ぐと共に分割振動を抑え、音楽へのカラーレーションを最小限に留めています。

入力端子には下地や処理方法自体に音質的な吟味を加えた金メッキ入力端子を採用しています。
また、スピーカーターミナルにはY端子やバナナプラグに対応した大型タイプを採用しています。

機種の定格

型式	5チャンネルパワーアンプ
オーディオ入力	5ch:1系統 Extra 2ch:1系統
実用最大出力(EIAJ)	フロント:155W+155W(4/8Ω) フロント(BTL):240W+240W(8Ω) センター:155W(4/8Ω) リア:155W+155W(4/8Ω)
全高調波歪率	フロント:0.013%いか(8Ω負荷、100W+100W、20Hz～20kHz)
周波数特性	20Hz～20kHz +0 -0.5dB 10Hz～100kHz +0 -3dB
SN比(Aネットワーク)	118dB
電源	AC100V、50Hz/60Hz
消費電力	300W
外形寸法	幅430x高さ173.5x奥行453mm
重量	約24kg