オーディオの足跡

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TA-N900の画像
 解説 

素子、回路、電源部、コンストラクション、さらにインターフェイスまでも含め、一切の妥協を排して開発されたモノラルパワーアンプ。

パワーステージには、ソニーが独自開発した二重拡散型パワーMOS FETを採用しています。
一般的なパワーMOS FETは、一般的なFETと同様に高入力インピーダンスで応答スピードが速く、安全動作領域が広いなどの特長を持っています。二重拡散型パワーMOS FETでは、さらに高耐圧(210V)で大電流(最大10A)が扱え、オーディオ用パワー素子として非常に有利な条件を備えています。
TA-N900ではこのパワーMOS FETを使用し、さらにパワーステージのリニアリティを補正するようにドライブ電圧をコントロールしながらパワー素子を殆どの領域でAクラス動作させる新開発歪低減回路を採用してます。
これにより、パワーステージの歪率を従来と比較して1桁以上改善し、この結果パワーステージからプリステージへのNFB回路を取り除く事ができ、TIMやスピーカー負荷のリアクションによる影響を大幅に低減しています。

パワーアンプ部プリステージの回路構成は、初段はジャンクションFETとバイポーラトランジスタにようr差動入力ダブルカスコード・ブートストラップ回路で、FETの帰還容量の非直線性による高域の歪を減少させ、さらにカスコード接続のカレントミラー負荷との組合せで温度変化に対する安定度と電源リジェクション特性の向上を図っています。
2段目はバイポーラトランジスタのカスコード・ブートストラップ型の反転増幅回路となっており、リニアリティが良く、初段と同様に高い電源リジェクション特性を持っています。
終段は、コンプリメンタリーエミッタホロワSEPP出力となっており、この出力端子から初段へのNFBループを持っていますが、信号も小さくスピーカー負荷からもパワーステージにより切離されているため、TIMやリアクティブ負荷による問題は殆ど無視できています。
プリステージのゲインは約27dBでパワーステージを強力にドライブする構造となっています。

パワーステージはパワーMOS FET4個を並列接続したソースホロワのSEPP出力となっています。また、歪低減回路はプリステージの出力にゲート電圧検出回路の電圧を加えて、そのパワーMOS FETのゲートをドライブする構成となっています。これにより出力素子のリニアリティ成分が補正されてます。

電源部にはパルスロック電源(PLPS:Pulse Locked Power Supply)をさらに改善して採用しています。
過渡的な信号に対しても充分に対応できるようパワーステージの+側、−側の各々にパルス幅制御型電圧回路を設置し、その低周波領域の出力インピーダンスは従来の大型トランスを使用した場合に比べて1/10以下の約0.05Ωとしています。
また、プリステージ用として独立した直列型安定化電源を採用しており、ステージ間の干渉を抑えています。

電源回路の1次整流回路では、AC100V入力をブリッジ接続のダイオードでDC140Vに整流しています。このダイオードは応答特性の優れたスイッチングノイズの小さい高速ダイオードを使用しています。
また、電源回路では4個のハイパワースイッチング用のトランジスタと発振器により、20kHzの矩形波を作り出し、コンバータトランスに電力を送り込んでいます。コンバータトランスには周波数が20kHzと高いため、高周波ロスの少ないフェライトコアを用いたトランスを使用しています。商用電源(50Hz/60Hz)を扱う場合に比べ、小型ながら巻線のターン数を少なくでき、内部インピーダンスが小さくなっています。
2次整流回路では、電圧変換された20kHzの出力を高速ダイオードにより±のDCに整流しています。

パルス幅制御型定電圧回路では、パワーアンプ終段にかかる±のDC電圧を検出し、20kHzのパルス幅をコントロールしており、出力電圧を±別々に一定に保っています。また、この出力端子には22,000μFのコンデンサが挿入されており、過渡的な信号に対しても対応できるように配慮されています。
さらに、パワーステージとは別に、小信号(プリステージを含む)用に独立した直列型定電圧回路を設け、パワーステージからの干渉を排除しています。

保護回路を搭載しており、パワーアンプ出力のDC電圧、パワーMOS FETの温度、負荷インピーダンスを検出し、スピーカーまたはパワーアンプが危険な状態になったとき、出力を遮断しスピーカー及びTA-N900を保護しています。

スピーカーインピーダンススイッチを搭載しており、8Ω/4Ω/2Ωのスピーカーをそれぞれ最も効率良く安定にドライブできるよう、スピーカーインピーダンス切替スイッチを設けています。
これは、パルスロック電源のパワーステージへの電圧供給が、各ポジションで定格出力200Wになるようコントロールされ、スピーカー負荷の違いにも対応できるようにしています。
なお、16Ωのスピーカーを使用する場合は、8Ωポジションに合わせ、この時の出力は100Wとなります。

ヒートパイプとクロスフローファンを採用した高効率クーリングシステムを採用しており、小型・薄型ながら200Wの大出力アンプを実現しています。
このヒートパイプは宇宙船の熱処理技術を応用したもので、同径の金属棒の数百倍という熱伝導率wもっています。そして、クロスフローファンは、ソニーのプレイヤーシステムやカセットデッキに使用されているリニアトルクBSL(ブラシアンドスロットレス)モーターを用いたもので、静かで信頼性の高いクーリングシステムを支えています。この2段冷却構造により出力素子を一ヶ所に集中配置でき、大電流が流れる素子周辺の配線を大幅に短縮し、電磁波の前段への飛びつきによる音質への影響を抑えています。

同一チャンネル内での前段と後段の干渉による音質劣化を考慮し、入力から出力まで最短距離で結び、かつ各部が干渉しないような配列を徹底したコンストラクションとなっています。
クーリングについてはラックマウントなど様々なセッティングを考慮し、底から吸気して背面に排気する構造となっています。

リニアリティを改善するため、各増幅素子をリニアリティの良い領域で動作させると共に、必要に応じてカスコード接続により改善を施して使用しています。

入力容量や帰還容量の大きい増幅素子を使用すると高域特性、歪率特性、電源リジェクション特性などがあっかするため、これらを抑えるために厳選したパーツを採用しています。
フィルムコンデンサでは、印加電圧による機会的な共振や損失を解決するため、早く巻き周囲を固定し、さらに電極とフィルムに機械的強度があり電気的特性の優れたものを採用しています。
電源部に採用した大容量電解コンデンサでは、陽極・陰極とも高純度アルミ箔を使用し、誘導体である酸化被膜は音質低に最低な化成方法を採用しています。また、電解液には新開発の高速低歪率タイプを使用し、端子の材質からメッキに至るまで磁性体を排除、高周波インピーダンスが上昇しやすいことを配慮し、従来貧に比べ高域インピーダンスが1/2以下になるよう改善など、様々な改良が施されています。
抵抗には、温度特性、許容偏差、歪率(10kHzの第3高調波)の良いものからさらに、音質的な吟味を加えたものを採用しています。また、信号系に用いる手工には、許容電力に充分余裕をもったものを配し、場所によってはシリーズパラ接続を行っています。

配線材や接続コードによる音質の変化を考慮し、音質劣化の少ない第一種無酸素銅(銅純度99.99%以上)をプリント基板及び配線材に採用しています。

機種の定格
型式 モノラルパワーアンプ
回路方式
プリステージ部: 初段FET差動ダブルカスコードブートストラップ入力
 カレントミラーロード
2段目カスコードブートストラップ反転増幅
終段エミッタホロワSEPP出力
パワーステージ部: パワーMOS FETクワドルブルソースホロアSEPP出力
ノンスイッチング型Aクラス動作、No NFBループ
電源部: パルスロック電源
実効出力(20Hz~20kHz) 200W(2Ω~8Ω負荷時)
高調波歪率
(実効出力時)
0.05%(8Ω)
0.1%(4Ω)
0.2%(2Ω)
混変調歪率
(60Hz:7kHz=4:1、
実効出力時)
0.05%(8Ω)
0.1%(4Ω)
0.2%(2Ω)
ダンピングファクター 50以上(1kHz、8Ω)
残留雑音 20μV以下(8Ω、Aネットワーク)
SN比 120dB以上(8Ωクローズドサーキット、Aネットワーク)
周波数特性 DC~100kHz+0 -3dB(ダイレクト時)
入力感度/インピーダンス 1.7V/50kΩ
出力端子 2Ω~16Ωのスピーカーに適合(スピーカーインピーダンススイッチにより切換)
電源電圧 AC100V、50Hz/60Hz
消費電力 200W
外形寸法 幅480x高さ80x奥行445mm
重量 10.5kg