SONY TA-E1000ESD
¥99,800(1989年発売)
解説
ソニーのデジタル技術を投入して開発されたDSPを搭載した、ドルビープロロジック搭載AVコントロールアンプ。
DSP(Digital Signal Processor)を搭載しています。
コンサート会場などで聴く音は、楽器などの音源から届く直接音と、壁や天井などに数回跳ね返ってから届く初期反射音、複雑な経路を辿ってから遅れてくる主残響音の3つの音から成り立っています。DSPでは、初期反射音と主残響音の大きさ、方向、長さ、間隔などをコントロールすることで、コンサート会場などの音場を作り出すというコンセプトで開発されています。
DSPが行う処理は、リバーブレーション・コントロール、ダイナミクス・コントロール、イコライジングの3つです。TA-E1000ESDでは、これらの処理のためにソニーが開発した、CXD1355QとCXD1160という2種類の専用LSIを搭載しています。CXD1355Qはリバーブレーション・コントロールを受持ち、あわせて8fsデジタルフィルターも内蔵しています。また、CXD1160はダイナミクス・コントロールとイコライジングを行います。
リバーブレーション・コントロールでは、初期反射音と主残響音の両方を作り出しています。さらに、初期反射音のタイミングとレベル、主残響恩のタイミングと減衰時間などをコントロールできるため、様々な演奏会場の雰囲気を作りだせます。
ソニーのDSPでは、リバーブレーション・コントロールをステレオで行っており、残響成分の左右への広がりを表現できています。
ダイナミクス・コントロールでは、小レベルの音を持ち上げて際立たせ、全体のダイナミックレンジを圧縮しています。これによりピアニッシモの微妙なニュアンスを聴き取りやすくしています。
トーンコントロールなどに代表されるイコライジングに関しては、デジタル処理によるDSPを使用することで、多用な変化カーブを作り出せています。さらに、アナログ回路で発生するチャンネル間のカーブの違いなどが原理的に発生しません。
TA-E1000ESDでは、リバーブレーション・ダイナミクスコントロール・イコライゼーションを使い分け、組み合わせることで様々な音場を作り出しています。
リバーブレーション・コントロールはフロント2chに加え、リア2chもデジタル信号処理で生成しています。また、ダイナミクスこのトr-ルは圧縮(コンプレッサー)/伸長(エキスパンダー)それぞれ9段階の調整ができます。
イコライジングは3バンドのパラメトリックイコリアザーで、それぞれのバンドごとに最大±12dBまで0.1dB(バーグラフ上の表示は1dB)ステップで増減可能です。また、Q(スロープ)も4種から選択でき、中心周波数は1/9オクターブで約90通りの設定ができます(バーグラフ上の表示は31分周)
DSPが作り出すサウンドパターンから選んだ代表的なサラウンド9タイプと、ドルビープロロジック・サラウンドの合計10タイプがプリセットされています。
プリセットされているサラウンドモードは、ホール1/ホール2/オペラ/チャーチ/ジャズクラブ/ディスコ/スタジアム/ライブコンサート/シアター/ドルビーサラウンドとなっています。
プリセットされたサラウンドを基本に、より好みの音場を作り出すことが可能です。
まず、メインパラメーターとして、会場の大きさをコントロールするルームサイズ、壁の素材による反射音の周波数特性をコントロールするウォール、AVの視聴環境の補正にも有効なシートポジションの3種類があります。
さらに、サブパラメーターとして、初期反射と残響レベル、初期反射時間、初期反射レベル、残響時間、残響密度、広がり効果レベルが調整できます。
以上のリバーブレーション・コントロール系に属するパラメーターのほかに、聴く音量とソースに合せてコントロールするダイナミクスや、リスニングルームの音響特性を補正したり、好みの音場を作り出せるイコライジングの調整も可能です。
作成した音場は10タイプまでメモリーできます。
ドルビープロロジックサラウンドに対応しています。TA-E1000ESDでは、DSPによるデジタル信号処理でディレイやノイズリダクションに対応しています。再生時のディレイタイム調整は、15ms~30msの範囲をL/R独自に0.1msステップでコントロールできます。
ドルビープロロジック・サラウンドではセンタースピーカーを用いた5スピーカー使用を基本としていますが、フロント/リア4つのスピーカーだけでも再生可能なファントムモードや、小型のセンタースピーカーの使用を前提としたノーマルモード、映画館のドルビー方式に近い設定ができるワイドモード、フロント左右及びセンターの3スピーカーでサラウンド効果を得る3chロジックモードを搭載しています。
A/Dコンバーターには、およそ300万分の1秒ごとにサンプリングを行い、それぞれを0と1の符号に置き換えていくHigh
Density Linear Converter Systemを採用しています。これにより、アナログフィルターの負担を少なくでき、良好な位相特性を得ています。
また、D/Aコンバーターには、フロント用として8倍オーバーサンプリング18ビットリニアタイプを左右独立に搭載しています。リア用には4倍オーバーサンプリング/16ビットリニア・デュアルタイプをを採用しています。
入力端子は、ビジュアル系7系統、オーディオ系5系統、デジタル入力3系統を搭載しています。
ライン出力は、フロント用2系統とサラウンド関係のリア用、センター用、サブウーファー用出力を搭載しています。
ディスプレイに機器名などを最大9文字までのアルファベットや記号を入力して表示できます。
また、ディスプレイ表示は部屋の明るさに応じて輝度を変えるディマーに加え、表示自体を部分的に消す事もできます。
ファンクション切替えなどの殆どの操作が行えるワイヤレスリモコンが付属しています。
このリモコンでは、接続機器の操作もリモコンで行えるよう、ソニー以外の他メーカーのリモコン信号も全キーに対して記憶させられるプログラマブルタイプとなっています。
機種の定格
型式 | AVコントロールアンプ |
<オーディオ部> | |
周波数特性(パラメトリックEQ、 ダイナミクス、サラウンド全てoff) |
Front1/2、Rear、Center:10Hz~20kHz ±0.1dB(プロロジックモードwide時) Subwoofer:カットオフ80Hz、18dB/oct Phono:20Hz~20kHz ±0.2dB(Video1~3 Audio out、Tape1/2 Rec out) |
SN比(Aネットワーク) | Phono:84dB(フロント、リアとも) Tuner、CD、Tape1/2、Video1~5、VDP、TV:95dB(フロント、リアとも) Optical1~3、Coaxial:110dB(フロント)、99dB(リア) |
残留ノイズ(Aネットワーク) | 10μV以下 |
全高調波歪率(フロント、1kHz) | アナログ入力時:0.004%以下 デジタル入力時:0.003%以下 |
<DSP部> | |
パラメトリックEQ | バンド数:3バンド センター周波数:18Hz~20kHz、1/9オクターブ設定 レベル幅:バンドあたり±12dB、0.1dBステップ スロープ(Q):4段階可変 |
ダイナミクス | コンプレッサー:9段階可変 エキスパンダー:9段階可変 |
サラウンド | ルームサイズ:0.5~2.0 ウォール:0.5~2.0 シートポジション:前後左右ともに101段階可変 |
<コンバーター部> | |
A/Dコンバーター | High Density Linear Converter System サンプリング周波数:48kHz |
D/Aコンバーター | フロント:18ビットリニア、8fsx2 リア:16ビットリニア、4fs(デュアル) サンプリング周波数:32kHz、44.1kHz、48kHz |
<その他> | |
映像系入出力端子 | 入力:7系統(Video1~5、VDP、TV) 出力:5系統(Video1~3、Monitor1/2) S映像入力:Video1/2/4/5、VDP S映像出力:Video1/2、Monitor |
オーディオ系入出力端子 | 入力:5系統(Phono、Tuner、CD、Tape1/2) 出力:フロント用2系統、リア用、センター用、サブウーファー用 |
デジタル入出力端子 | 光入力:3系統 同軸入力:1系統 光出力:1系統 同軸出力:1系統 |
電源 | AC100V、50Hz/60Hz |
消費電力 | 30W |
最大外形寸法 | 幅470x高さ150x奥行360mm サイドウッド取外し時:幅430mm |
重量 | 8.0kg |
付属 | プログラマブルリモコン RM-P1000 |