オーディオの足跡

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QCA-1010の画像
 解説 

オリジナルのデコーダーを搭載した4チャンネルプリメインアンプ。

CD-4、RM、SQのそれぞれに専用のディモジュレーターとデコーダーを搭載しています。

CD-4用のディモジュレーターにはオリジナルのものを採用しており、CD-4の弱点である歪やノイズを極力抑えています。中でも、ディスクリート4chとしてのセパレーションを充分に確保しています。

CD-4では、前方と後方の和信号F+Bと差信号F-Bが記録されており、F+Bは普通のレコードと同じオーディオ信号のままで、F-Bは30kHzをキャリアにFM変調(モジュレート)されて4chを構成しています。
和信号F+Bは、1/2EQ→LPF→2/2EQを通してフラットな信号となり、マトリックス回路に入力されています。EQ回路が2分割されているのは、F-Bの30kHzと混変調を起こしたり30kHzがそのまま残って後段に影響を及ぼすのを回避するためで、1/2EQで1kHz以下の低域側半分だけを持ち上げ、2/2EQで1kHz以上の高域側をイコライズしています。なお、LPFは30kHzで69dB、60kHzで64dBの減衰量となっています。また、Sep-Con(セパレーションコントローラ)はS/Nの低下が最も少ないNF型を採用しており、この段のノイズを減少させています。
なお、2ch用出力はLPFの前から専用の2/2EQに導かれており、LPFを通らないため20kHzまでフラットな再生が可能です。
差信号F-Bは、30kHzでFM変調されており、通過帯域幅が1kHz~45kHzのBPFを通しています。これは30kHzのキャリアと変調周波数が接近すると、PLL検波とはいえわ信号成分と混変調歪が起こすことがあるのを防ぐためです。
PLL方式のFM検波回路はIC化されており、FM変調されている差信号と30kHzの基準発振との位相を比較し、その位相差による直流で基準発振の周波数を位相的に制御にロックする方式で、その制御がFM検波出力になっています。この方式は2同調式やパルスカウント方式より歪率、S/N、周波数特性、残留キャリア量などで優れています。このPLL ICは通常は50mVが標準入力ですが、QCA-1010では300mVまで引き上げられており、キャリアが1/6にドロップアウトしても十分に余裕を残して動作します。これによりノイズの発生を抑えています。
FM検波されたF-Bは、LPFを経て、ミューティング、FM・PM/EQ、ANRSを通ってマトリックス回路に入力され、和信号とマトリックスされてディスクリート信号に戻ります。
ミューティング回路は、2chレコードをCD-4のモードで間違って再生した場合に発生するチューナーで言うところの局間ノイズを抑えています。また、CD-4レコードの再生終了時にキャリアがOFFになった場合のノイズを抑えるサブミューティングが二重に設けられています。
FM・PM/EQは、FMチューナーのディエンファシスと同じ動作のイコライザとなっています。
ANRSはドルビー回路と原理的に同じノイズサプレッサで、本格的な構成のものが高域と中域の2系統に独立して設けられています。

QCA-1010ではphono1とphono2にそれぞれ専用のイコライザを備えており、通常のシールド線引き回しによるノイズ発生を防いでいます。

RM用のデコーダーにはオリジナル方式であるDM-4をリファインしたものを採用しています。
DM-4方式では、基本マトリックスによって計算通りに分解させた信号にロジック回路の確定した優勢信号の方向性をBC(ブレンドコントロール)で作用させて、時々刻々と変化する音楽信号に対して時間的にダイナミックにセパレーションを広げています。
ロジック回路を通過する一部の入力信号は聴感補正のためにEQを通ります。このEQはロジック回路の感度に周波数的ウェイトをかけるもので、機械的に自動的にロジックを動作させるのではなく、音楽に対する人間の感性の分析の結果として、周波数的選択性をロジックに持たせています。
また、ロジック回路とBC回路の中間にあるゲインコントロール回路では、ロジック回路からの出力に応じてFETの特性変化を利用し、BC回路への利きを連続的にコントロールしています。
QCA-1010に採用されたNEW・DM-4方式のRM専用オリジナルデコーダは、FETによるゲインコントローラに加えてノイズ成分や歪成分の多いロジック出力の効果を分配することによってS/Nを20dB改善しており、混変調歪やダイナミックレンジを大幅に改善しています。また、NEW・DM-4方式のAF回路では、AGC回路の変わりにリミッタ回路が挿入されており、ロジックの安定性が向上しています。
さらに、従来の対角線混合方式に変えて和差方式を採用したことで、LchとRchのゲイン差およびセパレーションのアンバランスが改善されています。
なお、マトリックス回路は±電源によってEQの最大入力までクリップしないよう設計されています。

SQデコーダーにもオリジナルのフルロジック回路を採用しています。
このSQ専用フルロジック・デコーダーには、NEW・DM-4方式デコーダーと同様にリミッタ回路を利用しており、時定数をもって応答速度の早くないAGC回路に対しタイムラグ無しの応答能力を持ち、前段で同相ブレンドされた信号を方形波に変え、逆相ブレンドしてマトリックスすることによって、今まで簡単に解けなかったSQの前後判別を容易にしています。
これにより、SQロジック無しでは前後比をとることの出来ないCFとCBに20dBのセパレーションを実現しています。また、このデコーダーは非優勢信号のチャンネルをレベルダウンさせることもないため、微小信号を消滅させてしまうことがありません。

メインアンプ部の基本回路構成はオーソドックスなものになっており、各ステージで歪を低減し、これをカスケードにつないでいく手法をとっています。
A級ドライバ段のエミッタ抵抗にパスコンを接続せず、定格出力時にベース入力150mVを確保することで微小出力時の歪とノイズの発生を防いでいます。また、終段の電源電圧を±25Vに対してドライバ段以前に±35Vを分配し、定格出力時の歪の増加を改善しています。
さらに、パワーON時のショックを減少させるために差動アンプのコレクタ負荷に挿入されるダイオードを排除し、別でミューティング回路を設けています。

BTL接続によるステレオアンプとしても使用できます。

プリアンプ部は十分なフィデリティの高さと同時に十分な操作性を追求して設計されています。この回路は、メインアンプ部の定格入力1Vに対して6Vまでのノンクリップを保証する設計となっています。

トーンコントロール回路では周波数上のうねりを防ぐため、Bassコントロールの2端子を直接Cに接続せず、2つのRを分割して挿入しています。

ラウドネスでは、中点タップ付きのボリュームを使用した際のタップ付近での不連続による誤差を防ぐため、新開発の連続ボリュームを採用しており、回転角と利得の正しい関係を保っています。

機種の定格
型式 4チャンネルプリメインアンプ
<メインアンプ部>
回路方式 差動入力全段直結SEPP OCL方式
実効出力(歪率0.1%)
4ch動作時:

1ch動作時:

BTL 2ch動作時:
BTL 1ch動作時:
25Wx4(4Ω)
20Wx4(8Ω)
30Wx4(4Ω)
25Wx4(8Ω)
40W+40W(8Ω)
45W/45W(8Ω)
ミュージックパワー(IHF) 120W
全高調波歪率 0.1%(定格出力時)
0.05%(1W出力時)
混変調歪率 0.1%(定格出力時)
0.05%(1W出力時)
出力帯域幅(歪率0.1%) 20Hz~20kHz
周波数特性(1W出力時) 5Hz~100kHz
SN比 110dB
残留ハム&ノイズ 1mV(8Ω)
入力感度/インピーダンス 1000mV/100kΩ
スルーレイト 20V/μs
ダンピングファクター 50(8Ω)
推奨負荷インピーダンス 4Ω~16Ω(BTL時8Ω~16Ω)
<プリアンプ部>
回路方式 イコライザ:NF型1/2イコライザ
       CR型2/2イコライザ
トーンコントロール:CR結合NF型
MIC:三段直結型
入力感度/インピーダンス Phono1:2.0mV/100kΩ
Phono2:2.0mV/50kΩ、100kΩ
Tuner、Aux1/2:150mV/100kΩ
Tape1/2:150mV/100kΩ
Mic:1mV/50kΩ
Phono RIAA偏差 20Hz~20kHz ±0.5dB
Phonoダイナミックレンジ 150mV(RMS、1kHz)
300mV(P-P、1kHz)
出力レベル/インピーダンス Tape1/2:150mV/10kΩ
Pre out:1000mV/10kΩ
周波数特性(Pre+Main) Tuner、Aux1/2、Mic、Tape1/2:5Hz~50kHz
SN比(Pre+Main) Phono1/2:70dB
Tuner、Aux1/2、Tape1/2:90dB
Mic:70dB
全高調波歪率(Pre+Main) 0.1%(定格出力時)
0.1%(1W出力時)
トーンコントロール(Pre+Main) Bass:±10dB(100Hz、左右連動、前後別動)
Treble:±10dB(10kHz、左右連動、前後別動)
ラウドネス 10dB(100Hz、4ch連動、-40dBポイント)
フィルター Low(4ch連動):70Hz、6dB/oct
High(4ch連動):7kHz、6dB/oct
オーディオミューティング -20dB
残留ハム&ノイズ(Pre+Main) 1mV
<総合>
使用半導体 IC:4個
FET:8個
トランジスタ:118個
ダイオード:42個
外形寸法 幅500x高さ130x奥行330mm
重量 13.5kg