オーディオの足跡

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DCP-3001の画像
 解説 

歴史の中に生き続けるアンプの一つを目指し、豊熟放射をテーマにして開発されたステレオパワーアンプ。

DCP-3001ではオーバーオール負帰還による過渡混変調歪の改善を図っており、各ステージに最良の回路を用意するとともにローカル負帰還をかけることで裸特性を改善し、オーバーオールの負帰還を25dB弱と少なく抑えています。この回路構成により、負帰還無しの状態でも使用することが可能です。特にプリドライバ段までのA級プッシュプルの範囲では裸歪率が測定限界に達しており、残りはB級プッシュプルでのPNP-NPNトランジスタ自体の物性の差によるアンバランスに起因する歪だけが残っています。
また、各ステージの接続で前段の電流を多くし、次段の入力容量を殆ど無くしてしまう設計とすることでスルーレイト60V/μsを達成しています。

回路構成は全段直結ピュアコンプリメンタリーSEPP OCL方式を採用しており、初段差動、次段エミッタフォロアー、二段直結ダーリントンプリドライバー、ドライバ段を経てトリプル構成の出力段となっており、チャンネル当たり21トランジスタ、2ダイオードで構成されています。
基本構成は中点電位の変動あるいは電源ON/OFF時のショックノイズを皆無にするため、±電源に対して完全対称なPNP-NPNによる全段コンプリメンタリーピュッシュプル方式となっています。初段からプリドライバ段まではプッシュプルでA級動作となっており、ドライバ段と出力段はB級動作となっています。これによりPNP-NPNトランジスタの特性差に基づく僅かなドリフトだけとなり、負帰還無しでも出力端の電圧変動がありません。

初段の差動アンプはコンプリメンタリープッシュプル方式の差動アンプとすることで十分な裸ゲインを稼ぎ、エミッタそれぞれに高抵抗を挿入してローカル負帰還をかけてゲインを下げています。その余裕と1mAという動作電流を流すことによってダイナミックレンジの拡大を図っています。
また、初段回路には進み位相補正回路を挿入しており、裸帯域を超高域まで伸ばしてオーバーオールの負帰還を安定にしています。

二段目のエミッタフォロアは初段差動アンプの負荷を軽くし、三段目のプリドライバを十分ドライブできるようインピーダンスを下げることを意図しています。これによって初段のS/Nが改善されてゲインも上がり、プリドライブ段までのインピーダンスマッチングも理想的になります。
また、この段では3mAと十分に大きい電流を流すことで三段目とのスルーレイトを問題なくしています。

三段目のプリドライバ段ではダーリントンエミッタ接地コンプリメンタリープッシュプル回路で十分なゲインと十分なローカル負帰還を得ています。また、トランジスタ方式で安定化されたバイアス回路を備えています。コンプリメンタリー回路のためお互いが負荷として定電流回路として動作し、低域での出力が減少するブートストラップ回路の省略に成功しています。
この段ではエミッタに高抵抗を2つに分割して挿入し、55dBの裸ゲインに25dBのローカル負帰還をかけることでこの段の歪を抑えています。また、この段には抵抗と組合せて高速応答回路を構成するスピードアップコンデンサが挿入されており、ここのチャージがエミッタを通して逆向きに放充電されてスルーレイトをさらに高くしています。

ドライバ段の前には進み位相補正回路を搭載しています。
この回路は初段差動アンプの場合と同じ動作で、ドライブ段での超高域の下降をその分だけ位相を進めて上昇させることで裸特性を拡大しています。一般的な位相補正回路はベースコレクタ間に挿入されたコンデンサにすぎず、これは位相を補正せずに位相を遅らせて裸特性をハイカットしてしまいます。しかもミラー容量としてトランジスタのβ倍の入力容量として利くことになり、スルーレイトを劣化させます。

ドライバ段には10mAの十分なアイドリング電流を流しています。

出力段にはPc100Wのパワートランジスタを用いたダーリントン・エミッタフォロアによるコンプリメンタリートリプルプッシュプル方式を採用しています。この回路では200mAのアイドリング電流を流すことで約1WまでA級動作します。
過電流に対する保護も兼ねてエミッタに挿入された抵抗は、初段と同じく中点電位のバランスをニュートラルに保つのに役立っており、全段プッシュプル構成によって出力中点電圧は±20%の電圧変動に対しても±10mV以内にあります。

電源回路は出力段用、プリドライバ段用、その他回路用の三系統に分かれた構成となっています。
出力段用の電源は±55V電源回路で、600VAの大型カットコアトランス(励磁電流100mA以下)より大容量ブリッジ整流ダイオードを通して40,000μF/70Vの大容量コンデンサ2個で平滑されています。
プリドライバ段用は±60V電源で、独立に巻かれた2次巻線より整流される負荷電圧検出型式による低電圧回路となっています。
その他回路用の電源は±30Vの電源回路となっています。

サブソニックフィルターの回路には通常のエミッタフォロアーの代わりにPNP-NPNの二段直結型を採用しており、100%の負帰還によるゲイン0dBのアンプを用いたアクティブフィルターとなっています。このため大振幅時にも歪の劣化が殆ど無く、その無歪出力電圧は15Vrms以上となっており、ONのままでも通過帯域の音への影響を抑えています。
この回路はOFFの時はバイパスされます。

保護回路はアンプ自身に対して5重、スピーカーに対して二重に設けられています。
アンプに対しては、負荷がショートした状態でスイッチONした場合にはリレーが動作しないようになっており、使用中に負荷がショートした場合には電源ラインのヒューズが溶断するようになっています。さらに、ヒューズが溶断しないか、あるいは溶断するまでの間にトランジスタのS/B破壊が起きぬよう電流リミッタが動作し、あるいは過電流検出回路が動作してリレーがOFFになります。また、スピーカーのインピーダンスが2Ω以下になると専用検出回路によってリレーがOFFになります。
スピーカーに対しては出力端の直流電位が±2V以上変動するとリレーがOFFとなります。また電源ミューティング回路によってスイッチONから4秒間はリレーOFFとなります。

パワーリミッタはOFFと50W/100W/150Wの切換式で、設定のパワーを越えてクリップが起きるとクリップインジケーターが点灯して知らせます。

メーターレンジはOFFと0dB/-10dB/-20dBの四段階切換式となっています。

機種の定格
型式 ステレオパワーアンプ
回路方式 差動増幅全段プッシュプル直結SEPP-OCL方式
実効出力
(20Hz~20kHz、歪率0.1%)
250W+250W(4Ω、2ch動作)
150W+150W(8Ω、2ch動作)
300W+300W(4Ω、1ch動作)
180W+180W(8Ω、1ch動作)
全高調波歪率 0.1%以下(両ch動作、定格出力時)
0.02%(両ch動作、1W出力時)
混変調歪率 0.2%(両ch動作、定格出力時)
0.05%(両ch動作、1W出力時)
出力帯域幅 10Hz~50kHz(0.1%)
周波数特性 15Hz~100kHz +0 -1dB
SN比 105dB
残留ハム&ノイズ 0.2mV
入力感度/インピーダンス 1.2V/30kΩ
スルーレイト 60V/μs
ダンピングファクター 80
サブソニックフィルター 16Hz、18dB/oct
使用半導体 トランジスタ:87個
ダイオード:76個
電源 AC100V、50Hz/60Hz
消費電力 380W
外形寸法 幅470x高さ186x奥行400mm
重量 23kg