OTTO/SANYO DCA-350X
¥49,800(1972年頃)
解説
DM-4(Dynamic Matrix-4)方式のリア用プリメインアンプ。
DM-4はレギュラーマトリックスのセパレーションを改善し、音場をディスクリートなみに拡大しています。
この方式ではマトリクス係数をソース音楽に合わせて変動しており、優勢信号の入るチャンネルが最大に分離するよう変えることで常に最良の音の広がりを得ています。さらにわずかなクロストーク成分を逆相にしてキャンセルし、各ch平等に20dB以上の分離を実現しています。
優勢信号のチャンネルはロジック回路で判別しています。
|Lf|−|Rb|=α、|Rf|−|Lb|=βの式で、4つのチャンネルの対角線の音量差を検知することで優勢信号のチャンネルを見定めています。これによりDM-4方式ではαβによってエンコード前の録音ディレクターの意図した各chの音量の構成比を読み取ることができます。そして、αβによってエンコードによって圧縮された各チャンネルの音量比を再び拡大して元に戻しています。
なお、α、βとも直流信号のため、交流のオーディオ信号に影響することがありません。
このロジック回路は音量に関して動作するものですが、その利き方は聴感補正されたカーブに従っています。物理特性と聴感は一般に異なりますが、聴感で音量がフラットに聞こえるカーブを基準にしてロジック回路が一定に動作するようになっています。
ロジック回路の前段にはAGC回路(オートゲインコントロール)回路を搭載しており、入力信号を適正レベルで安定させることでロジック回路の動作を安定させています。
また、AGC回路の前には三段階の入力感度セレクターを搭載しており、様々なプリアンプからの出力に対応しています。
マトリクス・デコーダーにはシェイバー方式を基準にしたオーソドックスなものを採用しています。この回路はロジック回路をOFFにした際に使用します。
マトリクス・コントローラーはデコーダーで平等にデコードされた各チャンネルをロジック回路からのα、βパイロットにしており、優勢信号のチャンネルが最も効果的に分離するようマトリクス係数を時々刻々ダイナミックに変化させ、20dB以上の分離度を実現しています。
また、マトリクスコントローラーでは同時にクロストーク成分もキャンセルさせており、マトリクスで発生する隣接チャンネルへの等量ずつのクロストークに対し、クロストーク分だけを回路で検出して逆相にして注入することでキャンセルしています。
レギュラーマトリクス方式ではストレートにデコードしただけでは前後チャンネル間に180゜の逆相関係が生じてしまい、定位が失われてしまいます。これに対処するためDM-4方式ではフェイズシフタを内蔵しており、20Hz~30kHzを90゜±10゜以内の精度で保証しています。これにより前後とも左右は同相となり、前後は聴感上殆ど判別できない90゜差におさえています。
DCA-350Xではゲイン・コントロールアンプを搭載しており、クロストークをキャンセルしたことで下がったゲイン2.3dBをアップし、トータルパワーを元に戻しています。
SQマトリックスのデコードにも対応しています。
SQマトリックスのポジションではSQ専用デコーダーの後にDM-4方式のロジック回路の主要部を使った回路が設けられています。
2-2-4方式についてはBSE回路を内蔵し、2チャンネルソースの4チャンネル化に対応しています。また、4-2-4方式についてはレギュラーマトリックス、SQマトリックスそれぞれに専用デコーダーを用意し、その上でDM-4方式のロジック回路を装備しています。
4-4-4方式では2系統の入力端子を用意して対応しています。
リアチャンネル用のアンプにはピュアコンプリメンタリー回路を採用しています。
出力端子は2系統設けられており、前後2-2方式や前方2-2方式といった4チャンネルスピーカーレイアウトの選択に使用できます。
4チャンネル分のパワーメーターとボリュームを備えており、全体の音量コントロールと個々のチャンネルの音量コントロールが可能です。
リアチャンネル用のトーンコントロールを搭載しています。
リアパネルにはフェーズスイッチを搭載しています。
4-2-4時にマトリックス4チャンネルソースの楽器などの定位が正常な位置に得られない場合があります。この時、どちらかに切換えて正常な定位が得られるように調整します。
機種の定格
型式 | DM4内蔵、リア専用プリ、メインアンプ |
出力 | 20W(8Ω、EIAJ) |
周波数特性 | 20Hz~50kHz |
パワーバンドワイズ | 30Hz~50kHz |
歪率 | 0.3% |
入力感度 | 2ch input:100mV/50kΩ(入力レベル100mV時) 2ch tape PB/RCA:300mV/50kΩ 2ch tape PB/DIN:300mV/50kΩ 4ch tape PB/RCA:300mV/50kΩ Discrete 4ch aux:35mV/25kΩ |
入力レベル切換 | 100mV、300mV、1V |
トーンコントロール | Bass:±10dB(100Hz) Treble:±10dB(10kHz) |
使用半導体 | トランジスタ:62個 ダイオード:100個 TH:2個 |
電源 | AC100V、50Hz/60Hz |
消費電力 | 35W |
外形寸法 | 幅414x高さ133x奥行300mm |
重量 | 5.5kg |