オーディオの足跡

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AU-707の画像
 解説 

オーディオの本質を見極めた斬新な回路が新しい音を生むという開発テーマのもと、物理特性を追求して開発された707シリーズの初代プリメインアンプ。

ダイナミックレンジが大きくパルシブな音楽信号を含むプログラムソースを、裸ゲインを大きくとり多量のNFをかけて歪を改善したアンプで再生すると、増幅回路内で遅延などの不安定要素のために過渡混変調歪(Transient Inter Modulation)が発生し、分解能が悪化します。この過渡混変調歪(TIM)は入力信号とNF信号との合成点であるサミングポイントにおいて回路内の遅延によって瞬間的にNF動作が外れ、過大入力がアンプに入ることで発生します。このため従来のアンプではワイドレンジ化が困難でした。
AU-607ではNFをかける前の裸特性に検討を加え、周波数特性の拡大、位相特性の向上、歪率の低減化を行い、また、進相、遅相に対して独自の位相補正回路を適切なスタガー比によって組み合わせ、数10MHzに至る高周波領域まで位相特性を向上しています。そして、必要最小限のNFをかけることによって過渡混変調歪を改善しています。これにより優れた超低域の応答性と共に、超高域における応答性も改善し、ワイドレンジ再生を可能にしています。

パワーアンプ部にはDCアンプ構成を採用しています。
初段には特性の揃った新開発デュアルFETを採用しています。この素子は従来のFETに比べて約4倍の大電流が流せる特長を持っており、この特長を生かし、スルーレートの向上や入力信号とNF信号が合成されるサミングポイントでの過渡混変調歪の発生を防止しています。
2段目にはローノイズトランジスタによる差動2段増幅構成を採用しています。
この回路ではゲインを極力抑え、裸特性の向上を図っています。また、独特のカレントミラー回路やカスコード接続を採用し、さらに2段目のシングルエンド出力から電流差動動作となり、プリドライブ段を構成します。この回路はプッシュプル回路なので第2次高調波が打ち消され、裸特性での歪率特性に優れ、しかも温度特性や電源変動の影響を受けにくい回路構成となっています。このプリドライブ段のトランジスタはhoe(エミッター接地、出力コンダクタンス)の特に小さなものを厳選し、さらにエミッター側にシリーズ抵抗を付加し、hoeによるリニアリティ悪化を排除しています。
出力段は3段ダーリントン構成となっており、出力インピーダンスを下げて低歪化を図るとともに、出力トランジスタは高周波特性、パルス特性が良好で余裕のある安定動作を得ています。
DCアンプで問題となる中点電位のドリフトについては、アンプの初段が出力から影響を受けないよう徹底的に電源変動を抑え、サミングポイントの対称性(ペア特性)を向上させ、ドリフトの安定性を実現したうえでDCアンプ構成としています。

イコライザーアンプ部は初段カレントソース付き差動1段、バッファー・アクティブロード付きA級増幅1段、終段純コンプリメンタリーSEPP出力回路による8トランジスタで構成されています。信号系には6個を使用し、DCパワーアンプ部と同様に簡潔で充実した回路設計で裸特性を重視し、可聴帯域外(10Hz~100kHz)の広範囲に至るまで低歪化を実現しています。
特に差動入力部にローノイズトランジスタを厳選して使用しており、さらにカレントソース回路を付加し、入力信号とNF信号の合成点であるサミングポイントでのCMRR(同相成分除去比)を改善し、動特性の向上を図っています。
また、イコライザー出力段に純コンプリメンタリーSEPP回路を採用しており、十分なゲインとともに高いSN比と余裕あるダイナミックマージングを得ています。
イコライザー素子には誤差の少ない金属皮膜抵抗やコンデンサーを採用しており、優れたRIAA偏差を達成しています。

トーンコントロール部は初段カレントソース付き差動増幅+1段増幅+3トランジスタ構成の差動増幅バッファーアンプによる7トランジスタ構成を採用しています。
この回路にはトーンセレクターを備えており、高域・低域のそれぞれクロスオーバー周波数を切替えることができ、広範囲の音質調整が可能です。また、トーンディフィートスイッチを搭載しており、トーン回路を排除したフラットアンプによって平坦な周波数特性も得られます。

電源部にはパワートランスを2個採用しており、左右チャンネルを完全に独立させた構成となっています。これにより他チャンネルに与えるクロストークを確実に防止するとともにレギュレーションの向上を図っています。
また、電源用コンデンサとして15,000μFx4の電解コンデンサを搭載しており、レギュレーションの良い±2電源を各回路に供給しています。さらに、メタライズドフィルムコンデンサや定電圧電源回路の採用によって音質の再現性に影響を与える電源内部インピーダンスを低減させ、低音域での歯切れの良さや中高音域での音の厚み、分解能の良さを得ています。

保護回路として出力端子の直流検出回路や、ASO(安全動作領域)検出カレントリミッター回路を内蔵しています。

ボリュームには高精度4連型ディテントボリュームを採用しています。

サブソニックフィルターを搭載しており、超低域での不要雑音をカットできます。
また、ハイフィルターを搭載しており、スクラッチノイズなどの高域雑音をカットできます。

プリアンプ部とメインアンプ部の切離しが可能です。
メインアンプ部の入力端子はDC入力とAC入力を搭載しています。

テープデッキは2回路使用でき、テーププレイコピー機能が楽しめます。
また、レコードを聴きながらエアチェックができる構成となっています。

オーディオミューティングスイッチを搭載しており、ワンタッチで-20dBの音量ダウンが可能です。

ラウドネス機能を搭載しています。
その他の機能として、センタークリック式バランスコントロールやヘッドホン端子、予備ACコンセント、大型アース端子を搭載しています。

機種の定格
型式 DCプリメインアンプ
<パワーアンプ部>
実効出力(両ch動作) 85W+85W(8Ω、20Hz~20kHz、THD 0.03%)
85W+85W(8Ω、1kHz、THD 0.003%)
全高調波歪率(20Hz~20kHz、実効出力時) 0.03%以下(8Ω)
混変調歪率(70Hz:7kHz=4:1) 0.03%以下(8Ω)
出力帯域幅(IHF、両ch動作、THD 0.03%) 5Hz~50kHz(8Ω)
ダンピングファクター(IHF、両ch動作、1kHz) 60(8Ω)
周波数特性(1W) DC~200kHz +0 -3dB
入力感度/インピーダンス(1kHz) 1V/47kΩ
SN比(IHF、Aネットワーク、ショートサーキット) 115dB以上
チャンネルセパレーション(1kHz、入力ショート) 75dB以上
<プリアンプ部>
入力感度/インピーダンス(1kHz) Phono1、2:2.5mV/47kΩ
Aux、Tuner、Tape play1、2:150mV/47kΩ
Phono最大許容入力(1kHz、THD 0.01%) 320mV
出力レベル(1kHz) Tape rec1、2(Pin):150mV/47kΩ
Pre out:1V/47kΩ
Max Pre out:10V/47kΩ(THD 0.05%)
出力インピーダンス(1kHz) Tape rec1、2(Pin):600Ω以下
Pre out:600Ω以下
全高調波歪率(20Hz~20kHz) 0.01%以下(1V出力時)
0.1%以下(10V出力時)
混変調歪率(70Hz:7kHz=4:1) 0.01%以下(1V出力時)
0.1%以下(10V出力時)
周波数特性 5Hz~50kHz +0 -1dB
RIAA偏差 ±0.2dB(20Hz~20kHz)
SN比(IHF、Aネットワーク、ショートサーキット) Phono1、2:77dB以上
Aux、Tuner、Tape play1、2:100dB以上
チャンネルセパレーション(1kHz、入力ショート) Phono1、2:60dB以上
Aux、Tuner、Tape play1、2:65dB以上
入力間セパレーション(1kHz、入力ショート) Phono1、2 - Tuner:90dB以上
Phono1、2 - Tape play1、2:90dB以上
Tape play1、2 - Tuner:90dB以上
Tape play1 - Taple play2:100dB以上
トーンコントロール Bass:±10dB(50Hz)
 トーンセレクター:400Hz、200Hz
Treble:±10dB(15kHz)
 トーンセレクター:6kHz、3kHz
ハイフィルター 10kHz(-3dB、6dB/oct)
サブソニックフィルター 16Hz(-3dB、6dB/oct)
ラウドネス(Volume -30dB) +10dB(50Hz)、+7dB(10kHz)
オーディオミューティング -20dB
<総合>
ACコンセント 電源スイッチ連動:1系統(100W)
電源スイッチ非連動:2系統(250W)
定格消費電力(電気用品取締法) 225W
外形寸法 幅430x高さ168x奥行389mm
幅482x高さ168x奥行418mm(ラックマウントアダプター装着時)
重量 16.8kg
別売 ラックマウントアダプターBX-7(¥3,000)